第八話 北の大地(一) 其の一『国家とは』
りっきゅん。
でっかいこと言い出しましたねー
どーするんでしょー
楽しんでいきまショー
・:*+.\(( °ω° ))/.:+
樺太。
そこは、ほぼ未開とも言えるような
過酷な大地。
白。ただ、白。
空も、海も、大地も――
すべてが、凍りついていた。
風が吹く。
ゴオオオオオ……
雪が、横殴りに叩きつける。
バシィッ バシィッ
視界は、数歩先すら曖昧。
音が、削られていく。
生命の気配が、ない。
⸻
海。凍りかけた水面が、軋む。
ミシ……ミシ……
波はある。だが、生きていない。
重く、鈍い。
ザ……ン……
ザ……ン……
岸には、氷塊。
砕け、ぶつかり、積み上がる。
ゴリ……ゴリ……
⸻
森。針葉樹が、ただ立っていた。
葉は凍り、枝は軋む。
ギ……ィ……
動くものは、ない。
鳥もいない。
獣の足跡すら、すぐに消える。
サァ……
雪が、すべてを覆う。
⸻
ここは、樺太。北の果て。
※当時の日本人のイメージです
生きること、そのものが試される地。
⸻
冬。
気温、氷点下二十度以下。
風速、時に人を倒すほど。
露出した肌は、瞬く間に凍傷。
水は凍り、火は奪われる。
⸻
食料。
狩るか、獲るか。
それ以外は、ない。
蓄えが尽きれば――死。
⸻
農耕、不可能。
輸送、困難。
居住、極めて不安定。
⸻
国家、なし。
統治、なし。
法、なし。
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ただ、生きる者だけが、そこに在った。
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一拍。
⸻
その白の中に、 “異物”があった。
雪を踏みしめる音。
ザク……ザク……
一定の歩幅。揺れない重心。
風を受けても、軸は崩れない。
力丸。
足を止める。視線を、白しかない地平へ。
力丸
「……なるほど」
吐く息が、長く伸びた。
力丸
「想像以上だな」
しゃがむ。
雪を掬う。
サラ……
力丸
「軽い……乾いている」
地面に触れる。
凍土。
ゴッ……
力丸
「……耕作は無理か」
立ち上がる。
風が叩きつける。
ゴオオオオ……
力丸
「だが――」
一拍。
力丸
「だからこそ、だ」
視線が、鋭くなる。
力丸
「この地は、“選ぶ”弱い者は、弾かれる」
「だが――強い者だけが、生き残る」
沈黙。
力丸
「いい場所だ」
⸻
暗転。
⸻
――これは、
かつて力丸が行った視察の記録。
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そして、現在。
⸻
釜石。 夜。 海風。
ザァ……
巨大な艦の影の下。共謀者たちが、
向き合っていた。
力丸
「樺太に、国を起こします」
一拍。
風の音だけが、流れる。
勝家
「……は?」
お市
「国……じゃと」
紫電は、黙っている。
「………」
その目は、既に――測っていた。
力丸
「一度見てきました……あそこは、
人の住む場所ではない」
勝家
「ならば何故だ!」
力丸
「ならばこそ」
⸻
間。
⸻
力丸
「誰も、来ない。誰も、奪わない」
「誰も、支配していない」
お市
「……」
力丸
「そして――生き残る者だけが、生きる」
あの白の世界が、一瞬、重なる。
力丸
「あそこは、“選別の地”」
勝家
「そんな場所で、国など……」
力丸
「作れます」
即答。
力丸
「いや――作る」
視線が、全員を射抜く。
力丸
「外へ出る為の国、干渉されない拠点。
力を蓄える場所」
紫電
「……ほう」
力丸
「この国は、既に外から狙われている」
「南蛮だけではない。北も、危険だ」
誰も、言葉を返せない。
力丸
「その前に。こちらが、“外へ出る”」
⸻
一拍。
⸻
力丸
「その為の、国です」
静寂。
だが――その言葉には、
“現実”があった。
力丸
「……準備は、もう始めています」
風が吹く。
ザァ……
その夜。
ひとつの構想が、“現実”として動き出した。
北の大地。建国、開始。
釜石の夜。
静かな海。
ザァ……
一同の心に
「樺太に国を起こす」
その言葉が、場に残る。
力丸が、ゆっくりと口を開く。
「……では」
一同を見渡す。
「“国家”とは、何でしょう」
沈黙。
紫電が、先に答える。
「領土」
勝家
「民だな」
お市
「その両方が揃って、初めて“国”じゃ」
力丸、小さく頷く。
力丸
「いかにも」
一拍。
力丸
「では――」
視線が、わずかに鋭くなる。
「領土は」
沈黙。
力丸自ら、答える。
「樺太」
誰も、否定しない。
あの地の過酷さを、既に聞いている。
紅蓮
「……あの地を、国に」
力丸
「はい」
迷いはない。
一拍。
力丸
「では、民は」
今度は、わずかに間を置く。
力丸
「誰にしますか」
視線が、問う。
お市が、静かに答える。
「……その地に住む者」
勝家
「他におらんだろうな」
力丸、頷く。
「はい」
一拍。
力丸
「民は――」
はっきりと、言い切る。
「ニヴフ。そして、アイヌの民」
沈黙。
異論は、出ない。
力丸
「元より、そこにいる者たちです」
一拍。
力丸
「彼らの国を、起こす」
静かに。だが、確定事項のように。
紅蓮
「……彼ら自身の」
力丸
「はい」
沈黙。
お市
「治めるのも、彼らか」
力丸
「その通りです」
迷いなく。
勝家
「……それで、国になるのか」
素朴な疑問。
力丸は、わずかに目を細める。
「なります。そう仕向けるのです」
一拍。
力丸
「形は――」
ほんの僅かに、間。
力丸
「民主国家です」
沈黙。
その言葉に、
一同の表情が、わずかに変わる。
紫電
「……ほう」
守亮
「面白いことを言いますね」
勝家
「……よく分からんが」
お市
「聞き慣れぬ言葉じゃな」
波の音だけが戻る。
ザァ……
領土。
民。
国家の骨格だけが、
静かに、その場に置かれた。
だが――
それが何を意味するのか、
まだ誰も、完全には理解していない。
力丸は、更に
「……もう一つ」
一同の視線が、集まる。
力丸
「国家に必要なものがあります」
一拍。
力丸
「“思想”です」
その言葉に、わずかな緊張が走る。
紫電
「……思想、とな」
守亮
「国の“在り方”ですね」
力丸
「その通り」
静かに、頷く。
力丸
「領土があり、民がいる」
一拍。
力丸
「だが、それだけでは“集まり”です」
「今と変わらない」
淡々と。
「そこに――」
ほんの僅かに、間。
力丸
「“何のために在るか”が必要になる」
沈黙。
お市
「……大義、か」
力丸
「そう」
勝家
「……難しい話になってきたな」
紅蓮
「ですが、避けては通れません」
力丸、わずかに視線を落とす。
「統一された思想があって」
「初めて、国は“国家”になる」
一拍。
力丸
「命じる必要はありません」
「縛る必要もない」
沈黙。
守亮
「……では、どうするのです」
力丸は、ゆっくりと顔を上げる。
「考えさせる」
一瞬。
勝家
「……は?」
力丸
「その土地で、そこに住む民が」
一拍。
力丸
「自ら考え、生きていく」
静かに。だが、はっきりと。
力丸
「それが、思想になる」
沈黙。
誰も、すぐには言葉を返せない。
紫電
「……面白い」
低く、笑う。
紫電
「与えるでもなく、押し付けるでもないか」
力丸
「はい」
お市
「……それで、まとまるのか」
力丸
「まとまります」
短く。
力丸
「“生きるために必要なもの”は」
一拍。
力丸
「自然と、同じ方向を向く」
沈黙。
守亮
「……なるほど」
「思想ですら、“生まれるもの”と」
力丸
「その通り」
波の音。
ザァ……
領土。 民。 思想。
その三つが、静かに揃う。
力丸
「これで――国家となる」
誰も、否定しない。
まだ全ては見えていない。
だが――
“形”は、確かにそこにあった。
夜の海。その向こう。
まだ存在しないはずの国が、確かに、
輪郭を持ち始めている。
力丸
「では、何故あの地に“国家”がないのか」
つづく
国家を語りましたよー
いやームズ
(-.-)y-., o O




