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「うん? どうした? 澪? 」いまいち。いまいち。
霧島の何気ない。そして残酷かつ率直な意見は澪の心を沈めるには充分すぎた。
「う。うん。なんでもない」何とか平静を装う澪。そこに霧島の追い討ちが入った。
「俺の新作、一日500ユニいくようになったぜ!!! マジ、嬉しいっ! 」
本当は、もっと多くの人々が霧島の連日更新を待っている。
霧島はこまめな返信、お気に入りユーザーの作品への感想を欠かさず、逆お気に入りユーザー登録してくれた人は読み専門のユーザーでも必ずお気に入りにするという男である。
要するにマメなのだ。いくら読み専門のユーザーもいるとはいえ、それでも20作以上をチェックしているといえる。かなりの読書量である。
対して澪は『逆お気に入りユーザー』とやらはぜんぜんいない。感想も書いたことがない。
お気に入り小説も5つあるかどうかだ。そのうちの一つは自ら潰してしまった。
内心。ため息をつく澪。圧倒的な差を親友相手に感じているなど。親友だからこそ言いたくない。
「俺」「ん? 」はしゃぐ霧島になんとか笑って見せる澪。いい子である。女の子だったらもてたのに。
「お前にP入れておくよ」読み専用の別アカウントあるしと澪は心の中で呟いた。
「おおっ! さすが我が友っ! 」
正直、マメで良いヤツの霧島が何故澪を親友といって憚らないかわからない。
澪にとって霧島に嫌われたら友達ゼロだが、霧島にとっては澪など友人の一人でしかない。
霧島にニコニコ笑って見せる澪だが、心中は別のことを考えていた。
誰も自分の書く物語に期待していないのでは? 誰も喜んでくれていないのでは?
というか霧島はイマイチって言ったし。一日に何人かが読んでいる。数字では分かるが。
実感は沸かない。そういうことは。ある。
ばんばんと背中を叩く霧島に苦笑しながら、澪は一つの決意を固めていた。
「この物語、一旦完結にして良いですか」
本当は、異世界から来た青年達と主人公が平和を導くまでやりたいが。
『活動報告』にそう書いてみる。
誰かが見てくれているなら、何か返事をくれるかもしれない。
誰かが愉しんでいるのなら、続きを書いてほしいと励ましてくれるかも知れない。
誰かがつまらないと思っていたら、指摘してくれるかもしれない。霧島のように。
澪は活動報告にコメントがついたら、感想がついたら、
メッセージをもらえたらユーザーページがどう変化するか知らなかった。
澪の気持ちに反して数日たっても、彼のマイページの活動報告コメントに変化は無かった。
つまり。返事は無かった。