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嫌じゃないの




 日常生活に支障なし。

 自分の事はうっすら覚えている。騎士だった事も。

 瑠衣るいなぎ怜央れおの事は、うっすらと覚えているが、他の人物、家族の事も覚えていないし、紹介されてもすぐに忘れる。

 召喚魔法が使えない。魔法の使い方を忘れた。


 どれくらい覚えているのか。

 瑠衣が大気分析家の局長室から出て外廊下を歩く禾音かのんの背中に問いかけると、返って来た言葉。

 淡々と言っているようにも聞こえるが、心なしか、不安や腹立たしさが滲み出しているような気がした。


「本当に私一人だけでいいの?日常生活に支障がないなら、家政婦は傍に居てもらわなくてもいいだろうけど、医者は居てもらった方が安心しないかな?」

「今さっきも言ったが、おまえ一人だけの方が安心できる」

「………禾音がいいなら、いいけど。私、仕事は休まないよ」

「いい。俺が勝手について回る」

「私は寮生活で、寮は男子禁制だから、禾音とずっと一緒には居られないけど、どうしようか?禾音も寮でしょ」

「凪局長が平屋を貸してくれる。そこで俺が記憶を取り戻すまで、一緒に暮らしていいって言ってた」

「そう」

「俺と一緒に暮らすのは嫌か?」

「嫌じゃないけど。禾音は嫌じゃないの?」

「嫌じゃない。瑠衣の傍に居たい」

「………わかった。とりあえず、これからまた仕事に戻る」

「ああ………瑠衣。迷惑をかける」

「うん」


 ずっと歩いたまま。

 ずっと背中を向けたまま。

 ずっと、淡々とした物言い。

 本当に嫌なんじゃないのか。

 本当は嫌なのに、記憶を取り戻すにはどうしても必要で、自分の傍に居ようとしているのではないか。


(考えても。仕方ない。か。とりあえず、禾音の言葉を、本当の言葉だと思おう)


 こっちだよ。

 小走りで禾音の前に回った瑠衣は、そのまま禾音を仕事の持ち場まで先導したのであった。











(2024.7.4)




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