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「ううううううううううううううう」
若干前後する。過酷な指名。次々入る延長で『みるく』こと潤子はグロッキー気味だった。
帰ったらなろうに更新したいし。待機室? 5分とたたずに指名が入って化粧なおしだ化粧なおし!
在籍待機要員常時20名(お店のホームページ参照)のこの店は、実質五人しか女の子がいない。
「みるく、ちーず。次は……ばたーだったっけ? 」
「確か、『カ○○ス』だろ。ジュン」
……商品名なので伏字にする。この世界はそういう配慮がまったくない。
同僚の「こはな」こと『身形吹雪』が返答する。
「口はダメって言ってるのに3人目……」
「お前は断らないしなぁ……時間稼ぎもしないし」「悪いじゃん」
「いや、普通は時間稼ぎする。というかしないと身が持たない」「お金ほしいもん」
「……お前等、マジでそんなに金ためてどうするの? 」「田舎で喫茶店! 」
吹雪はちょっとこの二人が羨ましいと思っている。
「そっか~。いいなぁ。アタシも雇って欲しいなぁ」「お給料安いよ? 」
「……月50万で我慢する」何処の公務員だ。
「無理。月14万がいいとこ」「ひでぇ? アタシとお前らの仲だろっ?! 」
「住み込みだよ?! 」「にしたって酷いよ! 」「無駄遣いしちゃダメ! 」
しかし、無駄遣いが基本の世界なので修正は極めて難しい。
そもそも、収入が役所に申告できない世界だし。
「カズちゃんが帰ってくるから迎えに行って来て、それからお客さんに入るねっ! 」
「はいはい。店長にそう伝えておくよ」
仲がいいな~。羨ましいな~。アタシもそんな友達欲しかったなぁと思う吹雪だった。
「そうそう。あんたらが言ってたヘンタイだけどさ」「ん? 」
「アレ、あそこの山の上の学校の理事長らしいよ? 」「うそっ?! 」
「若くして祖父の遺産を継いだんだって! 王子様だねっ! 」「おー」
「あ~あ。お客さんでこないかなぁ」「無理」
そういう人はこういう店には来ないし。と潤子は心の中で思った。
そもそも17歳の潤子を調べもせずに雇っている時点でお察しだ。
「そもそも、私の王子様は……もういるし! 」
潤子は雨上がりの街を駆けていく。和代が待っている筈だ。
こういう商売は出迎えがあったほうが何かと心強い。
……帰り際。和代はまだ仕事があるので先に帰るように言ってきた。
普段なら待つのだが流石に疲れきった潤子は素直にマンションに帰ることにした。
「きゃ?! 」
誰かとぶつかった。可也の美男子。
「あ。あのヘンタイだ」「……君は? 」
いきなりヘンタイとか言われて戸惑う青年。
「誰がヘンタイだよ」「御兄さん! いつも覗いてるしっ! 」
「……別に覗きたくて覗いてるわけじゃないけどね……」がっくり肩を落とす青年。
まぁ、手首を切って暴れまわったり、コブラツイストしてたりすりゃ嫌でも目を引く。
普通の人間なら多少は心配する。というか、転居を考える。
「大学生だかOLだか知らないけど、妹さんと仲良くね」
「……」
妹? 妹? 今妹とか言わなかったかこの男っ?!!
「私は、17歳です」
「えっ? 23歳くらいかとっ?!! 」
この台詞を聞いて、潤子は普段着だけでも可愛い服を着ようと誓った。
23歳のかたごめんなさい。でもこの年頃の子にとって5歳も上に見られるのは微妙なんです。
「へぇ……『お姉さん』と二人暮らしなんだ」
「ええ。色々あって高校にいけなくなりまして」「ふーん」
潤子は勤め先だけぼかして、今まであったことを素直に青年に話した。
青年は怒りに震えていたが、潤子が明るいので自重した。
「うちくる? 」「へ? 」
どんな漫画展開だよ?!!!
「君達なら、大歓迎」
ぽかーんとしている潤子に青年は「転入届」を渡した。
二人は姉妹となっていた。
……で。
「正直、いままでのコスプレの中で一番恥ずかしい」
顔を真っ赤にして恥らう乙女(←19歳)に。
「コスプレじゃないよ。私達、女子高生になったんだから」と平然と言い放つ潤子。
「19で女子高生とか、どんな拷問」半泣きで電車に乗る高峰和代。19歳。
(別の意味で)潤んだ瞳とつややかな黒髪。
スラリとした体つきと、スッキリした形のよい胸元は嫌でも周囲の目を惹く。
「へっへ~ん! いっしょいっしょ! いっしょだよ! 『お姉ちゃん』♪ 」
ちなみに、学費は免除らしい。二人の学力は二年以上のブランクがあるのに驚異的だった。
「むしろ、言葉遣いとかの矯正が苦労した」「……その言葉遣い、学校ではナシな」
「あら。 誤字指摘です 和代姉様」
「あらあら。潤子さん。こんなところでケータイはダメですよ」
お前等、色々な意味で超展開すぎていろんな意味で読者さまおいてけぼりだぞっ?!!
「あらあら。ごめんあそばせ」
早速寄ってきた痴漢の足を思いっきり踏みつける高峰和代。元レディース総長。
華やかな笑みを浮かべながら二人は憧れの学校の生徒となった。
そして、二人が学校に行っている間に。『虹の都』の感想欄はまた凄いことになっていた。
……一方、店では3人分の仕事を押し付けられた吹雪が泣いていた。合掌。




