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新世界の創世者は、魔王ではなく?  作者: ニャンコ
第二章 奥州平定
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第五話 奥州統一へ(ニ)        其の三『既に影は在る』

無事、忍び奉行となりました

竹中半兵衛重治。

ここでは安倍重定と言う名です。

暗躍しますねー

楽しみですねー

 忍び衆奉行の任を請けたのは、

             安倍重定。


 言うまでもなく、よろず屋の錦之介。

伊達領内近くに潜み、

       この機会を伺っていた。

――錦之介は

 主君・政宗の命により

     米沢城書院へと呼び出された。


 次期当主候補の筆頭、

     藤次郎政宗

 奥州の覇を望む若き当主は、

          この時まだ十五歳。

 既に独眼竜の片鱗を覗かせていた。

そして今、新たな“目”と“耳”を

       手に入れようとしている。

だが

  その力が真に使えるものか――

 それを見極めるため

         この場にはもう一人

 政宗の懐刀

片倉小十郎景綱の姿があった。



◆米沢城内書院


 静かな部屋。

政宗、小十郎、重定。


   三人のみ。


 次期当主候補の筆頭、藤次郎政宗


    政宗

「重定といったな、忍び衆だが」


    重定

「は」


    政宗

「どれほど集まった」


    重定

「まだ数は多くはございませぬ」


    小十郎

「……」


    小十郎は黙っている。

(数ではない、質だ)


    重定

「しかし、かしらとなる者は既に」


    政宗

「ほう」


    重定

「二人」


    小十郎の視線が動く。

(頭を二人、分ける気か)


    政宗

「呼べ」


    重定

「既に城には入っております」


    小十郎

「……」


    小十郎の眉がわずかに動く。

(早い)


    小十郎

「案内の者は」


    重定

「おりませぬ」


    小十郎

「城内にいるのか」


    重定

「は」


    小十郎

(城門の記録は?見張りは?)


(……)


    重定

「忍びにございます」


「呼ばれてから来るとは限りませぬ」


    政宗の口元が僅かに上がる。

「なるほど」


「では、どこに居る」


    重定

「それは」


「見つけていただければ」


    小十郎の視線が重定へ向く。

(試されている)



 静かな違和感、部屋は静まり返る。

小十郎は何も言わない。

  だが視線がゆっくり動く。

机。

書付。

(向きが違う)

 先程は

政宗の方を向いていた。

 今は

小十郎の方へ向いている。


    小十郎

「……」


    小十郎

(触れた者がいる)


    政宗

「どうした」


    小十郎

「いえ」


    小十郎

(部屋の中ではない…ならば)

外。

庭。

風。

障子の影。

 一瞬だけ影が揺れる。


    小十郎

(いる)

しかし――見えない。


    小十郎は目を閉じる。

(忍び、城に入る)

(ならば)

(入口は今ではない)


記憶を辿る。



回想


数日前。城内の廊下。

 虎哉禅師が歩く。

後ろに男が一人。地味な衣。何の特徴もない。

 だが、目。

廊下の柱

兵の配置

      すべてを見ていた。


    小十郎

(あの男)



 現在


    小十郎

「先日」

    静かな声。

政宗が視線を向ける。


    小十郎

「虎哉禅師の供にいた男」


    重定の口元が動く。

「……」


    小十郎

「いたな」


    重定

「凄まじい慧眼ですな」


    政宗

「一人」


    政宗

「もう一人は」


    小十郎は黙る。考える。

(城の中)


(自然に近づける者)


(警戒されぬ者)


(我らの近く)


そして、思い出す。



回想


 先程。書院へ来る廊下。

    女中が案内する。

「こちらにございます」

    歩きながら、一瞬だけ

        小十郎の腰の刀を見る。


    視線が早い。

(ただの女中ではない)



 現在


    小十郎

「女」


    政宗

「女?」


    小十郎

「我らを案内した、あの女中」


    重定

「……」

    重定が笑う。ニヤリ

「お見事」


    政宗

「呼べ」


    重定

「呼ばずとも」


    重定

「聞いておりましょう」

    静かな声。


    重定

「戸兵衛」



 障子が開く先ほどの女中。


    女中

「お呼びでしょうか」


    政宗

「顔を上げよ」


 女中が顔を上げる。

一瞬。空気が変わる。

    女中の声が低くなる。

    柳原

「柳原戸兵衛にございます」


    小十郎

「……」

(男)



 同時、縁側。

声。

    蔵人

「蔵人もおります」

    いつの間にか座っている。


    政宗

「いつから」


    蔵人

「禅師が城へ入った頃から」


    小十郎

「……」


    柳原

「私は今朝から」


    小十郎

(つまり)

(城の構造、兵の配置、出入り)

(すべて見た)


    重定

「忍びとは」


「草」


「居ても見えぬもの」


    小十郎

「草は刈られる」


    蔵人

「その時は逃げます」


    柳原

「また生えます」


    政宗が笑う。

「面白い」



小十郎の視線

    小十郎は重定を見る。

(最初から仕掛けていた)


    小十郎

「私を試したな」


    重定

「半ばほど」


    小十郎

「半ば」


    重定

「もう一人は見抜かれました」


    小十郎

「……」


    小十郎

「次は見破る」


    蔵人

「それは楽しみ」


    柳原

「精進いたします」



 政宗

政宗は二人を見る。だが視線はすぐ遠くへ。


    政宗

(奥州。最上。芦名。相馬。佐竹)


(その間に見えない線。忍び)


    政宗

「奥州を見てこい」


    蔵人

「は」


    柳原

「御意」



 こうして伊達家に、新たな影が生まれた。

 誰にも見えず、誰にも知られぬまま

城に入り、城を出る者たち。

 その働きは、歴史の表には残らない。

だが確かに

その影は

    奥州の行方を

          動かしていく。



米沢城 外観。夜。月。

静かな城。



 影は在る。



 城の塀。


柳原と蔵人が、屋根から屋根へ跳ぶ。

      シュタッ

      トトトト

(音とも聞き取れない程の、微かな気配)



      見えぬところで



城下町の屋根。二人が夜の闇へ消える。


          既に動き始めていた。



そして



城の門。昼間。人々が出入りしている。


旅僧

商人

百姓


その中に

    一人の若い僧

      僧の目だけがこちらを見る。


静かな佇まい

    僧

(……面白い城だ)

    そっと人混みに消える。



影は、二人ではない。



      つづく





若き軍師、片倉小十郎景綱。

かの天才に喰らい付いています。

そして独眼竜政宗。

その力を解き放つのは、いつなのか

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