崖に立っている人? 突き落とすかな
グダグダグチャグチャメチャメチャ
皆様の『クスッ』で私は十分です
あっけなく人質となってしまった。
覆面を被った男は私の首に手を回し、銃を押し当てる。
あせあせと男が差し出したバッグに札束を詰める銀行員に男は早くしろなどと怒鳴りつけている。
ここで役に立たない超能力持ちのホームレスが登場すれば一躍スターなどと大々的に雑誌の一面も飾れるし、彼らにも幾らか報酬という形でお金がいって一石二鳥。
などと考えていたが、ガラス張りの壁の向こうで唯木は手を振っていた。
その意味は
『バイバイ』
「あっいつぅぅぅぅぅぅううううううう!」
突然絶叫しだした私に銀行員含め強盗もビクリッと体を震わせる。
唯木も私が自分のことに気付いたことを確認すると、ニコッと笑って去っていく。その後ろには少女が続き、おっちゃんはまた別の方向へ帰っていってしまう。
「おい黙れ! 殺されたいのか!?」
強盗の一喝で私は我に帰った。
「さあ、急げ!」
「つ、詰めました!」
銀行とはすごいものだ。旅行サイズのバッグに札束がたんまり入っている。
恐らくこのまま無抵抗でいれば、無事解放されるかも知れないが、犯人に一泡吹かせてやりたい。
せめてこの覆面を毟り取って素顔を露にさせれば……。
そう私は考え、ゆっくりと気付かれないように手を上げていく。
そして、行動に出ようとした次の瞬間、
「はい~お前ら、怪我したくなかったら伏せてろ」
めんどくさい奴が現れた。
「問題です。プラスチック+ダンボール+マッチ+ライター+空き缶+割り箸+使い古しのペンキは?」
堂々入り口から入ってきた唯木の手には某全国チェーンのコンビニ袋。そしてその中に今言ったゴミがゴチャゴチャと入っている。
「せーかいは……」
わざとらしく袋の中身をガサゴソとやり、ゆっくりと中のものを取り出す。きっと今の間に超能力でこの状況を突破する物を作ったに違いない。
「ジャーン、ショットガン!」
……前言撤回。むしろ、私をどん底を叩き落す物を作ったようだった。
カシャン、何かが装填されたようだ。いや、何かはわかっている。わかってはいるが、私の思考は全力でそれを否定にかかる。
「スチールの空き缶装填!」
ニコニコ笑顔の唯木。ガクガク恐怖の私。目が点のその他の皆様。
「発砲!」
唯木が割り箸のトリガーを引く。
さらにカオス化は進む