二次創作なんて誰が書くか! エピローグ 女の真意は知らなくていい
「おい。桃衣。お父さんとお母さんは今日も遅いってさ」
医療費はハンパない。外せないのだろう。
「ふふ」
『桃衣美玖』はスマートフォンに目をやる。
「病院内は携帯禁止」「個室内部だし関係ないわ」
「機嫌が良いな」「そうね。もうすぐ死ぬかもしれないけど、気分はいいわ」
病身の少年はギシギシと椅子を揺らす。
「義樹には、忙しいからくんなって言っておいたけど、マジで良いのか? 」「うん」
美玖は自嘲する。
「こんな、剥げた頭に骸骨みたいな身体をベッドにくくりつけられた姿、義樹に見せられると思う? 」
押し黙る川島美幸。自分も『その日』は近い。
「なんじゃこりゃ? 予約投稿は今年の9月??! ドエライ先だな」
「桃衣よぉ。あんまり言いたくないが、いくら想像で書くっていっても今日日はネットあるんだからもっと調べて」
「想像? ナニが? 」クククと笑う桃衣美玖。
「ん? アイドルのこととかさ。もうちょっと調べて書けばよかったのにな」
「アイドルの話だけど、書いているのはアイドルの世界じゃないわ」「えっ? 」
「私たちのよく知っている御話」「マジ? 」「かもしれないわね? 」
ゼイゼイと息をつく桃衣。これだけの会話でも既に負担が大きい。
「ま。女のいうことだし、深く追求はしないさ」
川島美幸はそういって美玖の病室を出て行く。「最後まで頑張ろうぜ。『戦友』」
美玖は声の変わりになんとか首だけでも動かしたいと思ったがそちらのほうが負担は大きい。目だけで合図した。
(『夢よ! 届け! 』か)
美玖はぼやける思考の中、思い起こせば病室の白い天井ばかりの短い人生を振り返った。
(こんな小さな世界で、みんなに会って、ヨシキに会って)
世界の外には、いろんな人がいて、私の書いた拙い物語を見てくれて。
凄く、悔しい。悔しいけど。最後にいい友達が。いっぱい出来たなぁ。
……。
……。
桃衣美玖。川島美幸。この二人の物語が真実か嘘か。確認する術は無い。
この物語、この世界が病床の少年少女が描いた一時の夢。その可能性も否定できない。
我々の描く物語が、誰かの描いた物語の中の一部かどうか。確認できないように。
かつて、文芸の世界では一次二次は仲間同士の交流として相互に行われていたが、
情報化の発達した現代において、一次二次の関係は作者同士の交流を超えて盗作、
または翻訳にかこつけた著作権強奪騒動に発展するようになってきた。
そういったトラブルから個人である作者を護る仕組みは。
個々の小説サイトはおろか、法律ですらまだ未整備だ。
ある匿名掲示板の書き込みでこのような意見があった。
「俺たちはタダで素人小説という肉を提供する養豚場の豚」だと。
最大手二次創作小説サイトのサービスが停止した2012/9/14現在。
良心的な二次創作者や企業の努力によってもなお、掲載不掲載の基準は揺れ動いている。
今日掲載されていたものが明日にはまた禁止になるかも知れない。
自分の描いた一次創作さえ、勝手に二次創作にされてしまうかもしれない。
その裏表は胡蝶の羽のように揺れ動く。
それでも、書く事を望むものは何処に向かって飛ぶのだろうか。
頼りなき小さな翅をはためかせる胡蝶。
その翼は左右に上下に飛べる構造を持つ。
されど。自由に飛べるというわけでは。ないようだ。
~ 「二次創作なんて誰が書くか! 」 おしまい ~
次回予告。
「えええええええええ?????? お父様ッ! それはッ?! 」
親に隠れてムーンなサイトにソリッドスネーク。
次回。「エロを書いて何が悪い! 」
御期待下さい。




