春臣:どの浴衣も可愛いので、迷ってしまいますね。
「ねえ、これ、どう思うっ?」
「とても素敵ですよ」
「じゃあ、こっちの紫のやつは?」
「それも可愛らしくて、春名さんによく似合うと思います」
「どうしようー!」
道中は少しトラブルがありましたが、やっぱり、一緒に浴衣を見に来ることができて良かったと思います。
色とりどりの浴衣が数多く並んでいて、春名さんもとても楽しそうです。
次々と目に付いた物を手にとっては、考えて、これはと思うものを合わせて、僕に見せてくれます。
どの柄もとても可愛らしく、春名さんが着た姿を思うと、思わず顔が緩んでしまいます。
「春名さん、浴衣の着付けは出来るんですか?」
「教わったけど、ちょっと怪しいから、ママにやってもらう」
春名さんのお母さんとは、まだお会いした事はありません。
先日春名さんを送らせて頂いた時にお姉さんに初めて会ったのですが、とても明るくて楽しい方でした。
目元が春名さんと似ていて、ふたりはお母さん似なのだと教えてくれました。
「あ、金魚の柄だ!」
「それも可愛らしいですね」
「だよね! 迷うなあ……春臣は浴衣着る?」
「持ってはいますが、どうしようかと迷っています」
「どんなやつ?」
「藍色です」
「じゃあ、春臣も浴衣ね!」
「わかりました」
うん、と嬉しそうに頷く春名さん。
花火大会は明日なので、今日帰ったら浴衣を出しておかなくてはいけませんね。
明日の花火大会に備えてか、会場は割と混雑しています。
きっと明日はもっと沢山の人が花火大会に集まるのでしょう。
「……どうしよう」
「どうしました?」
春名さんを見ると、途方に暮れた顔をしています。
ケガをしている箇所が痛むのでしょうか?
「決まらない。これか、これか、これか、これがいいと思うんだけど……」
そう言って春名さんが見せてくれたのは、紫の物と、深い緑、藍色と黄色の四種類でした。
どれも似合いそうなので、僕も迷う所です。
「どれも可愛いから、迷う」
「そうですね。どれも似合いそうなので僕も迷います」
「考えてたら頭痛くなってきた」
「では、少し休憩しますか?」
「うん。あ、でも、売り切れちゃったりしないかな?」
「確認してきましょう」
春名さんからその四種類を受け取ると、少し離れた所に居る店員さんに声をかけました。
どうやらこちらの四種類は、まだ在庫があるようです。
そのため売り切れる心配はしなくても良さそうですが、二十分ほどで戻ることを伝えると、念のため残りが少なくなったら確保しておいてくれるとのことでした。
春名さんの元に戻り、その旨を伝えると、とても嬉しそうに笑ってくれます。
確保してくれた店員さんに丁寧に頭を下げると、僕にもお礼を言ってくれました。
「では、二十分ほど上で休憩しましょう」
「うんっ! ありがと」




