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プロローグ -流転と逆転-






プロローグ


流転と逆転






万物の流転についての話をしよう。


哲学者か誰だかは知らないけれど、やっぱり言い出しっぺは凄いと思う。

巡り巡るこの世界の有りとあらゆる物は、全て流転すると表現したのだ。



それは即ち、結果的に人間であることを立証することであり、この世に生まれ、生き、眠り、笑い、泣き、感動し、愛し、懐かしみ、そして死んでいくことを巡り巡るものだと結論づけた大きな一歩だったはずだ。


とまぁ、授業中にも関わらず御生憎ウルトラ暇な俺の脳内は絶好調にこんな感じだ。

そんな学者にあやかって、今日は居眠りを始める。


眠るのは悪いか?


いぃや、悪くない。


毎日眠りまくったって、この世が流転することには何の障害も与えやしない。

それなら別に、熱弁する日本史教師の話を耳元からシャットダウンし、

クラスの奴らの必死な筆音すらを排除して一人の時間に取り掛かることも吝かでは無いって思うわけで。





授業は終わったらしい。



全力で寝ていた俺には、起立も礼も、クラスメイトのクスクスとした笑い声も届く訳がなかったようだ。



昼休みも残り20分を切っていた。普段仲の良い元気な連中等は、決まって校庭か体育館だろう。

あいつらは元気が良すぎる。体をいたわってやれよ。


普段ならここで体育館に向かう俺も、流石にかったるさが抜ききれず、体育館へと向かう案に厳しい判定の後、NOT印を押した。



どうするかな。

教室に居たって、昼休みの間あと15分は暇だし、こっから寝に入るのもさすがに意味を感じなかった。



気付けば足は中庭の売店へと向かっていた。


三年生にもなると教師たちも労をねぎらい、中庭近くに3年教室を配置する。

そういう小粋な思いやりには、少しの優しさと親近感を感じるを得ない。

いや、そうでなければ暴動が起きるを予期しているのかもしれないが。


俺が面倒臭さと金欠という、学生的には究極悩ましい波状攻撃を乗り越え売店まで足を運んだ理由。

それはもちろん空腹という欠落感を乗り切るために 違いは無かったが、なんとなくこれから起きる事の予想がついていたからであって。


中庭に時代の流れに逆らわず生きる若者の声が響く。


チョーウケルンデスケドー

マジアリエナインデスケドー


はいはい。分かった分かった。

分かったから黙っていてくれ。せめて俺がここにいる時だけは。



澄み渡る青空、吹き抜ける涼風、可愛い清楚な女子高生☆

そんな最強の三大条件が揃ってさえいればそんな雑音も聞こえないのだろうが、

青空と涼風が揃いながらも、うるさい女子高生にその最強条件は粉々に破壊され、もはや虚しさが中庭を支配していた。





第一目的のパンを買って、中庭で一番奥のベンチへ向かう。

木陰に隠れた小さなベンチは、まるで俺を待っていたかのように小さな席を設けていた。


いわば、俺らの特等席。

誰も座っていないのは、座席部分に立て掛けられている「白崎夕凪 占領。勝手に座る者、罰金を処す。」という禍々しい文字のお陰にまず間違いない。



高一の春。

第一志望の高校を見事に滑り、俺はここ

"私立 帝都神宮学園"

に入学した。


入学式で、あんなにキラキラしていた先輩たちなんて虚構の存在だった。

部活ではまるで物みたいに扱い、気に入らない奴はボコボコにされた。

その上、教師の前では面白いくらいに猫かぶりやら猿芝居を始め、そうしてこの学校を卒業していった。

らしい。

全部噂だ。

知る由も無いわ。

というか、そんな学校の騒々しい雑音なんて全く気にしたことも無かった。



いや、気になってはいたけれど気にする余裕が無かった、と言う表現が一枚上手に出ているのだ。


昼休みも終わりに差し掛かり、「さて午後もガンバリマスカ。」と、迫力の無い呟きでゆっくりと立ち上がろうとした俺は一瞬震えた。予想通りの事態に満足した。そして俺の鼓動を高鳴らせた。

その全ての動作を与えたのは、間違いなく俺の方へ歩み寄る一人の美少女だった。


平穏無事で始まって、高校生活で凹も凸も無い平べったい生活を心から願い続けていた俺の妄想、、いや幻想をブチ壊したのは間違いない。コイツ、、白崎夕凪だ。



俺の目の前で、夕凪が呟く。


「佐天、、今日はね、、。」

「はいはい。わかってますよ。」


俺は立ち上がった。不安と期待の入り混じったような、超絶変な気分が俺の全身を駆け巡るーー。





万物の流転の話をしよう。

万物は常に流れるように移動と変換をくりかえし我々に試練を、時には感動を与えてくれる。

これからもずっと留まることは無いであろう、万物の流転を発見した学者か哲学者には、最深のリスペクトをもたなければならないだろう。


その、留まることの無い"流転"。俺、桐島 佐天 の中に順当に流れるハズだった万物の流転を見事に"逆転"させてみせた彼女には、リスペクトならざる恐怖的な心をもつを得ない。



昼休み終了のベルが鳴る。

お昼の人気番組のテーマソングが、頭の奥で響き渡る。



どうせ

って言葉はいい意味では使われるイメージが無い。実際ネガティブイメージが染み付いていて、なんとなく使う事が罪であるかのような虚しさすら感じられる。


でも俺は今、"どうせ"と感じている。


"どうせ絶対に面白い事が起きるに違いない"


ワクワクが止まらない。


眠りから覚めた時に感じたかったるさは、いつのまにかもうどこかへ吹っ飛んでいた。


夕凪に手を引かれながら、俺たちは教室とは真逆の方へ歩を進めた。






EP

流転と逆転









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稚拙な作品ですが、これから手をかけていきたいと思います。


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