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新世界の創世者は、魔王ではなく?  作者: ニャンコ
第一章 本能寺の変
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第三話 森蘭丸の記憶          其の四『継承』

どうでしょう?

どうなんでしょう?

シリアス系って、

歴史小説家にお任せするべき?

妄想が暴走してるヒトが書くべきじゃない?

構想は上奏すべき?意図は斯く語りき?

体温の上昇はインフルの後納?

提案する贖罪は薬剤の効能?

転生する人財は冤罪の苦悩?

罪を暴く我を裁く此れを自爆趣味をシバク

父と傳兄の訃報は、同じ日に知らされた。


それまで、私たちは知らなかった。

知らされていなかった。


母様と勝兄だけが知っていた。

それでも、何も変わらぬ日々が続いていた。


朝餉を囲み、

庭で遊び、

夕餉の支度が整えば、皆で座る。


ただ、母様の声が、少しだけ低くなっていた。

勝兄の背が、少しだけ遠くなっていた。


幼い私には、それが何を意味するのか分からなかった。


ある日、勝兄は私たち三人を座らせた。

正座する勝兄は、背筋を伸ばし、目を逸らさなかった。


「父上と傳兄は、戦で亡くなった」


その言葉は、淡々としていた。

まるで、すでに何度も口にしてきたかのように。


母様は、勝兄の隣に座り、黙って頷いた。

泣き崩れることもなく、声を荒げることもなく。


ただ、家の者として、事実を受け止めていた。


坊丸は、しばらく黙っていた。

力丸は、よく分からないという顔をしていた。

まだ幼すぎて、死という言葉の重さを知らなかったのだ。


私は、ただ、胸の奥が冷たくなるのを感じていた。


勝兄は言った。


「これからは、俺が森家の当主だ」


十二歳の少年の声だった。

けれど、その言葉は、誰よりも重かった。


「父上の代わりに、傳兄の代わりに、俺が皆を守る」


その言葉を聞いたとき、私は理解した。

勝兄は、子供であることを、そこで捨てたのだ。


母様は、ただ一度だけ勝兄の肩に手を置いた。


「頼みます」


それだけだった。


励ましでも、慰めでもない。

武家の女の言葉だった。


勝兄は、小さく頷いた。

その横顔は、もう子供ではなかった。


――武士の顔だった。


数日後、大殿様――織田信長公が、森家に使者を寄越された。


労いの言葉と、森家の忠義を忘れぬという言葉。

そして、若き当主・長可を見守るという約束。


家臣たちは、深く頭を下げた。

勝兄もまた、頭を下げた。


その姿を見たとき、私は胸の奥が熱くなった。


大殿様は、家臣を捨てない。

家臣の子までも、武士として遇してくださる。


武家の忠義とは、

主君のために死ぬことだけではない。


主君が、家臣を想い、

家臣が、その想いに応えること。


その繋がりが、武家なのだと、幼心に悟った。


その夜、私は母様の背中を見た。

泣いてはいなかった。

ただ、仏間に向かい、静かに手を合わせていた。


勝兄は、庭で剣を振っていた。

もう赤い汗は流していなかった。

ただ、静かに、正確に、剣を振っていた。


私は、坊丸と力丸の手を引いた。


「勝兄みたいにならなきゃ」


そう言ったのは、誰に言うでもない、自分自身への誓いだった。


長兄は、弟たちを守る。

父の代わりに、兄の代わりに、家を支える。


勝兄が背負ったものを、いつか、自分も背負うのだと。


あの時、私は決めた。


――森の名に恥じぬ武士になる。

――弟たちを守る兄になる。


幼いながらに、それだけは、はっきりと決めていた。


母様の背中と、勝兄の背中が、

私の道を示していたからだ。

ネツニモマケズ

コウイショーニモマケズ

ソンナ人ニ

ワタシハナリタイ

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