春名:かっこいいし、優しい。でも、だから。
「だって──」
春臣と初めて会った時、かっこいい、って思ったもん。
少しだけ困ったような、だけど優しい目だった。
付き合うようになってからも、春臣の目はいつだって優しいし、笑顔だってそう。
「何でしょう?」
でも、かっこいいと思った、なんて言えない。
嘘じゃない、でも、恥ずかしい。
かっこいいなって思っただけで顔が赤くなってくるのがわかる。
あたし、春臣のことを怖いなんて思ったことないし、目つきが悪いって思ったことだってない。
じっと見られると、ドキドキする。
でも、困っているときは、安心させてくれる。
かっこよくて、優しくて──って、やだ、考えてたらもう顔が熱い。
「……何でもないよっ! そろそろ二十分になっちゃうから行こっ!」
「そうですね、店員さんには二十分ほどで戻ると伝えましたから」
だから、慌ててアイスティーを飲み干す。
「どの浴衣にするか、決まりましたか?」
「うん! 金魚の柄のにする」
どの浴衣も可愛くて、すごく迷う。
でも、春臣の浴衣は、藍色だって言ってた。
金魚の柄のやつは、生地の色が藍色。
あたし、金魚柄は好きだし、藍色も好き。
それに、──春臣と同じ色の浴衣、着たい。
初めての、花火大会。
初めて一緒に、浴衣で……デート。
そう思ったら、また顔が熱くなる。
さっき、春臣と手を重ねたとき、すごく大きかった。
ケガをしたとき、軽々とあたしのことを抱き上げてくれた。
電車の中で怖かったときも、あたしのことを守ってくれた。
春臣は、いつだってかっこいいし、優しい。
それに、落ち着いてる。
……でも。
ううん、だから。
あたしばっかり赤くなってる顔とか、余裕がないところとか、見られたら恥ずかしい。
だから、春臣に顔を見られないよう、急いで歩く。




