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ぼくだけの




「ねえ、るいちゃん。あのさ」


 森に行く準備が終わった瑠衣るい禾音かのんがそれぞれリュックサックを背負い、一緒に住んでいる平屋から出て、小高い丘からゲートがある町へと降りて行く最中の事だった。


 禾音が遠慮がちに瑠衣に話しかけたかと思うと、やっぱり何でもないと首を横に振って、そして、また少しして話しかけるというやり取りを何度も繰り返していた。


「ねえ、るいちゃん。あのさ。あのね。その。そのマスクね。邪魔だって。思った事はない?」


 小高い丘を下り切って町へと辿り着き、賑やかな声が溢れ出した頃である。

 漸く本題を口にした禾音に、瑠衣はないよと即答した。


 仕事と顔を露わにしなければならない時以外は、常に装着している瑠衣のマスクは、自然災害や摩訶不思議生物の襲来を知らせてくれる薫香を嗅ぎ取る事に集中し過ぎて、他の事が手につかなくなるので、日常生活を送る為には必要な物であった。


「寧ろ、ないと落ち着かない」

「それって。それってさ。自然災害とか、摩訶不思議生物の薫香を嗅ぎ取る能力が、あるから、だよね?」

「え?うん。まあ。そうだね」

「つまりさ。その能力がなかったら。るいちゃんは、マスクをしなくていいし、ご飯はいつでも美味しく食べられるし、もう危険な事に自分から近づかなくていいって事だよね?」

「う~ん。まあ。そう、だろうけど。能力が消せるわけでもないし。私。嫌じゃないよ。この能力。不便な事もあるけど。私がまだこの能力の事を理解していないからだろうし。理解できたら、マスクをしなくてよくなるだろうし、ご飯も美味しくなるだろうし。危険な事には、近づかなくていいって事にはならないだろうけど。でも、そこまで危険じゃないし「危険だよ」

「………禾音?」


 声音が僅かに低くなったような気がした瑠衣は、足を止めて禾音を見上げた。


「危険だよ。るいちゃん。危険なの。そんな、危険な事に、るいちゃんは関わらなくていい。無関係でいい。るいちゃんは、ずっと。安全な場所で、ずっと、暮らしていればいいの。大気分析家は辞めて。ぼくの」


 横に並んでいた禾音は瑠衣の前に回って、彼女の両の手をやわく手に取って持ち上げると、真剣な表情で言った。




 ぼくだけの、











(2024.7.29)




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