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COSMOS

作者: 石津 紫黒
掲載日:2025/09/27

、、、体が動かない。眼の前のこれは秋桜(こすもす)か。はて今は1月ではなかっただろうか。記憶が曖昧でよくわからない。ん?秋桜の花びらに星…「”WS#%"|*\※'%#"%+*>?*+;※」なにか聞いたこともない音が聞こえる。なにかを話しているのだろうか。まあ良い、きっとここは夢の中なのだろう。「うっ…」頭が痛い。

 気がつくと俺は月明かりに照らされながら扉の前に立っていた。ここはどこだ。人が一人も居ない。俺は先ほどまで大学の教授とともに研究のために山へ向かっていたはず。教授が今日の宿泊地に送り届けてくれたのだろうか。それにしてもこの扉の前まで歩いてきた記憶がない。だが、建物の隣に教授の車が止まっているということは先生は先に入ったのだろう。俺は意を決して扉を叩くことにした。

 コンコンコンッ、扉を叩くとしばらくして中から声が聞こえた。

「いらっしゃいませ。先日お電話いただきましたウノ ミソラでございます。アキシロ オウガ様ですね。それでは四階、秋桜の間へご案内いたします」

その声のした後、黒髪をおさげにしてモノクルをかけた使用人が出てきた。

「ありがとうございます」

そう言って俺は彼女の後ろを追う。…はて俺は名前を言っただろうか。なんだか不気味な屋敷だ、廊下は妙に静まり返っていて俺の足音しか聞こえない。俺は不安と少しの好奇心を抱きながら階段を登る。

「こちらが秋桜の間でございます。御用の際は%”$&”%&$」

ん?なんだ最後の方だけ聞き取れなかったな。

「申し訳有りません、もう一度お聞きしてもよろしいですか」

「失礼しました。こちらが秋桜の間でございます。御用の際はそちらの呼び鈴を鳴らしてください」

「わかりました。ありがとうございます」

ふむ、本当にそう言っていただろうか。だめだ思い出せない。だが、あれは日本語だったか…「うっ」まただ頭が痛い。

ん、”また”?おかしいないつのことだろうか。俺は片頭痛なんて持っていないはずだが、とりあえず今日はもう休もう。


 、、、あれはオレ、か。俯瞰しているということは俺は今夢の中を歩いているのだろう。ここは研究に向かう予定だった山か。だが教授の姿は見当たらないな。今回の視察を一番楽しみにしていたのは教授だったはずだが。なんとも、最近新しいなにか電磁波らしきものをここで感知したという。そんな得体のしれないものの研究につきあわされる俺の身にもなってほしいものなのだが…ん?俺の隣にいるのはさっきの使用人さんか?ということはこの館は山の中にあるということか。

 『うわっ!ミヨシ先輩!?』

ん!ミヨシ先輩だと!?

ミヨシ先輩は俺が密かに恋心を抱いている一つ年上の先輩だ。どうしてこんな危ないところにいるんだ。おいオレ!早く先輩を大学に帰らせるんだ!

『わぁお!オウガくんじゃぁんって隣のきれいな人はだぁれ?』

あ、やばい。先輩にウノさんとオレが恋人だと勘違いされる。急げオレ!早く誤解を解くんだ!思いも告げられずに散る運命になってもいいのか!?

『あっ、こちら今オレが泊めさせてもらっている館の使用人さんウノ ミソラさんです』

『そぉなんだぁ。どうもぉ、こんちわ〜』

『ウノさんこちらは自分の大学の先輩でミヨシ ハナさんです』

『はじめまして、こんにちは』

良かった。これで変な勘違いはされないだろう。よくやったオレ。

『そういえば、ミヨシ先輩はどうしてここに?』

確かに先輩は俺とは研究室が違うから研究ではない。またこのあたりに観光名所があるわけでもない。本当にどうしてここへ?

『あぁね。この辺に、親戚が住んでてさぁ。そこんとこの息子が最近寝込んでて、結界が壊れただの何だの言うから、あぁしが直しに来たってわけよ』

け、結界?

『なるほど結界ですか』

どうしてウノさんは納得してるんだ?全く意味がわからないが…

『どうして先輩が結界を直しに来ることになったんですか?』

『まぁ気になるよねぇ。いいだろうこのハナさまが教えてあげよ〜。あぁし実はミヨシ家っていう代々続く結界とかそうゆう霊能系に強いお家でね、あぁしは性格がこんなんだから外に出されてんだけど本家の誰よりも霊能力が強いんだよねぇ。まぁさすがあぁしって感じ』

『な、なるほど』

俺はあまりオカルトには興味がないため少々引いてしまった。だが、先輩も別にオカルトに詳しいわけではなかったはず…「うっ」また頭が痛む…


 質素な白い天井に豪華なシャンデリア。そうだ、俺は館に泊まっているのだった。そういえば先ほどまで見ていたであろう夢の内容が鮮明に記憶に残っている。

珍しい。俺はいつも夢を覚えていないのに。とても不思議な夢だった。あの夢ではこの館は山の中にあったな。実際はどうなのだろうか。使用人さんに聞いてみよう。そう思い、俺は使用人さんを探しに行くことにした。


 廊下では昨夜気づかなかった芸術品がいたるところで目に入る。ホコリ一つなく、花瓶に至っては輝いて見えるほど美しく磨き上げられている、そんなプロレベルの管理が行き渡る廊下とは裏腹にウノさん含め使用人の方は誰一人見当たらなかった。おかしい。そう思いながらも昨夜彼女が行っていたように、呼び鈴を鳴らすことにした。

 リーン…こんな小さな音で聞こえるはずもない、そう思いもう一度人を探しに行こうとすると、扉を叩く音が聞こえた。

コンコンコン

「こちらウノでございます。どうなさいましたか」

嘘だろう?先程までこのあたりにはいなかったが、どうしてあんな小さな音に気づくことができたのか。そう不信感を抱きながらも、とりあえずこの館がどこにあるのか聞いてみることにした。

「この館はどこにあるのですか。少々ここに来るまでの記憶が曖昧で…」

「なるほど、よくあることですので気になさらないでください。ご説明がてら館の周辺をご案内いたしましょう」

「いいんですか。ありがとうございます」

「それでは、準備ができ次第、呼び鈴を鳴らしてください」

そう言ってウノさんは部屋を出ていった。準備か…そういえば夢では先輩にあったな。まぁ所詮夢、いつもどおりの格好でいい。

、、、でも、とりあえず髭だけは剃っておくか。そう思い、狭い洗面所には少し似合わない大きな姿見の前に立つ。そうこうしているうちに結構な時間が経ってしまった。そろそろ出発しよう。…リーン

 「それでは出発いたしましょう」

ウノさんはそう言うと、扉を開けた。すると眼の前いっぱいに神秘的でいて、でもどこか不穏な森が広がっていた。間違いない。この館は本当に調査に来た山にあったのだ。ならばあれだけ人が居なかったのにも納得がいく。

ここは元々海外の調査団が極秘で日本を訪れる際に使っていた着陸場らしいからな。いつ何が上陸していても不思議ではない。だが、そんな危険とも言える場所にあんな館があるものなのだろうか。ふむ、とても興味深い…

 「うわっ!ミヨシ先輩!?」

本当にミヨシ先輩に鉢合わせるとは!?どうしてこんな危ないところにいるんだ。早く先輩を大学に帰らせないと。

「わぁお!オウガくんじゃぁんって隣のきれいな人はだぁれ?」

あ、やばい。夢の時と同じだ。このままでは本当に先輩に俺とウノさんが恋人だと勘違いされてしまう。急いで誤解を解かなければ!俺の鮮やかな恋心が散ってしまう前に。

「あっ、こちら今オレが泊めさせてもらっている館の使用人さんウノ ミソラさんです」

「そぉなんだぁ。どうもぉ、こんちわ〜」

「ウノさんこちらは自分の大学の先輩でミヨシ ハナさんです」

「はじめまして、こんにちは」

良かった。これで勘違いされることはないだろう。ん?そういえば夢と全く同じ内容。

「そういえば、ミヨシ先輩はどうしてここに?」

確か夢では先輩はこの問に結界が壊れたと言っていたはず。

「あぁね。この辺に、親戚が住んでてさぁ。そこんとこの息子が最近寝込んでて、結界が壊れただの何だの言うから、あぁしが直しに来たってわけよ」

本当に夢と同じ内容…あれは俗に言う予知夢というものだったのだろうか。

「なるほど結界ですか」

それにしてもどうしてウノさんは納得してるんだろうか?俺はこの状況を2度経験してなお、まだ意味がわからないのだが…とりあえず夢と同じ流れを辿ることにしよう。

「どうして先輩が結界を直しに来ることになったんですか?」

「まぁ気になるよねぇ。いいだろうこのハナさまが教えてあげよ〜。あぁし実はミヨシ家っていう代々続く結界とかそうゆう霊能系に強いお家でね、あぁしは性格がこんなんだから外に出されてんだけど本家の誰よりも霊能力が強いんだよねぇ。まぁさすがあぁしって感じ」

「な、なるほど」

やはり西洋チックな、白ギャルらしい見た目をした先輩から霊だの結界だの和風な古い言葉を聞くと強い違和感を覚える。

ん?西洋風?先輩は亜麻色の長い髪に茶色い目をしていた気がする。金髪碧眼?まるで俺の知っている先輩ではないようだ。「うっ」、まただ。頭が痛い。とりあえず、ここは三人で館へ帰ることにした。


 ガチャ、俺は借りている部屋の扉を開く。ミヨシ先輩は俺の隣の白百合の間に泊まることになった。少し緊張するが変に思われないよう気をつけよう…それにしても、研究ばかりの日々を送っていた俺の体に山登りは無謀だったらしい。体の節々が痛む。少し早いが今日はもう寝てしまおう。

 また夢の世界に入ったようだ。今回は煽り視点か。

ここは部屋の端、花瓶の裏か。少し見づらいな…でもなんだか足音がこちらにやってくるのがわかる。

オレ…とミヨシ先輩!?ま、まさか何か進展が!?ならばそこを見せてほしいのだが…

『まじで朝早くにごめんねぇ?』

『いえ、先輩のためならなんだっていいですよ。でも、いきなりどうしたんですか』

『あはっ、ありがとぉ。えっとねぇこの秋桜の間でさっき良くない気配がしたんだよねぇ』

『気配、ですか』

俺はあまりそういう実態のない非科学的なものは信じられないのだが、そう言われると少しここは気味が悪い気がする。

『多分この花瓶のところかなぁ』

へ、もしかして良くない気配って俺のことか!?そう俺が狼狽えていると、先輩が花瓶を持ち上げた。

『何か有りましたか』

『う〜ん。治癒の結界の呪印だったぁ。昔ここで療養してた人の怨念が見えちゃったみたい』

そう言ってテヘッと笑っている先輩。

可愛いが多分今そういう雰囲気ではない気がする。オレもそう思ったのか

『大丈夫なんですか』と不安げだ。

『うん。大丈夫っぽ。ただ自分の遺骨がこの部屋に取り残されてるから庭に埋めてほしいみた〜い。なんか報酬もくれるっぽいよん』

ふむ、なるほど全然大丈夫じゃなさそうだな。


 ん、いきなり場所が変わった。ここは洗面所か。はて、ここは結構狭いが遺骨が隠れるスペースなどあるだろうか。

『ちょっとそこで待っててねぇ』

先輩はそう一言だけ言うと無言で壁を触り始めた。するとあの大きな姿見が開いて部屋が出てきた。そこから出てきた先輩は遺骨らしき箱を抱えていた。


 『じゃあ埋めに行きましょうか』

そうオレが促すと二人は静かに庭まで降りてゆく。そして無事に埋め終わると先輩が報酬だと言って純金製の小さなロケットペンダントをくれた。ん、今雑木林を横切ったのは何だ。「うっ」、今までよりも強く頭が痛む…

 昨日と同じ天井。昨日までは気づかなかったが、本当に部屋の隅に夢の中と同じ花瓶がある。まさか俺は予知夢が見れるようにでもなったのだろうか。正直今まで信じてもいなかったオカルトチックなものに心踊らせている自分がいる。だがあの夢が本当なら今日は先輩がここを訪ねてくるはず。急いで準備をしなければ。


 コンコンコン、

「はい。今開けます」

「あ、やっほぉい。朝早くにごめんだけどちょっと部屋入れてもらって良きぃ?」

「いいですよ。そこまできれいにしてないですけど、どうぞ」

「ありがとぉ」

先輩はそう言うと寝室の方へ進んでいく。

「まじで朝早くにごめんねぇ?」

「いえ、先輩のためならなんだっていいですよ。でも、いきなりどうしたんですか」

「あはっ、ありがとぉ。えっとねぇこの秋桜の間でさっき良くない気配がしたんだよねぇ」

「気配、ですか。この花瓶のところとかですか」

俺は興味本位で夢とは少し違うことを聞いてみた。

「うん多分この花瓶のところかなぁ」

ふむあまり内容は変わらないが少しだけ話し方が変わった。この予知夢はやりようによっては展開を変えることができそうだ。そう俺が色々と最近見る夢について考えていると、ふと先輩が花瓶を持ち上げた。

「何か有りましたか」

「う〜ん。治癒の結界の呪印だったぁ。昔ここで療養してた人の怨念が見えちゃったみたい」

そう言ってテヘッと笑う先輩。可愛いがやはり多分だが今はそういう雰囲気ではない。

「大丈夫なんですか」

「うん。大丈夫っぽ。ただ自分の遺骨がこの部屋に取り残されてるから庭に埋めてほしいみた〜い。なんか報酬もくれるっぽいよん」

なるほど俺が少し予想外な対応をしたとしても流れは変わらないらしい。

「先輩。報酬をくれるっぽいということは、霊の声が聞こえてるんですか」

そう聞くと先輩は少し苦い顔で

「まぁねぇ、物心ついたときから聞こえてたからしゃあなしね。とりまこのオジサマの言う通りにしてみよっかぁ」

と答えた。少々人と違うところが彼女を傷つけてきたのだろう。俺は先輩の味方でいよう。ところでここにいる霊はオジサマ…つまり身分の高そうな年配の霊なのだろう。そう思いを巡らせているといつの間にか洗面所についていた。「ちょっとそこで待っててねぇ」先輩はそう言うと夢と同じように壁を触り始めた。するとやはりあの大きな姿見が開いて部屋が出てくる。先輩がそこから遺骨の箱を抱えて出てきたので。俺は

「じゃあ埋めに行きましょうか」

と先輩を促し、二人で庭まで降りていった。そして無事に埋め終わると先輩が報酬だと言って純金製の小さなロケットペンダントをくれた。

「ちなみにさっきの部屋さぁ、宝庫だったんだけどぉ中身好きにしていいってさ〜。あぁしはキョーミないしオウガくんにあげるっ。じゃぁねぇ〜」

そう言って先輩は部屋に帰っていった。その後、俺は部屋に戻り記憶をたどりながら先輩と同じ手順で壁に触れる。迷うことはなかった。俺は期待を胸に抱きながらドアノブに手をかけた。

 ギッ、ギィィ…重苦しい音と共にきらびやかな装飾が目に入る。とても俺には手の届きそうもないモノの数々。

だが、どうしてだろう。何か見覚えがある…小さい頃の記憶だろうか。なぜ忘れていたのだろうか。あのとき一緒にいたのは、じいちゃん?ここはじいちゃんの家だ。

 そういえばさっきのロケットペンダントを見ていなかったな。この写真はじいちゃんと…とてもきれいな女の人?だがばあちゃんとは違う人だ。まるで人でないモノに見えるほどに美しい。もっと知りたい。そうだ、宝庫の中なら他にこの女性の情報が残されているかもしれない。宝庫の中を見回していると、一つだけ豪華な雰囲気にそぐわない古びた背の低い机を見つけた。

その中には色褪せた秋桜の押し花と美しい女性の記録があった。

宇野ウノ 深宙ミソラ年齢不明、性別ナシ、この星の生命体ではなく自分の情報が漏れるのを以上に恐れている。これからは姿を変えてこの館で働くことになった。}じいちゃんの字だ。

ん、何か紙が挟まっている。

{何か儂も知らない力がありそうだ。彼女は自分の情報を持つものを排除するつもりだ。地球人に特別な力はない。儂等は夢は操れない、ただ見ることが出来るだけだ。もし彼女の情報を知ってしまったなら御代志家(みよしけ)を頼りなさい。}御代志家…先輩の元へ急ごう。

 コンコンコン、

「先輩!いますか!」

「えっ、オウガくん。どぉしたの?」

「これ!見てください」

先輩に先程の二枚の紙を押し付けるように渡す。

「先輩が感じた嫌な気配ってこれじゃないですか?多分二枚目の紙のこの赤黒いシミって」

「さっきのオジサマの血っぽいねぇ。今早く逃げなさいってあぁしを引っ張ろうとしてる」

そう言って先輩が斜め上を眺める。

額に冷や汗が滲む。

「先輩、俺がじいちゃんと話す事はできますか?」


 秋桜の間で先輩の視界と聴覚を借りることになった。普通不可能に近い霊術らしいが、なんとも俺の先祖も少し特殊らしく御代志家との相性が良いらしい。先輩がいる方向から温かい何かが流れ込んでくる。なんだかムズムズする。

『ガ、オウガ、桜牙!』

じいちゃんの声がする。

「じいちゃん…」

少し目が霞む。

『桜牙よく聞け。深宙は幻術のようなものを使う。だがそれは特別な能力でもなんでもない。地球よりも技術が進んでいるだけで必ずエネルギーの発生源がある。それを壊すのだ。』

「わかった。でもエネルギーの発生源って?」

俺が問うとじいちゃんは説明を始める。

『それは儂の力では見ることが出来なかった。じゃが桜牙、お主とそこの御代志家のお嬢さんがおれば、見たい夢だけを見ることができる。お嬢さんに夢結びの結界を張ってもらうんだ。そうすれば二人で夢の世界に入ることができる。だが絶対に自分たちの姿を見るな。儂等がこの館で見た夢はすべて現実になってしまう。お嬢さんには儂が説明しておく。目が覚めたらすぐに行動に移すんだ』

 意識が戻ると、先輩が意を決した面持ちで

「桜牙くん。行こうか」

と言い、結界を張り始めた。俺は先輩の準備が整い次第、目を閉じ夢の世界へ潜っていった。


 見たことのない部屋。美しい女性。四階の角部屋の奥。ここは宇野さんの部屋だ。

先輩も物珍しそうにあたりを見回している。カツンカツン、と足音が聞こえる。俺達は口を固く閉じ、生唾を飲み込む。

『マダ秋城(あきしろ)ノ血ガ途絶エテイナカッタトハ。アイツノセイデ私ハマダ星ニ帰レテイナイトイウノニ。早ク始末シテシマオウ』

宇野さんはそう言うとモノクルに手を添え何か操作を始めた。モノクルがすべての動力源になっているようだ。

それがわかった今、もう夢を見る必要はない。コツコツコツ、足音が聞こえる。都合の悪い夢を見る前に早く帰らねば。

『先輩心のなかで三回、目を覚ますと宣言してください』

『りょ〜かい』

目を覚ます目を覚ます目を覚ます!


 もう見慣れた天井に隣には先輩。成功したようだ。

「先輩、起きてください。早く宇野さんの元へ行きましょう」

…返事がない。うなされる先輩の額には汗が滲んでいる。仕方がない、俺一人で行くことにしよう。


 コンコンコン、

「宇野さんいらっしゃいますか」

「はい」

そう言って宇野さんが出てくる。モノクルはつけていないようだ。

「今、御代志先輩が秋桜の間で倒れていて、申し訳ないのですが私は今日山を見に行く予定でして。できれば看病をお願いしてもいいですか?」

そう言うと彼女は渋々先輩の元へ向かった。よし、急いでモノクルを探そう。


 見れば見るほど、進んだ技術が目に入る。モノクルは確か机の中に置いていたはず…ビンゴ。早く壊してしまおう。バキンッ、モノクルが跡形もなく消え去る。するとなんということか、館が崩れ始めた。先輩を助けに行かなければ。


 秋桜の間に戻るといつもどおりの亜麻色の長い髪に茶色い目をした先輩が横たわっていた。とりあえず俺は先輩を抱えて地上まで駆け下りる。

バタンッ、俺達が扉をくぐり抜けた途端、館が完全に崩壊した。あ、意識が遠のく。


 少しすると目が覚め、眼の前にはただ青々と茂る神秘的な森が広がっていた。俺はここに一人倒れていたようで、通りすがりの方が警察に連絡してくれたらしい。これは警察官の方と話をしていてわかったことなのだが、この山にあった館はじいちゃんがなくなった年に取り壊していたらしい。あれは何だったのだろうか。

そう不思議に思う秋城 桜牙の首には純金製のロケットペンダントが輝いていた。

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