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新世界の創世者は、魔王ではなく?  作者: ニャンコ
第二章 奥州平定
39/41

第七話 因果は巡る           其の三『任務完了(Mission complete)』

黒脛巾組、初の大仕事でした。

その余韻もここまで

かな


 夜明け。

 風。

      サァ……

 芦原が、揺れる。

 露が、光を受けている。

      きら……

 遠く――

      人影。


      ザッ

        ザッ


 忍びたちが、現れる。 別方向からも、


      ザザッ

さらに、

      トン

屋根から降りる影。


 各隊が、集まる。

      無言。

 ただ、互いの“無事”を確認する。


    クラ

「……揃ったな」


    月叟

「欠けは、ある」


    クラ

「すまん、せやったな」

    表情は変えない。


    一拍。


    月叟

「だが、任は果たした」


 誰も、軽くは頷かない。


 少し離れた場所。


 つき。

立っている。ただ、立っている。

 その肩が、わずかに、上下する。


      呼吸。

 手。

かすかに、震えている。


    つき

(……終わった)


 その瞬間。

      フッ……

 力が抜ける。

膝が、

      カクッ

   落ちそうになる。

      スッ

 支える手。


    ナギ

「よくぞ無事で」


    つき

「はい。……大丈夫、です」

    だが、その声は、少しだけ、弱い。


    クラ

「つき」


 呼ばれる。顔を上げる。疲労は否めない。

疲れきってはいながら、気力でたっている。


    クラ

「ようやった」

    短い。

       だが、重い。


    月叟

「見事、やり遂げましたね」

    微笑む、安堵が感じられる。


    弥七

「まったくだ。大した嬢ちゃんだ」

    表情は変えず、いや、うっすら笑み


    ナギ

「ほんとうに」


「初陣でこれだけのこと、立派だと思う」


    つき

「……」

    一瞬、理解が遅れる。

    つき

「……あ」

    言葉が、出ない。

 代わりに、息が、漏れる。

      スゥ……

 目が、少し潤む。だが、泣かない。


    つき

「……はい」

    それだけ。


      ドカッ

 座る。

    勝家

「ふぅーーーーっ!」

    大きく息を吐く。

「疲れた!!」


 全員、わずかに固まる。


    ナギ

「……」


    クラ

「……」


    お市

「……」


    一拍。


    お市

「静かにせぬか」


    勝家

「なんでー」


「生きてるんだぜ!?」


      間。

    勝家

「喜ばんでどうする」

    空気が、少し、緩む。


    お市、つきを見る。

「……こちらへ」

つき、近づく。

    お市

「顔を上げよ」


 つきは、顔を上げる。

 お市、まっすぐ見る。


    お市

「よくぞ、務めあげてくれました」


    一拍。


「見事でした」

    静か。だが、確かな重み。


 つきは、一瞬、息を止める。

    つき

「……っ」


 胸の奥に、何かが落ちる。

    つき

「……ありがとうございます」

      深く、頭を下げる。


 勝家が立ちあがる。

      すっ

 つきの前へ。


    勝家

「おい」


 つき、顔を上げる。


    勝家

「お主やな」


      一拍。


「市を、運んだのは」


    つき

「……はい」


 勝家は、まっすぐに顔を見る。

      じっと

 次の瞬間。

      ガバッ

 頭を下げた。


    勝家

「礼を言う」


 全員、止まる。


    勝家

「ありがとう」

    真っ直ぐ。飾らない。


 つき、固まる。


    つき

「……え」

    想定していない。


    勝家

「ほんとうに、ほんとうに」


 一拍。


「ありがとう」


      静寂。

        風だけが、通る。

      サァ……


 つきの目が、揺れる。


    つき

「……っ」


 言葉が出ない。

代わりに、もう一度、深く、頭を下げた。


 芦原の朝。

戦は、終わった。

だが、何かが、確かに残った。


 守られた命と、守り抜いた者の想いが、

ここに、重なった。


      風が吹く。

        芦が揺れる。

      サァ……


 その音だけが、場を満たしている。

誰も、喋らない。


      コト……

 小さな音。つきの目が動く。


「……来ます」


 全員の視線が一点に集まる。

空気が、わずかに張る。


      トン


影が降りる。

 赤い仮面。

赤仮面――力丸。


      ザッ


土を踏む音。そのまま、歩く。

誰も、声をかけない。

 足取りは一定。

だが、わずかに重い。

クラと目が合う。一瞬。何も言わない。

ナギ、口を開きかけて、閉じる。

月叟、ただ見ている。

弥七、煙草を指で弄び、火はつけない。

つき、立つ。

    一歩、出る。

「赤仮面様」


 声は平静。だが、ほんの僅かに揺れている。

「任務――」

    一瞬、詰まる。

「完了、しました」


力丸は、歩を止め、つきを見る。

その視線は変わらない。


「……ご苦労」


 短い。

だが、それで十分だった。

つきの肩から、スッと力が抜ける。

 お市、前へ出る。力丸と向き合う。


    少しの間。


「……来たか」


「はい」


 それだけ。

だが互いに、すべてを理解している。


    勝家、腕を組む。

「遅かったな」

    責める色はない。


「……少し、手間取りました」

    赤仮面は、無表情のまま。


「そうか」

    勝家

「この件、お主であろう?」


      間。


    勝家

かたじけない」

    頭を下げる。


    赤仮面

「光栄です。ですが、これは私の我儘です」


「……」

    勝家

「そうか」


それ以上、聞かない。


一瞬、風が止む。

      静寂。


 誰も言わない。

“二人”のことを。


クラ、目を閉じる。

ナギ、空を見る。

弥七、煙草を折る。

月叟、わずかに目を伏せる。


 その表情は変わらない。

だが、その奥は誰より深い。


力丸、歩く。


 あの場所。何もない地面。

だが、そこに“あった”。わずかに足が止まる。

      一拍。


何もなかったかのように、通り過ぎる。


 お市、それを見る。

何も言わない。ただ、理解する。

 つきも、見る。

言葉に出来ない何かを、初めて感じている。


      サァ……


 芦が揺れる。音が、すべてを包む。


    クラが顔を上げる。

「……ほな」

    一同を見る。

「帰ろか」


 短い。

だが、それがすべてだった。

歩き出す。

誰も振り返らない。

だが、誰も忘れない。


 語られぬ想いほど、深く、残る。

誰も、先ほどまでのことを口にしない。

 だが――

共有されている。沈黙の中で。

 つきは、一度だけ後ろを見た。

燃え落ちた城は、もう見えない。

ただ、空だけが広い。


「……」


    勝家

「腹減ったな」

    ぼそり。


      間。


    お市が、ため息をつく。

「……少しは慎め」


    勝家

「生きとるからのう」

    笑顔


 小さなやり取り。だが、それでいい。

生きている音だった。

 少し離れて、

    クラが言う。

「ここから先は、分かれるで」


 誰も驚かない。

決まっていたことのように。


    月叟が頷く。

「我らは米沢へ戻る」


    ナギが肩をすくめる。

「何事もなかった、ですね」


    クラ

「そういう仕事や」


 一方。

お市と勝家は、


    赤仮面

「市の方、勝家殿」

    ここで明かされる

「お二人には」

    事実

「別の地へとお送りします」


    お市

「よい。拾ってもろうた身じゃ」


「そのほうに任せる」


    勝家が笑う。

「構わん。お主に任せる」


お市は、一度だけ。赤い仮面を見る。

ほんの一瞬。目が合う。言葉は、無い。


それで、十分だった。


風が吹く。

      サァ……

芦が揺れる。

道が分かれる。

 それぞれの、行く先へ。

――そして

何事もなかったかのように、

        彼らは、日常へと戻る。

 だが、この夜は、確かに残る。

見えぬところで。

 次の流れを、静かに動かしながら。




       つづく



        



さて、一同は元の地へ

そして、新たな人生を歩く者達は

どこへ行くのか

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