春名:初めてのキスは、あたしから
すぐ隣に立って、そうっと春臣を見上げてみる。
整った顔立ちでキレイな肌。
初めて見た時も、こうして見上げる感じだったことを思い出す。
あの時は、後姿だった。
靴を踏まれて、文句を言ったら、振り返ったんだよね。
身長差があるから春臣の視界に入らなかったみたいで、きょろきょろしてた。
それからあたしに気がついて。
あっさりごめんなさいって謝られて、少しびっくりした。
頭を下げて謝ってくれたけど、それでも背が高いから、どのくらいか聞いたら191だって言われてまたびっくりした。
今まで、そんな人周りにいなかったもん。
身長大きいのに態度は大きくなくて、心配そうにあたしのこと見て、……かっこいいなあって思ってたら、いきなり頭撫でられたんだ。
大きな手で、優しい目してて。
受験で緊張してたのに、頭撫でられるし、ドキドキするし、いっぱいいっぱいで、何で頭撫でたのって聞いたら、可愛いと思ったからって。
好みの顔だからっていい気にならないでよね、なんて言っちゃったのに、好みなんですか? って言って、照れたように笑った顔を覚えてる。
恥ずかしくて、でも、その手や笑った顔が忘れられなくて。
絶対この学校受かって、また会おうって思ったんだ。
「春名さん、もうすぐ着きますよ」
「う、うんっ」
最初にキスした時の事を思い出して、恥ずかしくなる。
また会えたのが嬉しくて、あたしのことを覚えていてくれたのが嬉しくて、笑いかけてくれて胸が苦しくなった。
緊張しすぎて、どうしていいかわからなくて、会えて嬉しいなんて上手く言えなくて。
──それで、夢中で春臣の服、引っ張ったんだ。
「──春臣」
「はい」
そう、こんな感じ。
こうして春臣があたしの事見て、あたしは春臣を見上げていて……
春臣の服に手をかける。
引っ張ろうかと思った。
けど、緊張して、できない。
もうすぐエレベーターが着いちゃうと思ったら、変に焦って、恥ずかしくて──
耳まで熱くなってきて、慌てて下を向く。
「春名さん」
「ん──」
不意に名前を呼ばれて、顔を上げたら、
「──っ」
──春臣がキスしてくれた。
柔らかい唇が触れて、ふわっと春臣の香りがして、すぐに離れる。
「着きましたよ」
何か言おうとした途端、エレベーターのドアが開いた。
くすっと春臣が笑ってドアを抑えてくれる。
──絶対、あたし、顔赤いっ!




