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新世界の創世者は、魔王ではなく?  作者: ニャンコ
第二章 奥州平定
35/38

第六話 賤ヶ岳の戦い          其の五『Dead Reckoning』

作戦成功


と思っていたら、いやいやまだですよ

遠足は帰るまでが遠足です。

勝家は?

お市様は?

どこー

 北ノ庄の城は落ちた。

柴田勝家は自刃にて果て

  お市の方は、後を追った。

 羽柴筑前守秀吉が、信長公の後継として

天下人となる。これは周知されたこと。

 しかし、力丸の作戦は、

      まだ終わってはいなかった。


 北ノ庄城下から脱出した、お市様。

見事、城内からの救出劇を成し遂げてみせた、

つき。

その、つき が、お市様を伴い城下町から街道へ抜けんとしていた。


 背後には、瓦礫の影。炎。

つき が、通信機を叩いている。

    ノイズ。

      ズッ、ズザッザァー


      沈黙。

    つき

「……壊れました」

    真顔、しかし悲壮さはない。


    お市

「仲間とはぐれたか」


    つき

「はい」


 二人とも煤まみれ、疲労も隠せない。


      沈黙。


 だがつきは、すぐ周囲を見る。

燃える城。兵の移動。風。


    つき

「このまま、

     城下を抜け、街道を進みます」


 平静を装う気丈さは、

     お市には、容易に見てとれた。


    お市

「待たぬのか」


    つき

「はい。ここでは追手にも見つかります」


 つき は、努めて冷静に状況を探る。

それは、修練の賜か、それとも才能なのか。

 城下の路地。

つきが立ち止まり、地面を見る。

火の方向を見る。


「……」


    お市

「何を見ておる」


    つき

「流れ、を見ております」


 つき に、出来る事は限られる。

忍びになって、日が浅いのは否めない。

いくら、一流の忍びに囲まれてきたとはいえ、

ここで、しかも任務である

要人救出の状況下においては……


それでも、務めを諦めない。

まずは分析、

•羽柴兵 → 城へ

•柴田兵 → 外へ

•略奪兵 → 商家


 兵の流れ。

そして

 兵の動き。


 勝った兵たちは、略奪者と成り果てた。

敗残兵は、勝敗を決して尚、足掻あがいていた。


 そうした、心の動きまでも観察して、

自らの務めを果たす為の、道筋を探る。


    つき

「ここは危険です」


 別の道へ。走る。走る。

幾度となく、

進路変更を余儀なくされながらも、

迷いはない。

 目に見えぬ目的地ゴールは、

つき の想いの中には、確実にあった。


    お市

「地図もないのに」


    つき

「大丈夫です」


    お市

「なぜ」


    つき

「風と火で分かります」


「兵がおらぬ道を進みましょう」

    微笑んで見せた。

 精一杯の強がり が、それと分かって尚、

市には心強かった。




 追手いや、既に追ってくる者は、

   お市の方を探す者などは、いない。


 いるのは、危険な略奪者。

暴徒と化した者ども。

奴等の目をくぐり逃げる。

 それでも、完全には逃げ切れなかった。

路地の角。略奪者が現れる。

三人。

    兵

「女だ」


 つき が前へ出る。

(この方だけは、傷つけさせない)

しかし、

    お市

「待て」

    つき の動きを制す。

 兵が迫る。つき が苦無を構える。

だが、お市が前へ出る。短刀を抜く。

    低く言う。

「舐めるな」


 ついには戦闘となる。

戦力差は明らか、どう見ても、分が悪い。

 勝利におごる略奪者、

         相手は女二人。

           そこに一分の隙。

 お市の短刀が捉えた。

    一人。

もう一人の首筋に苦無。

 つき が、お市の背後を、護る。

残るは一人。

無謀かと思われたが、数的不利は一転した。

 兵は逃げる。

つき は、追わない。

    お市

「どうした。勝てる戦ではないか」


    つき

「騒ぎになります、これ以上は」


    お市が少し笑う。

「で、あるか」



 お市の生存を気取られてはならない。

つき は、初の実戦でも冷静クールである。


 お市は、つき を見ていた。

忍びという者への興味か、それとも、

娘ほどの歳の守護者への関心か。


 二人が歩く。

    お市が言う。

「お主、忍びではないな」


 つき の足が止まる。

    つき

「……」


    お市

「歩き方だ。武家の育ちだな」


    つき

「父が……」


    お市

「よい、聞かぬ」

    

 何かを察したように、

        つき の言葉をとめた。

      沈黙。


 そして、お市は言う。


「だが…」


「よい主を持ったな」


つきが少し驚く。


    お市

「あの赤い仮面の男。ただの忍びではない」


 城下のはずれ。

街道へ抜けようかというところへ辿り着く。

 だが、遠くに検問が見える。

つきの足が止まる。


    お市

「どうする」

    

「フゥー」

    と、つき は、静かに息を吐いた。

    そして、

「計算が外れました」



    つき

「進路を変えます」



 夜。炎に照らされる街道。

城下の出口には、羽柴兵の検問。

松明。

槍。

疲れた兵たち。

 つきは、瓦礫の影から観察する。

兵の数。動線。松明の位置。


    つき

「……無理です」


    お市

「突破は」


    つき

「戦えば兵が集まります」


    お市

「ならば私が行こう」


    つき

「え?」

    

    お市

「私は顔が知られておる」


    つき

「……」

    お市の話を聞く。


    お市

「女が一人歩けば、兵は必ず止める」


「その隙に、お主が抜けろ」


    つき

「なりません」


    お市

「他に何が出来る」


 つきは黙る。

    そして小さく言う。

「……あの方なら、別の方法を考えます」


    お市

「赤仮面か」


    つき

「はい、私たちの――」


「頭目です」


    お市は少しだけ笑う。

「妙な忍びだな」


    つき

「え?」


    お市

「忍びのくせに、私に生きろと言った」


    つきが驚く。

「……?」


    お市

「会ったのだ、城の中で」



◆市の記憶。回想。


 北ノ庄城。炎の揺れる部屋。

お市の前に、赤仮面が静かにひざまづく。


    赤仮面

「お市様、お迎えに参りました」


    お市

「羽柴の手の者か」


    赤仮面

「違います。貴女を生かすための策です」


    お市

「なぜだ」


 赤仮面は、少し沈黙する。

そして言う。

「貴女は、死のうとしておられる」


    お市

「………」


    赤仮面

「秀吉様は、貴女を討てませぬ」


   お市は、赤仮面を睨む。

「くっ…」


    赤仮面

「勝家様は、武士として死ぬでしょう」


「ですが、お市様には生きていただきたい」


      沈黙。


    お市

「誰の命だ」


    赤仮面

「……信長様。と言えば、信じられますか」


    お市の目が揺れる。

(まさか、そんなはずは)


    赤仮面

「勿論、冗談です」


    お市

「わかっておる。

例え健在であっても、このようなことはせぬ」

    少し照れては いた。


    赤仮面

「姫たちは、庇護されます。秀吉様が天下を望まれる以上、これはたがえられません」


「貴女だけです」


    お市

「お前は何者だ」


    赤仮面

「私は忍び。

 それ以上でも、それ以下でもありません」


    お市

「嘘を申せ。名は。名は、なんという」


    赤仮面

「名ですか。

   私は赤仮面、飛騨の忍者、赤仮面」


    お市

「面を外せ」

    

    赤仮面

「……出来ません」


    お市

「なぜだ」


    赤仮面

「忍びだからです」


      沈黙。


 炎が揺れる。


    お市が、ふっと笑う。

「そうか、ならばよい」


 赤仮面が顔を向ける。


    お市

「顔は見えぬが、目は見えた」


「嘘は。つかんようだ」


 赤仮面は、何も言えない。


    お市

「妙な忍びだな。だが、嫌いではない」




 場面は戻る。城下。

    つきが静かに言う。

「……そうです。妙な忍びです」


    お市

「だが信じてよい」


    つき

「はい」


    お市

「必ず来る」


    つき

「はい」


 ここで、二人には共通認識が生まれた。

信じられる者。行動を共にし、生き死にが掛かるこの状況で、これは大きな“力”となる。


 その時。屋根の上。

      コト

小さな瓦の音がした。つきが顔を上げる。

 影が降りる。

    ナギ

「つき!」


    クラ

「やっと見つけた」


忍びたちが現れる。


    つき

「クラ様!」


    ナギ

「無事ですか」


    つき

「はい!」


    お市を見るクラ。            軽く頭を下げる。

「お市様」


    お市

「早いな」


    クラ

「いえ、遅くなり面目ありません」


    月叟

「片付きました」

    

 月叟と、その配下数名も現れた。

この時、検問は無効化されていた。


    つき

「赤仮面様は?」


    クラは少しだけ間を置く。

「……あとで来る」



夜明け前。城下の外。忍びたちが移動する。


 お市が歩く。ふと、振り返る。

燃える北ノ庄城。


    お市が言う。

「つき」


    つき

「はい」


    お市

「お主らの頭目、名は何と言う」


    つきは少し迷う。そして、

「……力丸様です」


 お市、小さく笑う。

    そして静かに言う。

「そうか、よい名だ」


      少し間。


    お市

「顔は見ておらぬが、分かる」


    つき

「……?」


    お市

「きっと」

「人を死なせるのが、嫌いな男だ」



 つきの目が少し揺れた。


遠くで夜が明ける。炎の空。



    つき

「はい、そういう人です」

    煤まみれの、

   それでも清々しい笑顔だった。



 やがて

朝焼け。城が煙を上げる。



      北ノ庄城 落城




       つづく



 つき の回デスっ

ここまで無口な美少女キャラ

の一本刀できてました。

ついに、くノ一 としての一面を魅せます。

他の中隊長クラスには及びませんが。

つき も小隊長です。

がんばれっ

もっと活躍が見たいぞっ


そしてそして、謎めいた出自は?

良いモノです。謎めいた美少女。

お嫌いデスか?

(//∇//)


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