春名:春臣と、手をつなげたらいいな
「出かけてくる」
「pinkydreamに?」
「ちがうっ!」
「予約した方がいいわよ、あそこ人気なんだから」
「行かないもん!」
「別に隠さなくてもいいのに、リッチないい時間が過ごせるわよー?」
「春臣と浴衣を見に行くの!」
「あら、デートなのね?」
「わ、わるいっ!?」
準備を整えて、家から出ようとしたらお姉ちゃんが声をかけてきた。
pinkydreamっていうのは、──って、それどころじゃない、もう行かなくちゃっ!
「はいはい、いってらっしゃーい」
「いってきますっ!」
にやにや笑うお姉ちゃんにそう言うと、急いでドアを閉める。
今日は、春臣と浴衣を買いに行く。
──あれから三日。
じんじんする足と手の腫れは引いたけど、動かすとまだ、痛い。
歩くのはちょっと大変だし、杖を手放せないから色々不便はある。
でも、その間春臣と会ってないし、……やっぱり会いたい。
本当はお見舞いに来てくれるはずだったんだけど、やめてもらった。
だって、電話でそんな話してたら、いつの間にかお姉ちゃんが部屋に入ってくるんだもん。
しかも、また変な本とか変な下着とか置いていくし。
こんなんじゃ、春臣が来たとき、何をされるかわからない。
だから、今日も家まで迎えに行くって言ってくれたけど、少しだけ家から離れた所で待ち合わせにしてもらった。
「明後日は、杖無くても平気かな」
明後日は、ずっと行きたかった花火大会。
今日はそのときに着ていく浴衣を買う。
花火大会は人もたくさんいるし、はぐれちゃうかもしれない。
それに、暗いからきっと、周りからは見えない。
だから──できたら、春臣と、……手をつなぎたい。
「ん、まだちょっと痛いけど、明後日には平気、かな?」
試しに杖に頼らないで足をついてみると、じわっと痛い。
でも、一昨日に比べたらかなり楽だし、この様子なら明後日にはなんとかなりそう。
今度はちゃんと杖をつきながら歩いて、角を曲がる。
ここからもう少しだけ歩いて、次の角を曲がれば春臣との待ち合わせ場所。
家を出る前に時計を見たら待ち合わせまで十五分しかなかった。
春臣はいつも早く来てくれるから、もしかしたらもう来てるかもしれない。
走れたらいいんだけど……でも、少しくらい早歩きはできるよね?
「よい、しょ」
杖をぐっと握って、体重をかける。
転ばないように足元を良く見て一歩、二歩、三歩。
意外とこの辺砂利が多いから、気をつけないと──って。
「春臣?」
「はい、おはようございます春名さん」
視界に入ったのは、春臣。
いつもの笑顔であたしの名前を呼ぶと、すぐ隣に来てくれた。




