春名:それなら、安心して見られる。
「春名さん、足元に注意してくださいね」
「うん」
駅について、改札を出る。
夏休みだからか、それなりに賑わっているけれど、さっきの駅程じゃない。
あんなに混雑してたら歩くの大変だから、良かった。
「こちらは少し混んでいますから、あちらから行きましょう」
「ありがとう」
それでも、改札付近は人が多い。
春臣に庇ってもらうようにしながら、少し離れた広い所まで出ると、大きく息を吐く。
「大丈夫ですか? 先にどこかで休憩しますか?」
「ううん、まだ大丈夫。久しぶりに歩いたから、ちょっと慣れないだけ」
「何かあったら、すぐに言ってくださいね」
このくらいの距離も、混雑も、いつもなら何でもない。
だけど、ケガしてから殆ど家で過ごしてたし、杖をついて外を歩くのはまだ慣れてない。
そのせいもあって、少し緊張して、体に力が入っちゃってたのかも。
普通の道路と違って、駅の口内や店舗の中は床がつるつるしてるから、小石踏んで転ぶ心配は無いんだけどね。
今日浴衣を見に行くのは、ここの駅ビル。
それならあまり遠くまで歩かなくて済むし、疲れたら休憩しやすいからって春臣が言ってくれたんだ。
あたしが好きなお店も入ってるし、その提案は凄く嬉しい。
「まずは、ぐるっと周りますか? それとも春名さんが興味のある所から行きますか?」
「んー、どうしようかな」
欲を言えば、ぐるっと周ってみたい。
でも歩きにくい事もあるし、あれこれ目移りするよりは──って……
「春臣、見て! 浴衣の特設会場だって!」
「本当ですね、せっかくですからそこに行きますか?」
「うん!」
ふと目に付いたのは、七階で浴衣の特設会場をやってるっていうお知らせ。
それなら、一か所で色んなの見られる。
ぐるぐる歩かなくてもいいし、七階ならレストラン街のすぐ下。
休憩するのだって楽だし、エレベーターで上がればすぐだし、すごくいいよね。
「それじゃ、行こっ!」
「はい」




