第一話 本能寺の変 其の五『闇を抜け、底へ出る』
◎織田信長
三郎とかいってたりしますねー
“サブちゃん”は、言わないか(^^;;
主君。戦国一のカリスマ。
最強のマインド
時代塗り替える
世界が驚く
なんばーわぁん なひと
第六天魔王。
慣習、常識に囚われない合理主義者。実はダジャレ好き。意外とお父さんキャラ。オンとオフで雰囲気が違う。本能寺脱出後は、殆ど殺さない。
というキャラ設定でいこうかと
ふんす
京の夜は赤かった。
それは炎の色であり、血の色であり、
――時代が燃え尽きる色だった。
川沿いの裏通りから見える本能寺は、
まだ燃えている。
夜空を裂く火柱は、まるで天を焦がし、
都を染め替えようとしていた。
火の粉は舞い、瓦は砕け、柱は崩れ落ちる
あの場所で、
“第六天魔王”織田信長が討死した―
そう、誰もが信じるだろう。信じねばならぬ
だが、信長は生きている。
その事実が京に知れ渡れば、
明智光秀の謀反は“成功”ではなくなる。
歴史の帳尻が狂い、天下の潮目が変わる。
だからこそ、信長は死なねばならない。
――この夜だけは。
よろず屋の二階を出るとき、
錦之介は一度も振り返らなかった。
彼はこの店の主でありながら、
店に執着がない。
まるで、最初から“捨てるために”
持っていたかのように。
「……半兵衛」
信長が、静かに呼ぶ。
錦之介はわずかに顎を引いた。
「心得ております」
その一言だけで、すべてが通じていた。
信長が“討死した”と世に思わせるため、ここに余計な痕跡は残さない。
火をつける必要もない。
血を撒く必要もない。
騒ぎを起こす必要もない。
このよろず屋は、いかにも自然に、消える
錦之介の策は、そういう種類のものだった
剣で斬るのではなく、謀で殺す。
人ではなく、“事実”を殺す。
力丸が先頭に立ち、廊下の奥へ進む。
坊丸は、つきの後ろを歩きながら、どこか落ち着かない様子で視線を泳がせた。
つきは相変わらず俯いている。
灯りの乏しい室内でさえ、その美貌を晒すことを避けるように。
だが、足取りは迷いがない。
彼女もまた、次の目的地を知っている者の歩き方だった。
錦之介が戸を開く。
そこは物置だった。
積まれた木箱、干した薬草、古い紙束。
だが、埃は薄い。人の手が入っている。
力丸が、箱のひとつを持ち上げる。
畳の端に指をかけ、ひっくり返す。
――穴。
よろず屋に隠された抜け穴は、
ひとつではなかった。
蘭丸は喉の奥で息を呑み、
坊丸は顔をしかめた。
「……また、潜るん?」
坊丸の声は、さすがに小さい。
蘭丸は即座に化け猫化しそうになるが、今は我慢した。
代わりに目だけで威嚇する。
坊丸は黙った。
錦之介が淡々と言う。
「こちらへ」
信長が一歩踏み出す。
その足取りに躊躇はない。
――本能寺で討死したはずの男は、
闇の穴へ消えていく。
坊丸は穴の縁にしゃがみ込み、下を覗いた
闇が口を開けている。
湿った土の匂いが鼻を刺す。
「暗いよ〜狭いよ〜怖いよ〜」
呟きは、まるで祈りだった。
だが坊丸の声は震えていない。
怖がっているように見せながら、
恐怖に飲まれない
――そういう武士の胆力があった。
蘭丸が、ついに化け猫化する。
「シャーッ‼︎」
「ごめんって!」
坊丸は慌てて身を縮め、
力丸の背中へ視線を送った。
助けを求めるというより、頼りにする目。
力丸は振り返らない。
「すぐに済みます」
その声には、何の気負いもない。
本能寺の炎も、追っ手も、
すべてが些事であるかのように。
それでいて、
確かに未来へ向けて準備が整っている
――そんな静けさがあった。
順に降りていく。
力丸。次に蘭丸。信長。坊丸。錦之介。
最後につき。
闇の中は湿っていた。
土壁が肩を擦り、
足元の石が足袋越しに痛みを伝える。
草履の緒が引っかかりそうになるたび、坊丸が小さく舌打ちする。
「暗いよ〜狭いよ〜怖いよ〜」
坊丸の声は、闇に溶けていく。
蘭丸は振り返り、化け猫の目で睨んだ。
「シャーッ‼︎」
「ごめんって!」
そのやりとりすら、
抜け穴の闇の中では小さく沈む。
音は土に吸われ、余韻だけが残った。
しばらく進むと、背後の世界が遠ざかっていくのが分かった。
燃える本能寺の赤も、京の喧騒も、まるで別の時代の出来事のように薄れていく。
――そして、その瞬間。
何かが、滑った。
空気が一枚、剥がれるような感覚。
足元の重みが、ほんの僅かに変わる。
だが誰も気づかない。違和感もない。
ただ通り抜けた――それだけだ。
力丸だけが目を伏せる。
その瞳の奥で、
淡い光が一瞬だけ灯った気がした。
――転移魔法。
距離を折り畳み、場所を繋ぎ変える。
だがそれは“術”として露見しない。
闇と狭さと湿り気が続くからこそ、
異常は異常として認識されない。
やがて前方に、空気の質が変わった。
土の匂いが薄れ、乾いた風が頬を撫でる。
出口。
力丸が先に抜け、
蘭丸が続き、信長、坊丸、錦之介、つき。
最後のつきが地面を踏んだ瞬間、
世界は――反転した。
広い。
空がないのに、空があるみたいに広い。
壁も天井も見えない。
闇ではない。光がある。
だが太陽の光ではない。
そこは地底だった。
地の底に作られた、巨大な空間。
岩肌が露出しているのに、
どこか整然としている。
人の手が加わっている。
だが“人の手”で作ったにしては、
規模が狂っている。
坊丸が呆然と呟いた。
「暗…くない、狭くない…」
その声が空間に吸い込まれ、
遅れて返ってくる。
坊丸はその反響にすら驚いて、
言葉を失った。
蘭丸は息を呑む。
この世の理屈で説明できない――
そう感じた瞬間、人は言葉をなくす。
錦之介は静かに立っている。
最初から知っている者の佇まい。
ここが目的地であり、
ここで何かが始まることを理解している。
そして――つき。
彼女はずっと俯いていた。
俯き、顔を隠し、目を伏せていた。
だが今。
つきは、思わず顔を上げていた。
見上げたまま、固まっている。
初めて、
はっきりと彼女の顔立ちが見えた。
灯りに照らされ、俯きの影が消えた瞬間
その美貌は、隠しようがなかった。
白い肌。
異国の血を思わせる瞳の色。
鼻筋は通り、唇は淡い紅を宿し、
睫毛は長く影を落とす。
町娘の装いをしているのに、
気品だけが誤魔化せない。
まるで――物語に出てくる姫君だ。
力丸は、無意識に目を細めていた。
(……姫、か)
胸の内でそう思った瞬間、
奇妙な感覚に襲われる。
つきとは、既に知った仲だ。
だが彼女はいつも俯いていた。
顔を伏せ、言葉を少なくし、
存在を薄くしていた。
――だから、気づかなかった。
いつの間に、
これほど美しく成長していたのか。
いや、成長したというより、元々持っていたものが、今ようやく輪郭を得たのか。
力丸はそれを初めて“認識”した。
信長が、ただ一言だけ呟く。
「……これほど、とはのう」
表情は語られない。
だがその声には、驚きすら予定の範囲に収める男の落ち着きがあった。
地底の空間には水路が走っていた。
岩を削り、整えられた水の道。
水は静かに流れ、光を受けて鈍く煌めく。
そして、その奥。
闇に溶けるように横たわる“何か”がある。
それが何なのか蘭丸は言葉にできない。
坊丸もできない。
ただ、目を奪われる。
理屈より先に、視線が縫い止められる。
錦之介は、そこを見ない。
つきは見上げたまま固まっている。
力丸だけが、
何でもないことのように歩みを進めた。
この先にあるものを、
知っている者の足取りで。
燃える本能寺は遠い。
赤い京も遠い。
だがあの炎は、今も都を照らしている。
一つの時代の終わりと、
始まりを暗喩するように。
そして地底で、別の始まりが、
静かに息をしていた。
つづく
魔法
使ってましたねー
はい、これは正史ではありませんよー
パラレルワールドの戦国物語です
わたしたちの習ったりした歴史とは
別のお話です




