ヒューヒュー
今日も溺愛されているねえ、ヒューヒュー。
仕事仲間はこう、冷やかしてくるけれど。
「おまえ。こんなんで大気の匂いを分析できなくなるのか?向いてねえよ。さっさと止めて別の仕事を見つけろよ。何なら、俺の仕事先の事務職でも紹介してやろうか」
絶対に違うと断言できる。
「おまえ。そんなガリガリでよく生きていけるな。ほら。食えよ。最高級の肉だぞ。おまえの給料じゃ到底届く事のない肉だ。ほら、早く食え。口に合わなかったらすぐに別の肉を用意させるからな。ほら、ほらほら」
おい、瑠衣。聴いてんのか?
瑠衣と呼ばれた女性は冷めた表情のまま、名前を呼んだ幼馴染を見つめて。
激しい疑問を抱いた。
本当に、記憶喪失になっているのか、こいつは。
言っている事は違うが、やっている事は全く同じだ。
「あのさ」
「何だ?タレが気に食わないのか?」
「仕事中に、しかも、私の傍でバーベキューしないでくれないかな?」
「え?何で?」
「………」
ヒューヒューヒューヒューお熱いねえ。
遠方から聞こえる仕事仲間の冷やかしに、瑠衣は確かに熱いが断じて違うと心中で言った。
(2024.6.26)