3 使っていいといったが自由にしていいとは言っていない
著作権と商業権は別物である。
例として韓国で行われた劇を『原作』としてドラマを作られ、
本来の原作者の権利は侵害された事案がある。
商業作家が自作の同人誌で自分のキャラクターを脱がせた場合、出版社の権利を侵害してしまうこともある。
その他、前項であげたように盗作者側が自らがオリジナルだと主張する事案は後を絶たない。
例として中国におけるKしんちゃんなど多岐に渡る。
「しっかし。暇だな」
川島美幸はベットに沈む義樹を現在口にしているアイスクリームより冷たい瞳で眺めた。
「ううううう~。うううう~」
長身の女装美少年がベッドで悶絶している姿は事後に見えなくもない。
しかし義樹は至ってノーマルであり、美幸もまたそうである。
「おい。義樹。いい加減泣きやめ」ウザいし。
「うううううううううううううう」
穢された後の少女のように泣く長身の少年。里中義樹。
なんでも苦心の動画が削除されたらしい。
「ちゃんと著作権クリアしてるのに~」
作詞作曲義樹。動画作成義樹。でも削除。らしい。
「以前商業CDで使われたからじゃね? 」「俺の曲だ~~~~! 」
というか、自分の歌をボーカロイドに歌わせたP(本業音楽家)が見事削除を食らったことがある。
著作権は作者のものだが、商品の権利を侵害すると削除されたりする。
「こう言うときはサッカーでもすべきだな」
そういって絶妙のボール捌きを室内で披露する美幸。
すばやくリフティング。ボールが美幸のつま先でくるくる回りながら停止する。
「みろ。義樹。俺のカンチョーはボールの回転すら正確に射抜くぞ」「自慢することじゃない」
身体を動かして気分を一新するのは重要だが、超絶テクを見せて何故カンチョー。美幸の感性を疑う。
「さ、さっさと外に出ようぜ」
泣き続ける義樹の手を引きずり、マンションから出た美幸だったが。
「なんかさ、騒がしくネ? 」「……」
義樹が無言でマンションの廊下から身を翻す。「ここ、二階ッ?! 」
壁を伝い、手すりを蹴って飛び出す義樹。中学生離れした身体能力だ。
「……追うか」美幸は携帯のGPS機能を見ながら義樹を追った。
階下には彼の子供用のロードレーサーがある。
「って? パクられてるしっ?! 」高いチャリはマンションでも室内に。鉄則です。
「多分義樹の所為だな」あとで奢らせる。そう誓った美幸は義樹の襤褸のママチャリに乗る。
「ええっ?! 」整備不良の貸し自転車はあっさりチェーンが外れ、坂道を転げ落ちるように滑っていく。
「うおおおおおおおッ?! ブレーキブレーキ!!? 」ぶちっ。
「あの貸し自転車屋の兄ちゃん。殺す」
すべりまくる車体を制御しつつ、ショートカット気味に崖から飛び降りた美幸は義樹を追った。
(義樹ッ!? )
高校生くらいの青年とデブどもが争っている。
そこに参戦する長身の美影。もちろん義樹だ。
チャリから飛び出した美幸はそのまま飛び降りる。
襤褸自転車がデブを一人巻き込んだが……神の加護あれ。
こっちは未成年だから大丈夫だ。少年法的に。
自転車に気を取られた彼らからすばやく身を隠し、両手の指を絡み合わせ。
「! 」「! 」「! 」高校生っぽい男の子を襲うデブどもの背後からカンチョーを決める。
悶絶するデブどもを見下ろしつつ、指についた異臭を息で吹き飛ばした。
「26の暗殺技のひとつ、マシンガンカンチョー! ……そしてこれは親愛カンチョー」
美幸は手近にいた青年になんとなくカンチョー。
義樹と黒髪の美少女に護られた小柄な少女を確認。知り合いだ。
女の子を善意で救ってなんとなくカンチョーされる青年はたまらない。尻を押さえてひざをつく。
「なにやってるんだよ。桃衣」「ヨシキとミユキちゃんに会いにきたんだけど? 」
桃衣と呼ばれた少女はそういってのける。
「あのさ、立場ってモンを」その瞬間、黒い影が少女に襲い掛かった。
美幸も義樹も、少女を護って戦っていた少年も、桃衣を護っていた『少女』も伏兵の存在に気がついていた。
『少女』は楽しそうに微笑んでいた。
気合の声と鋭い踏み込み。突進してくる大男を逆に突き飛ばす。勝負は一撃で決まった。
「……君達、強いねぇ。中学生? 」
少女は楽しそうに微笑む。頷く美幸たち。軽く桃衣の頭を小突く。
不満そうに頬をふくらませる桃衣だったが、即座に長身の青年に謝意を示した。
「オレ、御鏡澪って言うんだ。こっちは霧島」
細身の少女は楽しそうに笑う。とても大男を逆に突き飛ばす女傑に見えない。
「もし、よかったらうちの部にスカウトしたいよ」
(めっちゃ可愛い)
思わず二人はそう思った。その所為で桃衣が膨れている。
「オレは霧島。霧島和人って……オイ澪」「なんだよ? 」
霧島はにやりと笑って見せた。ボーっとしている三人は別に澪の強さだけに思考停止に陥っているわけではない。
「また間違えられてっぞ」「マジか」
ボリボリと頭を掻く。御鏡と名乗った少女。
「オレ。男だぜ? 」「へ? 」「え? 」「うそ? 」
パチクリと目を剥く中学生たちに苦笑いする澪。
「とりあえず、場所変えようか」
「へぇ。友達なんだ」「です。私とミユキちゃんが戦友で、ヨシキが……うふふ」
頬を赤らめる桃衣だが、正直二人には覚えがない。
最近、一方的に付きまとわれているだけだ。
しかも、桃衣はアイドルだ。色々とありえない関係である。
「アレは、センター争いからきた過激なファンか」
迷惑だよなぁと霧島はぼやく。同意する澪。その手にはスマフォ。
「あ、良ければ写真取らせてください」「いいですよ? 」
「ブログに載せていいですか? 」「一応、そっくりな子に会いましたって書いてくださるなら」
そっくりどころじゃない。が、澪は嬉しそうに首を縦に振った。
「へぇ。澪さんってそんなに強いのに小説も書くんですか」「霧島ほどじゃないけどねぇ」
「……」「……」みお? きり? しま?
まさかね。美幸と義樹の二人は知り合いの可能性を頭の中で否定した。
「まぁその、プライベートにまで首を突っ込む気はないのでご安心を」
そういって澪は霧島の首を締め上げた「だよな?! 」「ぐるじい」その様子に噴出す三人。
その後、桃衣の事務所の二人が来て、ひと悶着あったが省略。
「……あれ? 」「ん? どうした? 霧島? 」
霧島は頭をぽりぽり掻いた。「やられた怪我がない」「馬鹿言うな。怪我したつもりになってたんだろ」
「いや、あの綺麗なおねえさんにホッペにチューしてもらうまでは」「なんでお前だけ」
嫉妬に燃える澪。「お前、オレに嫉妬? ほうほう澪タン。嫉妬っすか」とからかう霧島。
「どうやら今日こそ決着をつける日のようだな」「望むところだ」
高校生二人のストリートファイトが始まった。
その一方。
「同年代の友達がいない」「同じグループの同年代はライバルの意味合いが強い」
「できたら護衛として雇われてほしい。バイト料は払うから」
と、桃衣の事務所の副社長の説得を受けた美幸と義樹はその『バイト』を引き受けたのだが。
「この格好はなんだ? 」「アイドル」
フリフリのミニスカートをつけて羞恥にゆがむ美幸の表情。
「大地さんって言いましたよね? 」「うん」
ダイチと呼ばれた副社長は首を軽く縦に振った。
その鼻面に美幸は噛み付こうとした。
「うーん。こんなキュートなコに抱きつかれるなんて、俺様光栄だなぁ」
あっさり美幸を取り押さえ、ボケてみせる大地に暴れてみせる美幸。
「当面、礼儀作法からだな」
沙玖夜と名乗った社長の女性はそういって微笑んだ。
彼女の目は。笑っていなかった。




