春名:今は、まだつなげない
──だけど、浴衣の袋は持っていたい。
それに、もう片方の手は杖で埋まってる。
だから、今は手を繋げない。
でも、そんなに早く歩いたり、走ったりしなければ杖がなくても大丈夫そう。
そうっと痛い方の足に体重をかけてみるけれど、ぐらぐらしないし、そんなにズキズキもしない。
……うん、明日は杖無しで行こう。
今日一日いい天気で明日も晴れなら、足元も安心だもん。
そしたら、春臣と、手繋いで歩きたいな。
「どうかしましたか?」
「ううん」
ちょっと想像して、少し顔が赤くなった。
春臣が首傾げてあたしの事見るから、何でもないって言って、前を歩く。
「今日はこのフロアも空いていて、いいですね」
「うん。エレベーターもしかしたら貸切状態かな?」
「そうかもしれませんね」
エレベーター乗り場の前まで来たけれど、誰も居ない。
降りるボタンを押して、上がってくるのを待ちながら浴衣が入っている袋を見る。
可愛い浴衣、嬉しいな。
金魚好きだし、春臣とおそろいの色なんだもん。
髪型どうしよう?
前髪あげてみようかな?
それよりも、アップにした方がいいかな?
下駄も、しばらく履いてないし、今日のうちに履いてみなくちゃ。
「来ましたよ。貸切ですね」
チン、と音がしてエレベーターが来た。
春臣が先に乗ってドアを開いておいてくれる。
中には誰も乗ってないし、あたし達と一緒に乗る人も居ない。
二人きりで、貸切状態なんだって思うと、何だか嬉しい。
「嬉しいね」
「はい」
1Fのボタンを春臣が押してくれる。




