他人の評価が気になる女。エピローグ
「えええええええええええええええええええええ????????!!!!!」
美和の絶叫に母が心配して部屋に飛び込んできたので、
「ナンデモナイナンデモナイ 」とアヤシイ外人みたいな口調で追い払った。
朝起きて、アクセス情報画面で放置していたことに気がつき、
何気なくF5一発押したらいきなり3000ユニークアクセス。
500とか、1000とかなら、まぁあった。1500とかも。
震える指で、小説TOPに戻るを選択。ユーザーページに戻る。
理由なんて一つしかない! 美和は歓喜した。
伸び悩む自分の作品に対してレヴューを書くように知り合いに頼んだからだ。
一度は固辞されたが、「どんなものでもいいからアクセス数が上がるならそれでいい」と押し切った。
トップページの上部を飾る。小さな小さな。赤い文字。
04月 28日 00:06分 書かれたレビュー一覧が更新されました。
きたあああああああああああああああああああああああああああっ?!!!
ありがとう! ありがとう!! 美和は『彼』への感謝を絶叫した。
『ハル・リヴァ』の作品のレヴュー。アレは最高だった。きっとそれ以上のものなのだろう。
美和はガッツポーズを取った。
子供と変わらない。春川が見たら苦笑するだろう。
「どんなレヴュー? どんなの?!!! 」
自演レヴューや、勢いがない作品にレヴューしても大して効果は望めない。
しかし。『勢いに乗っている』作品にレヴューが投下される場合は。
恐ろしいことになる。一日3000ユニアク到達した作品にレヴューが投稿された場合。
1000P以上差がある日刊二位と一位の間、二位の作品にここぞとレヴューが投稿された場合。
その恐ろしさは。体感してみないとわからない。が。今回の物語では語らない。
投稿日は土曜の0時。美和が気づかないほうが不思議だった。
ウキウキとレヴュー欄を見る。美和。
「な。な……。ナニコレええええええええええええええええええええええっっ ??? 」ご愁傷様。
美和はガタガタ震えだした。鷲刃に対する怒りもある。あるが。
今、この瞬間に、3000人以上の人間が、彼女を『見ている』ことに改めて気づいたからだ。
「2chって? 」
美和は匿名掲示板というものを見ない。
生の欲望に当てられるというのもあるが、責任のない放言としか見ないからだ。
自分のユーザーネームをグーグル検索してみると美和に関する評判が出てきた。
曰く。感想乞食で誘いうけ。愛想よく振舞う。変なコスプレをブログで掲載。
曰く。キモイ。自意識過剰。自作の宣伝を他所様のところでするな。
「ひ……ど……」
がたっ。美和は膝を自室のフローリングに叩きつけてしまった。
ぽろぽろと涙がこぼれている。みんな。みんな。私をそんな目で見てたの? 見てたの?
「PLLLLLLLLLLLLLLLLLLL!!!! 」
美和の仕事用の携帯電話がけたたましくなっている。
少女のようにぽろぽろ泣いている美和は出ない。出れる筈がない。
玄関口がやかましい。母親と争うような青年の声。「美和先輩っ!! 」
自室に飛び込んできたその青年は。はじめて美和を『美和』と呼んだ。
「……はる……春川君?? 」
ネグリジェのあられもない姿で、少女のように泣きじゃくる美和には普段の威厳も凛凛しさもない。
「……! 見ちゃったんですね? 」
意味がわからない。何故春川君がここに? というか。
「ええええええええええぇぇぇぇぇんっっ!!!!!!!!!!!! 」
一番、情けない姿を見られたくない男性に、
一番情けない姿を、PCを見られてしまった。
一番、強い自分を見せたい相手に。
弱い自分を。……見せてしまった。
美和の涙腺は崩壊した。
美和の肩を、春川青年は優しく。優しく抱いてくれた。
……。
「『美和』。早く活動報告を消せ! あと、ブログもだっ! 謝罪の言葉も忘れるなっ! 」
美和はよろよろとPCに向かう。意味がわからない。何故春川君がそんなことを知っているんだ?
美和は膨大な活動報告を「警告」の文字を無視して消す作業を開始した。
あとで必要そうな後書き、前書きのコラムや設定資料は全てコピペしたという春川青年のCDを受け取り、思い切ってそれらを削除した。
「うん。ずいぶん見やすくなったね」春川青年は満足げにしている。
「ふえええん」
ぐずぐずと泣き出す美和を困ったように見つめ、肩をポンポン優しく叩く春川君。
「しっかりしてください。『桜美』先生」
美和は時が制止したかのように固まった。それでも言葉は漏れる。
「へ??????????? 」
「ぼくの、苗字」
そういってニコニコしている春川君。
「春川君じゃない? ナニを言ってるのよ」
「出来たら、和俊って呼んでくれると。嬉しいんですけど? 」
そういってニコニコ笑う春川和俊30歳独身。
「はる かわ 」「うん」
まさか。まさか。
色々恥ずかしい話とか。職場の『気になる子』の話をした。
色々な小説の手ほどきを受けた。落ち込んだときは励ましてくれた。
「『ハル・リヴァ』……『先生』??!!」
「ピンポーン♪ 」春川青年は艶やかに笑った。
そして、「『師匠』をつけなさい」と付け加えた。
「えええええええええええええええええええええええええええぇぇぇっっ!!! 」
普段から落ち着いた子で、反抗期すらなかった美和の狼狽に、母親も驚いていた。
「あ、あの。春川さん。どういうことですか」
「先日、お話した通りですが、只今立込み中でして。誠に失礼ですが、お母様はあちらに」
ペコリと頭を下げる春川。本当に失礼なヤツだ。が、それは美和をかばうためである。
「美和。ほら」
カーディガンを優しく美和の肩にかける春川。
「え? 」
美和は自分の格好を改めて認識した。遅すぎる。
「いやあああああああああああああああああっっ!!!!! 」
羞恥で顔を赤らめる美和に春川は肩をすくめた。
「(ぼそ)アクセスアップのために女子高生」
「やめてええええええええええええええええええええええええええええっっ!!! 」
こ れ は 恥 ず か し い 。
「下腹と突出するほど脂肪のない腰骨周りエロ過ぎ抜いた」
春川青年は普段そういうことは絶対言わない子だ。でも言い切った。
「へっ」
美和の顔が羞恥に染まる。
「変態っ! 変態っ! 変態っ!!!!!!!! 変態っ!!! 春川の変態っ!!!!!!!」
殺しかねない勢いの美和だが、春川は華麗に美和の攻撃を押さえ込んだ。
格闘では美和のほうが強いが、体格には春川に利がある。春川の優しい笑みに、美和の動きが止まった。
「ぼくだけに。してくれる? 」「なっ……? 」
美和の思考が停止した。意味がわからない。いや、わかる。『ハル・リヴァ』なら知っている。
自分が、『ハル・リヴァ』に『相談』したことの全てを。
「3000人に恥ずかしいこと。するくらいなら。
……ぼくだけの。ぼくだけの『美和』になってくれないかな? 」
「……!!!!!!」
ば、ばかなことを。ばか。ばか。ばか。ばか。バカ。馬鹿。莫迦。莫迦。
「莫迦は君だ」
言い切った。春川は言い切った。
「ぼくだけにして。
君は痛いし、莫迦だし、目立ちたがりだし、弱いし。子供だ」
「あ。貴方のほうが年下っ……」
反論しようとする美和の唇を優しい感触が。ふさいだ。
「……! 」
じたばたもがく美和だが、力がするすると抜けていく。
唇に残った。柔らかい感触の残滓に。
思わず自分の指をふれて確かめる美和。
はじめて。はじめての。
おとこのひとにはじめて。
これって。これって。
「『桜美』先生。5000ユニアクおめでとうございます」
ニヤニヤと嫌味を放つ春川青年。
美和はブンブンと首を振った。もう嫌だ。
そんな美和を春川和俊青年は無理やり立たせて、『感想欄』を見せた。
投稿者: Mio [2012年 04月 28日 (土) 13時 02分]
▼良い点
登場人物たちの気持ちが手に取るように伝わってきます!
これからも素晴らしい御話をお願いします!
▼悪い点
2chというのは悪いところじゃないです。生の声が聞けるんですから!
桜美さんの御話、凄く読みやすくて面白いですっ!
▼一言
お気に入り登録しちゃいました! くじけずがんばってくださいっ!
優しい桜美さんの作風。私も大好きですっ!
投稿者: スメラギノミコト [2012年 04月 28日 (土) 12時 45分]
▼良い点
前から見てましたが、初期と比べて物凄く読みやすくなってます!
コラムは移動ですか? 別枠復活楽しみにしてますっ!
あと、ユーティアさん、そういう趣味だったんですかっ! 親近感ありますっ!
▼悪い点
ロドリゲス司祭ぃ……。まさかこんなオチだなんて。笑い殺す気ですか?w
▼一言
ショタっ子のホワイト君が最高ですっ! もっと出番増えてほしいっ!
投稿者: フォッグ [2012年 04月 28日 (土) 11時 30分]
▼良い点
今読み始めましたっ! 前書き後書きは移動したほうが絶対いいですよっ!
これは、延びますっ!!! 絶対のびますっ!!
▼悪い点
後書き前書き、活動報告の露出は控えめに。女の人ならなおさらです。
▼ 一言
すっごく面白いですっ! 今Mioの家にいますが、二人で速攻お気に入りにしましたっ!
Mioもよろこんでいま……だあ?! 裸締めチョークは反則っ! ……失礼しましたっ!
がんばってください! 応援してますっ!
春川和俊青年は、沢山、沢山ついた暖かい感想を、ゆっくり、ゆっくり朗読して見せた。
「『桜美』先生。読者様に返信しないんですか? 」そういって微笑む。
「……」
こんどこそ、こんどこそ。美和の涙腺は崩壊した。
そんな美和の耳元で、『和俊』は読者さんの優しい感想を。励ましを。……次々と読んでくれた。
……。
「ナニ。コレ」美和は。震える声で。『ソレ』を見ていた。
間違いなく、美和と『和俊』の字だ。そして。美和の印鑑。
『婚姻届』
「……私。こんなの書いてないよ? 」『和俊』は無言でボイスレコーダーを取り出した。仕事で使うものだ。
彼の指先がボイスレコーダーの再生ボタンを押すと聞きなれた声が漏れる。
「幸せにしろ! さもなくば殺す!!! 」美和の。声だった。
「えええええええええええええええええええええっっ???????!! 」
美和の狼狽する姿を「ククク」といって見下ろす『和俊』。
「殺されたくないので、幸せにします」
そういって春川君改め、『和俊』は小さな輝きを放つ輪を取り出した。
「一番、『つまらない』。一番な幸せ。……ぼくと作りませんか」
そういって、その輪を。……美和の指に嵌めた。
「う……ん……」
寝癖でバサバサの髪。化粧もしてない顔。寝乱れたベッドとネグリジェ。
口元についたよだれのあとと、目の周りの目やにと涙。
美和の顔は。姿は。そりゃ~そりゃ~見れたもんじゃない。
しかし。
「ぼくだけの『恥ずかしい子』でいて」「……うん」
美和を抱きしめる。暖かい腕。
「よかった」
美和はソレに返事することは叶わなかった。
美和の唇を。……暖かくて優しい感触がまた。塞いだから。
無言の機械はその日の21時11分ごろ。
『藍色の炎』のユニークアクセス数。10000人目を記録し。
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1 藍色の炎 作者:桜美 ジャンル:ファンタジー
エピローグなのに美和編。続きます。




