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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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お見合い相手は私のはずだが

結局誤解のないようにその前に話し合いを、という打診をすることはなかった。

両親はここで話し合いをしてそのまま婚約までしてしまうつもりなのだろう。

そのほうがまとまりやすいだろう。


私としてもそのほうがいい。

待つ間はいろいろ考えてしまい、精神衛生上よろしくなかった。

やはり断るほうがいいと結論が出るのでは、と負のほうに思考が傾いていってしまっていた。





そんな気持ちで今日の話し合いに臨んだのだがーー。





何故かグレイスも応接間まで付いてきて当然のように座っている。

父が許可したのか、グレイスがねだったのか。

ユフィニー子爵も快く許可している。


何故グレイスまで同席する必要があるのか。

横目で見るがグレイスに無視される。


両親が許可している上にユフィニー子爵夫妻やリーリエ嬢が受け入れている以上、グレイスを追い出すことはできない。

余計なことは言わないよう祈るしかない。





和やかな雰囲気の中で両家の話し合いが始まった。





……これは、私とリーリエ嬢の二回目の見合いのはずだよな?


思わず疑ってしまうのは、話の中心にいるのがグレイスとリーリエ嬢だからだ。


リーリエ嬢が中心になるのはいい。

むしろ当然だ。

本日の主役の一人なのだから。


だがグレイスはもう少し控えるべきではないか?

ついそんなことを考えてしまう。


グレイスとリーリエ嬢の友情の確かめ合いはいい。

ユフィニー子爵夫妻にも好印象を与えただろう。

実際に子爵夫妻のグレイスを見る目は好意的だ。

それはいいことだと思う。


だがこれではまるでーー


「まるでグレイスとリーリエ嬢のお見合いのようですね」


思わず、そのような言葉が口をついて出た。


「まぁ、お兄様ったら」


グレイスが微笑(わら)う。

その言葉で我に返る。


私は今、何を言ったーー?


思い返して愕然とする。

これではまるで……いや、さすがにそれはない。


両親の微笑が温かい。

それが逆にいたたまれない。

思わず顔を逸らしてしまった。


リーリエ嬢の顔も見られない。

ユフィニー子爵夫妻には好意的に受け止められたようであることがせめての救いだ。


「でもそうですね。わたくしばかりリーリエ様とおしゃべりしてしまい、お兄様はあまりお話できていませんものね。申し訳ありません」


グレイスの声には笑みが含まれていた。

それは私を馬鹿にしたようなものではなく、どことなく微笑ましそうなものだ。


だがそれが余計に自分の発言が幼稚なものに思える。

恥ずかしい。


リーリエ嬢が少し眉尻を下げた。


「ごめんなさい。配慮に欠けました」


まさかそんなふうに取られるとは思わなかった。


「い、いえ、貴女に落ち度はありません」


動揺が言葉に出てしまった。

そんなこと、随分と久しぶりだ。

らしくないとも思う。

本当に。


まさかこれくらいで動揺するとは。

ましてやその動揺を言葉に出してしまうとは。

私もまだまだだ。


指摘しないでいてくれるのもリーリエ嬢の優しさだ。

それに甘えるしかない。

ここで反応を示してしまえばリーリエ嬢の気遣いを無駄にしてしまう。

それは避けなければならない。


これは後で叱られるな。

それは甘んじて受けよう。

それよりも今はこの場をどうにかすることだ。


気を落ち着かせる。

それからリーリエ嬢に微笑みかけた。


「気を遣わせてしまって申し訳ありません」


リーリエ嬢は小さくだがはっきりと首を振る。

これも気を遣わせたのだろう。

ここから挽回しなくては。

意識をしっかりとリーリエ嬢に定める。


部屋の中にはしんとした静寂が降りた。

誰も話さずに私たちの会話を注視している。

私の発言のせいで皆が遠慮した結果だ。


しかし見守られる中で会話を交わすというのはなかなか恥ずかしいものがある。

話題選びも慎重にしなくては。


そんなことを思っているとリーリエ嬢がぽつりと言った。


「緊張してしまいますね」


リーリエ嬢も当然緊張することだろう。

私もだと伝えれば、少しは(ほぐ)れてくれるだろうか?


「ああ、それはそうよね」


グレイスが頷く。

またグレイスに先を越されてしまった。


「お兄様、拗ねないでくださいまし」


グレイスの視線には呆れの色がある。


「……別に拗ねてはいない」


拗ねるなどそんな幼稚なことはしない。

気のせいか家族の視線も生温かいもののような気がする。

いや、気にしたら負けだ。


家族のことは気にしないようにしてリーリエ嬢を見る。

何故かリーリエ嬢が綻ぶように微笑(わら)った。


一体何が彼女を微笑ませたのだろう?

そんな要素はどこにもなかったように思えるのだが。


ここでは尋ねられない。

その微笑みを消してしまいたくはなかった。

それに、どうして微笑(わら)ったのか、などと皆の前で訊くのは失礼だろう。


「まあ確かに皆に見られていては話しにくいわよね」


母の声に意識が引き戻される。


「それは確かにそうですよね」


母の言葉に子爵夫人が同意する。


「では、後で二人で庭を散策するといい」


父が微笑して言う。


「はい。リーリエ嬢、いいですか?」


断られないとは思うが確認は必要だ。


「はい。是非」


微笑んで受けてくれた。

よかった。


グレイスたちが次々に笑顔になっていく。

ほっとしたというところだろう。


私の不用意な一言で、リーリエ嬢と話せていないことを気にさせてしまったのだろう。

それが解消できて私もほっとした。

後でリーリエ嬢とはゆっくり話そう。


そうなると、恐らくこれから真剣な話をすることになるだろう。

読んでいただき、ありがとうございました。

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