大変化
いくつもの薄く細長い雲がたなびく中、ちらほらと雲が去った後に星が見えるも、また新たな雲が流れて来て、星を遮る。
満天の星空、とは決して言えないが、雨が降っていないだけ、ちらほらと星が見えるだけいいかと、これで約束を果たした事になるだろうと、瑠衣が思いながら、テラスに禾音が設置してくれた簡易式ハンモックに身体も意識も鎮めていると、禾音にまた夜空を見ようと言われた。
「これは俺が見たかった夜空じゃないからな」
「禾音が見たかった夜空って、どんな夜空なの?」
「そりゃあ決まってんだろ。じゃんじゃん星が流れて行く夜空だ」
「それは。ちゃんと調べないと見られないんじゃないかな?季節とか時間帯とか場所とか」
「調べたら、一緒に見てくれるのか?」
「うん」
「場所がどこでもか?」
「うん」
「仕事を休まないと行けないような場所でもか?」
「それは休日で済ませられる場所でお願いするよ」
「いいじゃねえか。有休を使え。長期休暇を申請しろ」
「ええ」
「いいじゃねえか。どうせ。おまえ。大きくなった俺と、そんなに遊んでくれてないんだろ?」
「え?ああ。まあ。うん。そうだね。遊んでないね」
「だったら、一緒に遊べ」
「うん。そうだね。じゃあ。ボードゲームにする?カードゲームにする?しりとりなら今すぐできるけど」
「冒険ごっこがしたい」
「冒険ごっこって。あ。そっか。全部忘れてないんだよね。虫食い状態で覚えてるんだっけ。そうだね。よく小さい頃にしたね。冒険ごっこ。今だと、ごっこが外れて、冒険でしょ」
「るいちゃん」
「そうそう。禾音、よく言ってたよね。るいちゃんって」
「るいちゃん。ねえ、今から、夜のドキドキ探検ごっこしようよ」
「………」
瑠衣は禾音の大変化した口調に、目を丸くしながら、ゆっくりと身体を起こして、ゆっくりと禾音を見る、と。
「るいちゃん。ねえ。行こうよ」
幼い頃の、天使のような優しさに加えて愛くるしさが増した禾音が、居た。
(2024.7.18)




