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¶紫空-ムラサキゾラ¶

作者: 松原志央

この小説はテーマ小説「色小説」に参加させて頂いてますよ。

「色小説」で検索されると、すばらっすぃ先生方の小説も読めたりします!

では、こってり恋愛になってしまいましたが、¶紫空-ムラサキゾラ¶おたのしみくだされ――――――――――――――――

――――――

――――

――

GO→

 笑止。先生はいつも、私の事をからかう。頭叩いて、『瑞木はバカだな』って。

 普通、担任教師って、自分のクラスの子の成績上げようとしてやたら誉めたり、やたら叱ったりする。

 でも先生は違う。私が今まで習った先生の中でも、こんな先生は居なかった。


 先生は、生徒のバカさを慰めもせず叱りもしない。只、認めて声をかけるだけ。




¶紫空-ムラサキゾラ¶




「高見先生!数学教えてよう!」

「どれ、見せてみな?」


 巻き髪、バレない程度のパッチリアイメイク。長いダホッとした白やら黒やらのカーディガン。

 高見先生は、今年来た、新任の先生。分かりやすく教えてくれて、オマケに若いし良いルックス。

 こんな風にワザワザ手の込んだ格好をして、勉強がてら(高見先生優先かな)高見先生に振り向いて貰いたい女子が集まる中、キャピキャピ言ってる中……私はふてくされて順番が回ってくるのを待つ。 他の女子からしてみれば、メイクはしてないし、特別髪もいじらす、カーディガンでなくキチンとブレザーだけで高見の前に立つ私を皆、不思議がるにしょうがない。

 でもしかたがないのだ。私は別に高見に気に入って貰おうとも思わなければ、数学の補習だって受けたくもないのだ。

 そう。この中で唯一私だけが意図的ではなく、ほぼ強制的に『バカだから』と言う理由でこの場に居るのだ。私は思い出しながら、私の重い気分を表すかの用にかかった灰色の雲を眺めた。



 ――それは数十分前


「では、これで終礼を終わる」


 私の担任は、高見だ。クラスの女子はメロメロの担任だ。

 でも私は興味さえ抱かなかった。だって教師だし。恋人になんて、と。

 確に理想と言えば理想だし、悪いところは、無い。でもだからと言い、8歳も年上の人になんか好意を持てなかった。

 そうして只日々を過ごしていた。高校生らしい、静かな日々。友達もいて、勉強は……まぁ、普通より下。何よりも数学が足を引っ張り、2年になったら文理選択のあるウチの高校で、私は勿論文系に進むしかないと決め込んで居た。そんな、矢先の事。

 数学担当の高見は、私の余りの数学の悪さに目をつけたらしい。


「瑞木、今日の放課後の数学の補習にでなさい。これは強制だ」


「えぇ!」


 終礼中に大声で言われた。何てデリカシーの無い人なんだ!お陰で私の数学の悪さを知る友達はクスクス笑いだしたのだ。

 私は頬を赤くして彼等彼女等を軽く睨みつけ、短く


「はい」


 と答えた。

 放課後の数学の補習は主に自主性のため、高見目当ての生徒が大半で、質問が直ぐに終わる。

 その日私はきっと一番時間がかかってしまうから一番後ろに並んだ。

 そして、待つ事約1時間、ようやく私の順番が回ってくる。 私が多少疲れた顔付きで席に座ると、高見は苦笑してこう言った。


「やっと瑞木の番だな」


「……」


 私は不機嫌に教室を眺めた。学校が古いので壁に、様々な茶色い染みがあり、鉛筆で書いたような落書きがいたる所にある。


「ハハハ……ウチの高校も校舎は綺麗な方ではないから、あんま文句いうな?」


「別に文句なんか」


「でも俺は瑞木が考えてた事は分かるな。だって俺、担任だぜ?」


 先生は、一人称が“俺”だ。若いからなのか、親しみやすさを狙う作戦なのか。


「こんな事をしていたら時間がもったいないな。ほら瑞木、始めるぞ」


 私は、今数1を習って居るが、どうやっても二次関数の利用が分からなくて、この手の問題は全部分からない。

 これでは、3年時にセンターで話にならない。進学校に来た意味がなくなるのだ。


「まず、最初に見分けるべきなのは、この問題はは最大値を求めるものなのか、aの値を求めるものなのか」


「……はい」


 あぁ、成程と関心するも、私は内心落ち着かない気持ちだ。緑色の問題集も目に入らない。なんと言うか、一対一だし、高見カッコイイかも……とか。

 好きとかじゃないけど、確にカッコイイ人が近くにいるとかなり緊張してしまう。

 先生の髪は、真面目さを表すかの用に殆んど何もしてなくて、赤く染めてもいなければ、ジャニ髪にしているわけでもない。

 強いて言える特徴としては、やたら真っ直ぐで、わざとなのか前髪が長い。


「おい、瑞木。聞いているか」


「……あ、はい」


「なら、ここでのポイントを言ってみろ」


「確か、この問題は、aの値を求めるものだから、Dを使って」


「……聞いているみたいだな。瑞木って変な奴だ」


「え」


「普段無表情に近くて、怒ってるのかそれとも悲しいのか、担任の俺でも瑞木の考えてる事って、分かり辛いんだよ。多少は分かるようになったけど。でもボウとしてるわけではないし、笑うときは普通の子と変わらないしな」


「えっと、やっぱり無表情に見えるんですね」


 これは、幼少の頃から数々の先生に言われて来たことだ。特別意識しているわけではないけど、私は何にも興味が無いように見えるらしい……。

 私は少し気にしていたから、また変な奴だと思われた事にシュンとした。


「瑞木 沙由か。初めてのタイプだ。でもそれは決して瑞木の悪いところではないよ」


「え……」


 この言葉には、かなり驚いた。


「時間の無駄だな。さ、続きをするぞ」


 私はその日から、高見を見つめられずにはいなくなった。


 数学の補習は毎日あり、私は一週間も連続で受けさせられた結果、なんと緑色の問題集はボロボロで二次関数の利用は全てマスターしていた。

 次の単元も、補習を受けながら少しずつ理解していけばいいと、高見は言う。

 私はと言うと、高見を気にしては居たが別にまだ好きとかじゃなくて、やっぱり他の女子が信じれないのだった。

 だけど、まだこの時は、私も高見も鈍くて脆くて幼かったと思う。

 学校の帰り道補習を終えやっと帰路に着く私は、トテトテと歩き自宅のアパートへ向かっていた。


「瑞木か?」


 ブゥゥウン

と音がなれば、そこには新黒い車に乗った高見が窓を開けて止まっていた。


「先生……」


「瑞木、今帰りか?歩きと言うことは、家が近いんだな。秋の家庭訪問用に道を覚えたいから、教えてくれないか」


「その必要はありません」


「……?」


 私の家は両親はいない。何故なら、去年交通事故で二人ともこの世を去ったからだ。

 色々な親戚が声をかけてくれたが、私はどこにも同じ答えを出した。


『私は一人で暮らします』


 と。説明すると先生は始め驚いた顔付きになったが、聞き終わると納得して、頷いた。


「瑞木、俺は無償に君に飯を奢りたくなった」


「本当ですか」


 バイトで稼いで生活する高校生には、思ってもみない幸運。


「私、ラーメン食べたいです」


 次の瞬間には高見の車に乗る自分がいた。

 高見は一度苦笑してエンジンをかけると、『うまい店を知ってる』と私を連れていった。

 その日の帰りは高見に送ってもらい、サヨナラを言った。そして次の日、私はかなりショックを受ける事になるとは知らず、そのまま寝るのだった。


 明くる朝の事だった。いつも通り通学して皆高見を待っていた。が、何と高見ではなく副担任である藤田が入って来た。


「起立、礼……着席」


 学級委員の貞中が挨拶を終えると、藤田は凄く渋い顔をして、こう言った。


「高見先生は、昨日誤って交通事故を起こしてしまい、入院していますから、今日から私が一ヶ月間担任になります」


 私はかなりショックだった。昨日奢って貰ったばかりなのに!

 すると、一人の女子が目尻を紅くしてになりながら質問をした。


「高……み先生は、大丈夫なんですか?」


「はい。ただ骨を折られたそうなので……」


「そんな!」

 私はその日一日いてもたっても居られずに空ばかり眺めていた。どことなく曇り晴れきれない紺色の空は、私の不安を型どったかのようだ。

 学校の帰りに、皆高見の見舞いに行くと言うので私も何と無く参加することにした。


「高見先生ー!」


 高見をこよなく愛す洲藤さんは、病室に入るなり、ベッドへ駆け出す。


「こらこら、洲藤。俺は病気じゃないから良いが他の患者に迷惑だろう」


「はい……」

 洲藤さんは指摘されハッとしたようだ。


「お、瑞木」


「こんちは。何か大丈夫ですか?」


「やだ、沙由ったら、失礼!」


「へ」


 洲藤さんの指摘により室内がどっと笑いに包まれる。


「何だ、瑞木。数学習いに来たのか」


「ちがっ……!」


「その通りでーす!」


「す、洲藤さん!」


『あははははは』


 楽しい一時だった。帰り際、何と高見は数学の補習をすると言い出し、私はまた数学をするハメになる。



「ここでは、正弦定理が使えるから……」


 高見は、足を怪我していて動けないため私は高見の寝ているベッドに付いているテーブルに教材を広げている。そのため必然的に高見の顔が近くにあり、その顔の良さを嫌でも再認識してしまう。

 そうやって高校生を魅了するなんて罪深い教師だ。しかも無意識なのがタチが悪い。

 きっとこのまま明日も補習があったりしたら……きっと私は高見を――


「瑞木、今日はここまで」


「はい。ありがとうございました」


「あぁ」


 私は高見に何故かニコリと微笑みかけ、そんな自分に驚きながら高見の病室を後にしようとしたときだった。


「瑞木……補習はこれで最後にしよう」


「え……」


 高見は切なそうな、泣き出しそうな……何だか辛そうに視線を外した。


「分かり……ました」


 私は少し動揺している自分に気付いた。そして気付いてはいけない何かが近付いてくるようで、いそいそと高見の病室から逃げ出すように病院を後にしていた。


「……」


 見上げると、空がもう闇を帯て、薄暗く霞んで藍色になっていた。

 私は急に胸が締め付けられるようになったのを、冬になりかけのこの寒さのせいにして駆け出していた。

 私は次の時もその時の日も高見の見舞いに行かなかった。なぜと聞かれるとかなり答えに迷うけど、心の片隅にあるなにかが弾けそうで怖かった。

 でも、ぱったり高見の見舞いに行かなかった私を友達が放っておく筈もなく、とうとう私は今日高見の見舞いに行くことになった。


「高見先生ー」


「おう。槇原か」


「おうおう!高見先生、今日はな先生が数学心配してたから直接聞くのが一番だと思って瑞木連れてきた!」


「槇原くん今何て――」


「……っ瑞木」


「高見……先生」


 二人の間には2・3秒の沈黙が有ったけど、高見が機転をきかせて話題を降る。


「最近、数学は分かるか?」


「はい」


 悔しいけど、貴方のお陰で。私は表向き出さなかったけど、高見は先生で私は生徒だって、この時はキッパリと冷静に考えられた。

 と、高見が窓の外を覗いた。青い、真っ青と言えるくらいの空がある。


「久しぶりに、外に出たいな」


「あー……先生何週間も病室に込もってちゃあな」


「高見先生可哀想!」




 何と高見が入院してから毎回見舞いに来ていると言う洲藤が声を荒げる。


「あぁ……リハビリはしているんだが」


「じゃあじゃあ、皆で高見先生を外に連れていこ?」


『賛成ー!』


 私達は、庭に出た。


 高見の入院している病院は中々良い病院で、散歩道が付いている。

 私達は高見を車椅子に乗せ、散歩道を歩くことにした。


「いやー、悪いな。皆に迷惑をかけっぱなしだ」


「そんな!高見先生はいつも良くしてくれていたから、今度は私達の番です!」


「瑞木に関しては数学でかなりお世話になってるし。な?」


「そうだね。高見先生は後どのくらいで退院ですか?」


 私は知らない間にあまり高見と話さないようにしていたのを忘れ高見に話しかけていた。


「え、あぁ、来週には退院できそうだよ」


「マジで?!やったー!」


「洲藤、恥ずかしいから勘弁してくれ」


「はっ……すみません!」


 楽しい時が流れる。でも時間が過ぎるのは早くて、多少空が紫になってきたので、皆病室に帰る事にした。

 私は高見と話すうちにまたあの何とも言い切れない、あの空のような――紫色の――感情がフツフツと沸き上がっていくのを感じた。病室に帰ったらすぐにでも帰ろう。この感情が、覚醒する前に……


「今日は皆ありがとう」


「おう!先生早く良くなれよ」


「あぁ……」


「先生またねー」


「……っちょっと待て」


 先生が最後に病院を後にしようとしていた私を呼び止めた。

 私は自分の心臓がギュッと握り潰されるのを感じる。もう、だめ――


「瑞木は残りなさい。数学が出来ているか確認する」


『あはははは』


「瑞木、頑張れよー」


 皆がからかう声なんて、今の私には届いていなかった。

 心臓の痛みは徐々に熱い何かに変わり――


「どうした瑞木?」


「……っ」


 皆が帰り教材を広げたまま私は高見の顔を直視出来なかった。

 既に熱い何かは私のからだ全体を巡り、




 あの紫色の空が、真っ赤な夕日に変わるように。



 私はこの感情に支配されていた。この状態を楽にしたくて、私は次の瞬間、無意識にくちばしっていた。


「先生が……悪いの」


「え?瑞木、どうした?」


「先生が、私を呼び止めたりするから……」


「今日は何か用事でもあったのか?済まない!」


 私は違う、と被りを降って、顔の熱で潤んだ目で高見を見上げた。


「……っ」


「先生、私、先生の事、好きに……」


「瑞木っ」


 やっぱり断られるかと思い、うつ向いた矢先、頬に高見の冷たい指が当たって……


「……!」


「……」


 先生に、キス、されていた。



「あはは、これで俺も教師失格だな」


「……な」


 先生はニコリと笑い、頭をかいている。私と言えば、たった今起きたことが信じられなくて、ただ放心していた。


「瑞木ー?」


「な……んで」


「俺も……瑞木の事が好きだったみたいだ……」


 高見は私を真っ直ぐに見つめた。


「高見先生……」


「逸馬で良い」


「え?」


「俺達今日から恋人だろ?」


「あ……」


 高見はもう、私の前で先生ではなく、高見 逸馬と言う一人の男になった。


「でも勿論この事は……」


「誰にも、秘密な」


 そうして、幾らか楽になったこの感情を、私は大切に抱えながら、病院を後にした。

 そしてすっかり暗くなった家路を一人帰って行った。明日からは、また先生と生徒。けど、土日は恋人でいられる。





fin.

 後書きと書いて言い訳と読む―――――――――――――――――――

――――――

――――

 はい、くそったれー!何だなんだこの恋愛は?松原志央じゃない?

 いえね、書いてみたかったのです……。テーマが「色」だったので、けっこう色を意識したのですがね。

 自分的なポイントは、空の色、ですかね。ラストは先生への思いが、込み上げてくる的な空の変化をもたらしてみたり(・∀・)

 え?分からなかった?済みませんm(__)m

 執筆急いだため、?な部分もあるかもですが……。

 それでも、楽しんでいただけたら泣いて喜びます。では、読んでいただきありがとうございましたぁ!!

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― 新着の感想 ―
[一言] すごいよかった! 最後の終わりかたが!!
[一言] なにか、展開がありえないというかなんか変です。普通に考えて常識はずれではないでしょうか?作品の内容に全然リアルティーがなく感情移入も出来ませんでした。非常に酷評ですいません。
[一言] はじめまして。菜緒といいます。 いきなりですいませんなのですが……。 短編で(一万字までで)「色」というテーマに(一概には言えませんが)縛られたなかで、今回の題材をとりあげるのは無理があっ…
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