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新世界の創世者は、魔王ではなく?  作者: ニャンコ
第二章 暗躍する者たち
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第七話 因果は巡る           其の六『君の名は』

お前は、誰だ!

私は……

釜石の夜。

    海風。

      ザァ……

艦の影の下。三人は、まだ立っていた。

言葉は尽きたはずなのに、

     空気だけが、重く残っている。

 守亮は、

   少し離れた位置でそれを見ている。

何も言わない。ただ、観察している。

 その時。

   ――音が消えた。

風が、止まる。波の音も、衣擦れも、

すべてが、途切れる。

    勝家が、眉をひそめる。

「……なんだ?」


    お市も、違和感に気づく。

「風が……」


 信長――紫電は、ゆっくりと、

            空を見上げる。

空間が、歪む。

      グニャ……

         まるで、水面のように。

光が、捻じれる。

      バチッ……

       ……バチバチッ

            空間の裂け目。

 そこから、“何か”が降りてくる。

重力を無視した落下。

      ズ…………

           音もなく。

 影が、形を持つ。  黒。  赤。

人の輪郭。

    だが――

 明らかに、この場の理から外れている。

勝家が、構える。


      ザッ

    勝家

「何者だ!」


お市も、一歩引く。守亮、目を細める。

 紫電だけが――見ている。

食い入るように。

 影が、完全に着地する。


      トン……


      静寂。


煙のように揺らいでいた輪郭が、

          ゆっくりと、定まる。


仮面。

   赤い――

        その瞬間。

          

紫電の目が、輝いた。

 紅蓮は、口を開けて固まった。

  守亮は、笑いかけた。堪えた。


赤仮面が、ゆっくりと、顔を上げる。


      一拍。


そして――


    赤仮面

「飛騨の忍者――」


     間。

      ビシィッ

            決めの構え。

    赤仮面

「赤仮面、参上!」


      沈黙。

       完全なる、沈黙。

一瞬の空白。


そして――


    紫電

「おおおおおおおお!!」

    食い気味に前へ出る。

       目が、完全に輝いている。


 紅蓮は、気を失った。


    守亮

「ぶふっ、ぐわはははは……」

    堪えきれなかった。


    紫電

「なっ、なっ」


「でら格好ええがや!!」


    興奮。完全に少年の顔。


    勝家、呆然。

「おっさん、何に感動しておる」


紅蓮。目を見開き――固まったまま。


    紅蓮

「…………」

    次の瞬間。

      ガクン

         膝から崩れ落ちる。


    勝家

「おいぃ!?」


 守亮。口元を押さえている。震えている。

      プルプル……

      ドンッ ドンッ(床叩く)

    守亮

「なんですかそれは!!」


「登場の仕方からそれですか!!」

    完全にツボに入っている。


    勝家

「笑うな!!状況が分からん!!」


 お市。腕を組み。ため息。

    お市

「……やはりな」


    勝家

「やはり、とは何だ」


    お市

「そのままの意味じゃ」

    視線を、赤仮面へ。

「妙な忍びよ」


    勝家

「こやつが笑われると、気まずい……」


 赤仮面。

何も気にしていない。

       決めポーズのまま、静止。

    一拍。


 ゆっくりと、姿勢を戻す。


    赤仮面

「……」

    視線が、紅蓮へ。

倒れている。

    赤仮面

「……誰ですか、これ」


    守亮、まだ笑っている。

「初見で気絶しましたよ……!」


 紫電、ぐっと近づく。距離が近い。

完全に興味津々。


    紫電

「貴様が、赤仮面か!!」


赤仮面、わずかに仰け反る。


    赤仮面

「……はい」


    紫電

「面白い!!実に面白い!!」


    勝家

「何がだ!!」


    お市、額を押さえる。

「……頭が痛い」


  夜。  海。  巨大な艦。


そして――


 完全に崩れた空気。

だが、その中心にいるのは、間違いなく。

 この男。

     赤仮面――力丸であった。



 笑いの余韻が、まだ残っている。

守亮は肩を震わせ、紫電は興奮したまま、

勝家は状況に追いつかず、

  お市は呆れ半分で見ている。

その中心。赤仮面は、静かに立っていた。


      一拍。


    赤仮面が、ゆっくりと口を開く。

「……失礼しました」

    その声音。

      先程までの“芝居”とは違う。

 低く、落ち着いた声。

        空気が、わずかに締まる。


 紫電の目が、細くなる。


    赤仮面

「改めて」

    右手が、仮面にかかる。

      カチャ……

       小さな音。


 守亮の笑いが、少しずつ収まる。

勝家の表情が、引き締まる。

 お市の視線が、鋭くなる。


そして――

      スッ……

        仮面が、外れる。

 月明かり。その顔が、露わになる。


      静寂。


 完全な沈黙。


      一瞬、


        誰も、言葉を発せない。


 紫電の目が、見開かれる。

次の瞬間。

    紫電

「……やはり、お前か」

    確信。

 驚きではない。“納得”の声。


    勝家

「……は?」


    お市

「……え……?」


 守亮も、目を細める。

さっきまでの笑いが、すっと消える。


 勝家と市の視線が、紅蓮へ。

そして―― 力丸へ。


 交互に、見る。


    勝家

「待て………似すぎだろうが」


 お市が、一歩前へ出る。まじまじと、見る。

力丸の顔。そして、倒れている紅蓮の顔。


    お市

「……同じ、顔……?」


     “似ている”を超えている。


まるで――

    お市

「……双子、か」


守亮、苦笑する。


    守亮

「いや……驚かれるのも分かります」


 紫電は、静かに笑う。

       力丸は、何も言わない。

ただ、静かに立っている。

 その視線が、わずかに紅蓮へ落ちる。

まだ、気絶している。

 ピクリとも動かない。


    紫電

「……久しいな」


      一拍。


    力丸

「……はい」

    短く。

      それだけ。

だが――その一言で、すべてが繋がる。


    勝家

「おい………こいつが……」


    お市

「……赤仮面」


    守亮

「そして――」


    紫電が、言う。

「力丸よ」


   夜。   海。   巨大な艦。

 そして、すべての中心にいる男。

       森 力丸。


しかし、

 驚愕したままでは、済まさない者がいた。

    お市が問う。

「伊達小次郎が、ここで兄上といる」


「……と、いうことは」


    力丸

「気づかれましたか」


    勝家

「???」


    お市

「お前は、何を企む」


「伊達で何をする気だ」


    勝家

「何故、儂を救けた」


    お市

「アンタは、黙って」


    勝家

「は、い」

    しょげた。


    力丸

「お館様、いや、ご隠居様」


    紫電は、力丸を見据えた。

「なんじゃ」

    鋭い眼光。


    力丸

「この話は、

    まだご隠居様にもしておりません」

    紫電

「問わなんだからな」

    表情が和らぐ。


    力丸

「私は、転生者です」



「なっ!」


「?」


「転生じゃと」


「ほおぅ」


    一同は、受け入れきれない話に

         ただ、戸惑っていた。


    紅蓮

「どうしました」

    ようやく気が付いた。


    力丸

「ご無沙汰しております、小次郎殿」


    紅蓮

「あっ、これはどうも」


「というか、先程のは何ですか」


    紫電

「そこは、後じゃ」


    力丸

「私は、間違いなく森の者です」


「ですが、前世の記憶があります」


    紫電

「あの“力”か」

    探るように問う。


    力丸

「いえ、あれは、前々世の“力”です」


    勝家

「いったい、何を言うておる」


    お市

「ハウスっ!!」


    勝家

      きゅーぅん


    力丸

「何故か、それは私にも分かりませんが」


「前々世の“力”と、前世の“力”、

          共に使えるのです」


    守亮

「小次郎殿に、化けているとか」

    探りを入れる。


    力丸、首を横に振り

「それは、偶然です。私も驚きました。

そして、その時に思いついた

          “入れ替わろう”と」


 「ただ、米沢に来たのは、

         偶然ではありません」   

「まあ、それは置いておきましょう」


    一同は、ただ聞くしかなかった。


    力丸

「私の目的」


「それは、世界に出る!」


    紫電が目を丸く

「儂か」


    力丸、目を伏せながら。

「そうですね。

 影響を受けていない。とは言えません」

    顔を上げ、目を見開き。

「この世界を、変えてやろう」


    一同は、ようやく理解した。

この“力”。この周到さ。この規模。


     天下どころではない


 まだ、全容は見えないが、馬鹿げた話に

見合う“力”がある。

    一同は、そう思った。


 力丸は、一同を見渡した。

    そして、

「みんな、私の話を信じている。

             何故です?」

    と、問う。


    紫電

「貴様には、言う資格がある。皆、

           そう思うておる」

「理解出来ておらんのもおるが」

    勝家を見る。


 勝家、リアクション出来ず。


そして、力丸は語る。

    力丸

「では、現実的な話をしましょう」


 論点が変わる。具体的な話に。

    力丸

「私は、“討たれる”はずの人間を、

       “活かす”ことにしました」


 信長。  勝家。  お市。

     眉が、自分の話だ。と応える。


    力丸

「手が足りない」

    自身の掌を見る。

「世界を変える為には、“共謀者”が、

              必要です」


 紫電。やれやれという顔。


    力丸

「ご隠居様、“世界漫遊の旅”約束いたし

  ましたが、“タダ”では、ありません」


 紫電。そう来たか!の顔。


    力丸

「旅行代分は、働いて貰います」


    紫電

「それだけ、か」

    やや、拍子抜け


    力丸

「はい。二言ありません」


    紫電

「承知仕った」


 勝家は、覚悟した表情をしている。


    お市

「私もか?」


    力丸

「………」

    暫く沈黙。

「いえ、そうではありません」


 守亮も、予測出来ない。何故?と

顔に出そうになっていた。


    力丸

「私の我儘です。戦国の世、武家の女、

だからといって、死なせたくありません」


    紫電

「フッ」

    声にもならない笑い声。


    力丸

「笑いますか」

    そう言って照れ隠し。


    勝家

「そうか…」


「ついでです」

    力丸が間髪入れず放つ。


    勝家

「雑いよー」


    お市

「大人の話です」

    一喝。


「しかし、“タダ”という訳にはいくまい」


    力丸

「兄様の、“お守り”をして下さい」

    優しい笑み。


    勝家

「儂も供をしよう。それで良いか」


    力丸

「概ね、そんなところです」


 そう語り、己の素性を明かした力丸。

  そして、その野望も。


    力丸

「では、新しい名を決めましょう」


    紫電

「何か妙案はあるか」


    力丸

「ふむ、勝家…負けたのに勝家…」


    勝家

「優しくないなー」

    弄られ過ぎて、少し慣れてる。


    力丸

「負け、負け犬。犬、番犬…バンッ!」


    勝家

「うっ、やられたあ」

    銃撃されたマネ


      沈黙。

          ダダすべった。


    力丸

「番にしよう。姓は“番”名は“忠太”

              忠犬の忠。


    勝家(番忠太)

「はい………それで良いデス」


    おつぐ

「では、私は“つぐ”と名乗る」


    紫電

「そうか、良い名じゃ」


    紅蓮

「では、叔父上、叔母上ということですね」


    つぐ

「お、ね、え、さ、ま!」

    つのが見えた気がする。


    紅蓮

「は、はい」

    気絶しそう



 力丸は、嬉しそうに笑っていた。

“哀しみの少ない世界を”

 その想いが、次第にカタチになっていく


そして、力丸は言った。

「樺太に国を起こします」




      第七話 了。







新しい名を決めましょう。

あなたの名は……

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