一礼してからが基本ではないでしょうか?
クスッと笑ってほしい
私はただそれを望む
カチンッと音がして、銃口からバラバラとスチールの塊がこぼれ出す。
……シーンと銀行内に重い空気が流れる。私は関係ないはずなのに……何故かこの間が辛い。
唯木は自作ショットガンに目を落とし、少ししてから投げ捨てた。
「ふぅ……所詮ゴミだな」
ため息ついて唯木は回れ右。やれやれと言った感じで銀行を出て行った。
「……はぁ? はあぁ? はあああああああああああああああああ!?」
ワケがわからない。何故来た!? 何しに来た!? 私に対する嫌がらせか!?
「あのぉ、失礼します」
んん? いつの間にだろうか……伊藤のおっちゃんが強盗の横に立っている。
まあ唯木の意味のないパフォーマンス、私のはしたない絶叫があれば、言っちゃ悪いがおっちゃんならすぐ傍に来ても――。
ドカッ!
「は?」
銀行内にいる皆様、窓の外の皆様と一緒に私は目を疑った。
身長一八〇センチはありそうな大男が宙を飛んだのだ。残心を残すおっちゃんの放った右ストレートで。
強盗の男が地面に倒れ、動かなくなっても誰も動かなかった。
「はい、確保。警察に引き渡したら、金くれないかな?」
またどこからともなく唯木が現れ、男の上に腰を下ろす。というか、体重余すことなく乗っている状態のほうが正しいか?
「いやぁ、どうでしょうねぇ。あまり高望みはしないほうがいいと思いますよ」
「ん~、やっぱりそうか」
意気消沈した唯木は男の上から降りると、銀行員に何か言って伊藤のおっちゃんと銀行を出て行った。
「いったい誰なんだ?」
誰かが呟いた。私も詳しく訊きたいね。特に唯木登場の意図を。
静止していた銀行ないも時間の経過と共にまた少しづつ動き出してきた。
唯木に指示を受けていた銀行員は警察を呼び、店長らしき人は客一人一人に謝罪して回る。なんていい人なんだ。
「すげー、カッコイイー!」
入り口のすぐ近く、唯木が投げ捨てた弾がバラバラーとしか出ないゴミショットガンを小学生ぐらいの少年が手にしていた。
……うん、確かに概観はかっこいい。それは悔しいが認める。
だが次の瞬間、
バァン!
突如、少年の持つショットガンの銃口が火を噴いた。散弾が一揆に飛び散るが、幸いにも銃口は上向き。天井に無数の穴を開けただけ(?)ですんだが、またまた銀行ないは騒然とした空気に。
まあ、そりゃそうだな……。