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ハンモック




 瑠衣るい禾音かのんが一緒に住む平屋のテラスにて。


 寝顔まで天使って、どれだけ激変するのか。

 どちらが先に眠れるか競争だと言ってはものの数秒で寝着いた禾音を、ハンモックから降りて傍らに立った瑠衣はじっと見つめた。

 何回か、寝顔を見る機会があったが、こんなに天使な寝顔ではなかった。

 起きていたその時のままに、乱暴で禍々しい悪魔王だった。


(記憶喪失で、記憶退行で、記憶混濁、じゃくて、記憶混合?私が瑠衣だって認識してたし。幼い時と全く変わってないって思われてる。わけじゃない。よね。多分。色々。混ざっているけど、混乱しないで、現状をわかってる。んじゃない。か、なあ。う~ん。とにかく。禾音が眠っている間に、なぎ局長に教えてもらった禾音を診察してくれた医師に連絡を。いや。これは夢だから。現実じゃないから。よし。ハンモックで寝直そう。次に起きた時は、自分の寝室だし。ハンモック、気持ちいいし。うん)


 おやすみなさい。

 瑠衣は寝ている禾音にそう言うと、ハンモックに腰を下ろしてから、ゆっくりと上半身を横にして、その後にゆっくりと下半身をハンモックに乗せて、全身を横たえさせて、心身を沈ませて、たなびく雲と、雲の合間に見える星を少しの間だけ見つめてのち、目を瞑った。









 翌朝。


「おはよう。るいちゃん。ハンモック、気持ちいいねえ」

「………うん。そうだね」


 瑠衣は吐息がかかるくらいに顔が迫っている禾音に、おはようと言った。

 ハンモックに全身を沈ませたまま。











(2024.7.22)




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