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バーベキュー




『食べ物が美味しいと思わなくなっちゃった』


 記憶に残っている瑠衣るいの言葉。

 いや、本当に面と向かって言われたのか、自信はない。

 もしかしたら、夢の中でのみの出来事だったのかもしれない。

 淡々とした物言い。

 能力が開花した代償で別に悲しむ事はないと、そう言っているようで。


 だったら。と、思ったのだ。

 だったら、そんな能力さっさと捨てちまえ。

 そんなに後生大事に抱え込むな。

 何で、そんなに、

 そんなにあいつが、







「冷蔵庫に食料を詰め込んでるって言っていたから、丘から下りて買い物に行かなくていいけど。どうする?今日はもう寮に戻って、別々にご飯を食べる?料理しなくて済むし」


 『蒼黒城そうこくじょう』の大気分析家の塔に報告書を持って行き終えて、外廊下を歩いて『蒼黒城』を出ようとする最中、夕飯をどうするかを瑠衣が禾音かのんに尋ねようとした時だった。

 偶々外廊下で出会ったなぎに言われたのだ。

 冷蔵庫、冷凍庫、野菜庫、常温庫にたっぷりと食料を詰め込んでいるからね。


『二人ともたくさん食べるからね。食料費は禾音クンが記憶を取り戻すまでは、騎士団団長が出すから、食料が足りなくなったら気兼ねなく請求するんだよ』


(凪局長だけじゃなくて、騎士団団長にも、期待されてるんだ。やっぱり、騎士としてすごく実力があるんだ)


 凪に礼を言ってその場で立ち止まり彼を見送った瑠衣は、その場に留まって禾音に尋ねた。


「食料を用意してもらったなら、毎日寮でご飯ってわけにはいかないけど。今日は初日だし。今から料理するのも大変だし。でも。レトルト食品があれば、お湯で温めればいいか」

「いい。俺が作る。行くぞ」

「え?あ。うん」


(あ。そっか。バーベキューなら、材料を切って、焼けばいいから。楽。か、な?あれ?もしかして、禾音って、ずっと、バーベキューしか食べないのかな?)











(2024.7.12)




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