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警鐘音




 かわいいかわいい。

 禾音かのんは実に軽やかに、可愛らしく、優しく言っているのだが。

 どうしてだろう。

 むず痒さと息苦しさが生じるような、とてもとても甘ったるくどろどろとした砂糖水の海に浸されているような感覚に、時折陥るのは。


 早く、禾音に記憶を取り戻してもらい、速やかに同居を止めて、接触を減らさなければ。

 警鐘音が、ひそやかに、鳴り渡る。











「ねえ。禾音。今日、探検に行こっか?」

「え?でも。お仕事、いいの?」


 瑠衣るいと禾音が一緒に住む平屋のリビングダイニングキッチンにて。

 宰牙さいががこの家から出て行って、とりあえず朝食にしようと、禾音がコーンフレーク入りのホットケーキ、具沢山おにぎり、季節の野菜であるアスパラガス、オクラ、キュウリ、大葉、枝豆、豆腐の具沢山味噌汁を素早く作り、季節の果物であるさくらんぼを添えて、食卓に横に並んで座って食べている時だった。

 瑠衣が禾音を見ないで言ったのだ。

 禾音は一旦箸を置くと、身体を瑠衣へと向けて尋ねた。

 瑠衣は禾音を一瞥してのち、うんと言った。


「禾音が朝食の準備をしている時に、凪局長に今日は休日にしてくださいってお願いしたら、了承してもらえたから。森に探検に行こう。お弁当を一緒に作ってさ」

「るいちゃん。本当に、いいの?」

「うん。禾音と。一緒に遊びたくなったから」

「………うん!えへへ。楽しみだなあ」


 身体を食卓へと向かわせて、ゆっくりゆっくり朝食を味わう禾音をまた一瞥した瑠衣は、自分もゆっくりゆっくりと朝食を食べ続けた。


(禾音の料理をほかの人が食べたらきっと。ううん。絶対、美味しい美味しいって喜ぶんだろうなあ)


 作ってくれる禾音には悪いが、ほとんど味の違いがわからず、美味しいとは思えなかったが、お腹はとても空いているし、身体は必要な物が摂取できて喜んでいるようなので、咀嚼をしっかりしつつ、食べ続けていた。


(あ。でも、どうしてか。私が仕事をしている時の、禾音のバーベキューの食材だけは、美味しそうに見えて、実際、美味しいんだよね。何でだろう?)











(2024.7.27)




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