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新世界の創世者は、魔王ではなく?  作者: ニャンコ
第二章 奥州平定
41/42

第七話 因果は巡る           其の五『三人寄れば』

ついに三人が再会。

力丸は何を想い、助けたのでしょう。

人助けが趣味なの?

 室内。

火の気はあるが、どこか、冷えている。



 信長。お市。勝家。

三人が、向かい合う。


 しばし、沈黙。


    勝家

「……つまりだな」

    腕を組む。眉間にしわ



    勝家

「儂は死んでおるはずで」


    信長

「死んでおるな」


    勝家

「アンタもな」


    信長

「死んでおる」


    お市

「私は、後を追った」


    三人

「…………」


      間。


    勝家

「……全員、死人ではないか」


    信長

「そうなるな」


    お市

「笑えぬ話じゃ」


 だが――誰も、笑わない。


      空気が、沈む。


    信長

「だが、こうして生きておる」


    勝家

「うむ……」


    お市

「……生かされた」


 その言葉に、一瞬、三人の視線が交わる。


    信長

「力丸」


    お市

「赤仮面」


    勝家

「あの男……」


 それぞれの脳裏に、


 “同じ影”が浮かぶ。


 炎の中に立つ影。

跪く影。何も語らぬ影。


    勝家

「何者だ、あやつは」


    信長

「森可成の五男、と言うておった」


    お市

「……忍び、ではない」

 断言。


    勝家

「同感だな」


    信長

「うむ」


      間。


    信長

「まず、“力”だ」

    指を、ひとつ立てる。


    信長

「本能寺に、抜け道を仕込む」


    勝家

「北ノ庄にて、儂らを逃がす」


    お市

「城中で、誰にも気取られず現れる」


    信長

「そして――」

    わずかに、視線が動く。

「気づけば、この地だ」


      沈黙。


    勝家

「……どうやった」


    お市

「分からぬ」


    信長

「分からぬな」

    即答。


      重い。


    勝家

「兵の数も、おかしい」


    お市

「統制も取れていた」


    信長

「ただの寄せ集めではない」


      間。


    信長

「組織だ」


    勝家

「うむ」


    お市

「しかも、大規模な」


 さらに、沈む空気。


    勝家

「いつからだ」


    信長

「本能寺の前だな」


    お市

「……かなり前」


    勝家

「では、何のために」


 その問いに、三人とも、すぐには答えない。


    視線が、揺れる。

 炎の音だけが、微かに響く。


      パチ……


    信長

「儂を逃がすため」


    勝家

「市を救うため」


    お市

「……それだけか?」


      間。


    信長

「違うな」


    勝家

「足りん」


    お市

「……ええ」


      沈黙。


    信長

「これほどの手間」


    勝家

「これほどの備え」


    お市

「これほどの力」


    三人、同時に――

「それだけでは、ない」


 空気が、張り詰める。


 その時。

    少し離れた位置。


 守亮。

壁に寄り、

腕を組み、

静かに、聞いている。


    その目。

 わずかに、細められる。

    口元。

 ほんの僅かに――

           動く。

 だが。何も言わない。


    信長

「目的がある」


    勝家

「間違いなくな」


    お市

「だが、それが見えぬ」


      沈黙。


 再び、守亮へ。

視線だけが、一瞬、三人へ向く。

 その表情。

    “知っている者”の顔。

 だが――すぐに、戻る。

    無表情。

 何も語らぬ、影。

室内。静まり返る。


    信長

「……妙だな」


    勝家

「妙だ」


    お市

「妙じゃ」


 だが―― 誰も、

 その“答え”には辿り着かない。


 ただひとりを除いて。

       守亮。

 沈黙の中で、わずかに、目を伏せた。


 重く沈んだ空気。

だが――

 信長が、ふっと息を吐いた。


    信長

「分からぬことばかりではない」


 二人の視線が上がる。


    勝家

「……何だ」


    お市

「何です」


 信長、ゆっくりと立ち上がる。


    コツ……


 床を鳴らす足音。

    信長。振り返らずに、言う。

「来い」


 歩き出す。二人も、無言で続く。


      コツ……

        コツ……


 戸が開く。


      ギィ……


 外。夜気が流れ込む。


      スゥ……

          冷たい風。

 火の匂いとは違う、

    “鉄”と“潮”の匂い。


    勝家

「……ここは」


    お市

「海……?」


 視界が、開ける。その先。

    “それ”があった。

 巨大な影。

月明かりを受けて、鈍く光る外殻。

 帆ではない。

 木でもない。

      見たことのない構造。

 異様な存在感。


      ドン……


 そこに“在る”だけで、場を支配する。


    勝家の目が、見開かれる。

「……なんだ、これは」

    思わず、一歩前に出る。


    お市も、言葉を失う。

「……船、か……?」


 だが、知る“船”ではない。


    信長、わずかに口元を上げる。

「これだ」

   指し示す。


    信長

「分かっていることの一つ」


    風が吹く。

      ザァ……


 艦の表面を撫でる。どこか低い唸り。


      ゴゥ……


    信長

「どうやって造ったかは、知らぬ」


「だが――」


      一拍。

    信長

「見れば分かる」


 勝家、歯を食いしばる。


    勝家

「……化け物だな」


    お市

「戦の道具、ではない」


    信長

「うむ」

    ゆっくりと、振り返る。


    信長

「あの男の“力”の一端だ」


      沈黙。


 三人、再び艦を見る。

ただの兵でも、

ただの策でもない。

 “次元”が違う。


    信長

「そして、もう一つ」


 視線を空へ。夜空。遠く、星。


    信長

「あの男は、言うた」


━━━━━━━━━━


 炎の中の記憶。

 静かな声。


    力丸

「叶えます」


━━━━━━━━━━


    信長

「儂の夢を」


    勝家、眉をひそめる。

「夢、だと?」


    お市

「兄上の……?」


 信長、笑う。

あの頃と同じ、無邪気さで。


    信長

「世界を、見て周ることよ」


     風。

      サァ……


 艦。   海。   空。


 すべてが、その言葉に重なる。


    信長

「天下では足らぬ。この国だけでは、狭い」


 静かに。だが、確かな熱。


    信長

「世界だ」


      一拍。


    信長

「そのための“ふね”よ」


 勝家、絶句。 お市、ただ見つめる。


 そして――

その視線の先。


 巨大な艦が、沈黙のまま答えていた。



     海風が、わずかに強くなる。

      ザァ……

 巨大な艦を背に、三人は立っていた。


    勝家

「……世界、だと」

    まだ、飲み込みきれていない。


    お市

「兄上らしい、と言えばそうじゃが……」

    視線は艦に。

だが、心は別のところにある。


    その時。

      コツ……

背後。  足音。  振り返る、勝家。


    勝家

「誰だ」


影が、一つ。静かに、歩み寄る。

      月明かり。

その顔が、浮かぶ。

若い男。

だが、その目は――

         知っているよう

    小次郎

「お初にお目にかかります」

    深く、礼。

「伊達小次郎、と申します」


    間。


    勝家

「……伊達?」


    お市

「奥州の……」


 小次郎、顔を上げる。

    小次郎

「はい」


    一拍。


    小次郎

「ですが――」

    視線が、信長へ向く。

        信長は、何も言わない。

ただ、静かに立っている。


    小次郎

「今は、甲斐紅蓮と名乗っております」


     風が、止まったように感じる。


    勝家

「……は?」


    お市

「甲斐……?」


 紅蓮は、淡々と続ける。


    紅蓮

「父の言う通り、世界へ出ます」


「我らは、以前の人生を終え、

      新たな人生を歩むにあたり」


「我らは“甲斐”の姓を

       名乗ることとなりました」

視線。

   信長へ。


    紅蓮

「この方は」

    一拍。


    紅蓮

「織田信長 改め――」


「甲斐紫電」


    静寂。


    勝家

「…………」

    固まる。


    お市

「……兄上?」


 信長は、わずかに、肩をすくめた。


    信長

「そういうことらしい」


    勝家

「らしい、で済むか!!」

    思わず叫ぶ。


    紅蓮

「そして、私は甲斐紅蓮」


    紅蓮

「この方の“子”として、仕えております」


    勝家、絶句。

「子……?」


    お市

「……親子……?」


    紅蓮、静かに頷く。

「はい」


    間。

      風が、抜ける。


    紅蓮

「力丸様の希望です」


その名に、空気が引き締まる。


    紅蓮

「世界を見て回る、その夢を叶えるため」


「力丸様は、動いています」

    視線が、艦へ。

「天下統一は、秀吉殿に任せ」


    勝家

「任せる、だと……?」


    紅蓮

「はい。父は、

    織田信長は、充分に働きました」


    一拍。


    紅蓮

「しかし、この国は、危険なのです」


「海外の列強に、狙われているのです」


    お市の表情が、わずかに変わる。

「……列強?」


    紅蓮

「この国の外には、

    さらに強大な国々が存在します」


    勝家、眉をひそめる。

「……聞いたこともない」


    信長

「阿呆じゃからのう」


    勝家

「うつけに言われとうないわ!」


    紅蓮

「勝家様、それらはまだ、

      見えていないだけですから」


静かに。だが、確信をもって。


    紅蓮

「ゆえに、

    この国を守り、そして――」


     艦。   海。


    紅蓮

「世界へ出るための拠点を築く」


「力を蓄える」

    視線が、遠くへ。

「そのために」


「奥州の伊達政宗を、影で支えている」


      沈黙。


 すべてが、繋がる。

信長は、黙って聞いている。

    既に知っている顔。


    勝家は――

「待て待て待て待て」

    頭を抱える。

「話がでかすぎるわ!!」


    お市

「……だが、筋は通っておる」


静かに。整理するように。

    お市

「兄上を逃がし、私を救い」


    勝家

「儂まで生かし」


    お市

「拠点を築き」


    勝家

「国を守り」


    お市

「世界へ出る……」


    間。


    勝家

「……正気か?」


    信長

「面白いではないか」

    即答。


 勝家、呆然。

だが――


    お市

「……理解は、できる」

    一拍。

「だが」

    視線が、わずかに鋭くなる。

「疑問が残る」


    勝家も、顔を上げる。

「……ああ」


    お市

「なぜ、我らなのか」


    勝家

「儂らを、生かした理由だ」


    沈黙。


    お市

「兄上は分かる」


    勝家

「なんとなく、な」


    お市

「だが、我らは?」


     風。

      サァ……


    勝家

「そして――」

    ゆっくりと、言う。

「真の目的」

    視線が、紅蓮へ。

 だが、紅蓮は答えない。

    ただ、静かに目を伏せる。


    お市

「力丸という男」


    勝家

「どこまで見ておる」


    信長、わずかに、笑う。

「さてな」

    一拍。

「それを知るのは――」


     風が吹く。

      ザァ……


    信長

「あの男だけよ」


   夜。   海。   巨大な艦。


そして――

    見えぬ策。

       物語は、さらに深く沈む。




       つづく



そういえば、甲斐姓を名乗ることを

希望していましたねー

なんとなーく、見えてきましたね

^ ^

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