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バクパク




 魔法使いが異空間に創った森にて。


「ねえ。瑠衣るい。バクパク。って、知ってる?額に生える一本角、四足歩行、愛嬌のある表情、波模様の雲に乗っている摩訶不思議生物でね。後天的に備わった人間の特殊能力を奪い喰らうんだって。図書館の本に載ってたんだ」

「………禾音かのん。まさか、そのバクパクって摩訶不思議生物と契約を交わしたの?」

「ううん。多分。覚えてないから、わからないけど。僕は契約を交わしてないと思うよ」

「じゃあ、この森に居たの?だから私を抱えて急に走り出したの?捕まえようとして。でも。禾音は今、戦えないでしょ。だったら、早くここから出て、魔法使いと騎士に教えよう。ね?」

「ううん。教えない。捕まえる。捕まえて。瑠衣の特殊な能力を奪って食べてもらう。そうしたら、瑠衣はもう危険な事を考えなくていい。危険な事を身に着けなくていい。僕が守るから。ずっとずっと。守るから。だから。ね?」

「嫌。だ」

「瑠衣。だって。その能力があるから、瑠衣は美味しいご飯を食べられないんだよ。いつも薫香の事ばっかり考えさせられるんだよ。危険な事を身に着けなくちゃって使命感が生まれるんだよ。僕はもう嫌だ。瑠衣がそんなひどい目に遭うのをもう見てられない。だから、バクパクに消去してもらう」

「嫌。絶対に嫌。断固として嫌。何で嫌かって。いち。摩訶不思議生物に能力を奪われた後、無事で居られるのかわからないし。に。私はこの能力を失くしたいと思ってない。私も守りたいの。とても小さい、微かな力にしか、ならないだろうけど。それでも。守りたいの。だから。確かに。この能力で悲しい事もあったけど。でも。嫌。ぜったいにいや」

「瑠衣」

「禾音が私たちを守りたいように、私も禾音たちを守りたい」

「え?僕だけを守りたい?」

「え?ううん。禾音だけってわけじゃ「僕も瑠衣だけを守りたい」

「………禾音。禾音だけじゃなくて、みんなを守りたいの」

「ええ~。そこは僕だけでよくない?」

「よくない。能力も失くさない。絶対に嫌」

「もう」


 無言で見上げていた瑠衣に代わって、今度は禾音が暫し瑠衣を無言で見下ろし続けたのであった。











(2024.8.31)




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