春臣:もっと春名さんを見ていたいし、知りたいです。
「浴衣、うれしい……ありがとう」
「いえいえ」
春名さんは、浴衣の入った袋をしっかりと握って、嬉しそうな笑顔です。
エレベーターを待っている間や、人が沢山居るので立ち止まってしまう時などに、春名さんの目線が手元の袋に行きます。
その度に、にっこり笑うのが、とても可愛らしいです。
こんなに喜んでもらえて、僕も嬉しいです。
「お昼何が食べたい?」
「そうですね、春名さんは希望ありますか?」
「パスタがいいな、クリーム系が食べたい」
「では、そうしましょう」
「うん! それはあたしがおごるからねっ?」
でも、と言おうとすると、ね? ともう一度首を傾げて僕を見上げる春名さん。
──キラキラと目を輝かせている様子が可愛らしくて、思わず頭を撫でてしまいました。
一瞬軽く口が開いて、それからほっぺたを膨らませます。
顔が少し赤くて、それを隠すようにふいっとそっぽを向かれてしまいました。
「お店、あそこねっ!」
「はい、向かいましょう」
「すぐよっ、すぐっ!」
「了解しました」
カツ、カツと杖をつきながら春名さんが足を速めます。
その度に春名さんのバッグがゆらゆら揺れて、小さな背中にぶつかるのが見えました。
浴衣の入った袋を手に持っているので、若干不便そうです。
声をかけようとした所で、くるっと春名さんが振り返りました。
「──春臣っ」
「はい」
「疲れたっ!」
「バッグ、持ちますよ」
「……ありがと」
手渡してくれるのを受け取ります。
それでも、浴衣が入った袋はしっかり持ったままの春名さん。
喜んでくれているんだなと思うと、とても嬉しいです。
丁度店の前についたので、中に入ります。
冷房が効きすぎていることも無く、程好い温度に安心しました。
ウェイトレスさんが持って来てくれたメニューを二人で眺めて、それぞれ注文を済ませます。
ランチには少し遅い時間のせいか、店内にはそれ程人は居ませんでした。
「今日はずっと天気いいのかな?」
一瞬、何かを考えたような顔をして春名さんが僕に尋ねます。
今日の天気予報は、確か一日晴れだったはずなので、そう答えると、安心したような顔をする春名さん。
とはいえ、少しだけ何か気になっているみたいです。
キーワードは、今日の天気、晴れだと安心、ですね。
考えてみて思い浮かぶのは──浴衣、でしょうか。
となると、買ったばかりの浴衣を、一度水洗いして乾かす時間ではないかと思います。
少しだけ残念ですが、早めに引き上げた方がいいかもしれません。
「今日は早めに戻りましょうか?」
「──なんでっ!?」
言葉を間違えてしまったようです。
春名さんがびっくりした顔で僕を見ました。




