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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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家族と一緒だったからこそ見られた表情

リーリエ視点です。

家令の案内で皆で応接室へと移動した。

グレイス様も一緒だった。

どうやら同席してくださるようだ。


グレイス様は移動の間、隣を歩いて話しかけてくださり、緊張を解いてくださった。

本当にグレイス様のそういうさりげない気遣いが嬉しい。

わたしも見習いたい。






一緒に応接室まで来たグレイス様をサージェス様が胡乱気な目で見たような気がしたけれど気のせいかしら?

気のせいよね。

サージェス様がグレイス様をそんなふうに見る理由がないもの。


それに誰もサージェス様の様子を気にした様子はない。

やはり気のせいなのだろう。

サージェス様がそんな様子を見せていたら誰かは気にするはずだ。


侯爵がわたしたちに確認するために問う。


「グレイスも同席させて構わないだろうか?」

「ええ、もちろん構いません」

「ありがとうございます」


グレイス様がにこやかに礼を言う。


「いえ。いつもリーリエがお世話になっております」

「お世話をしているなどとんでもありませんわ。リーリエ様は大切なお友達ですの」


大切なお友達と言ってくださったのが嬉しい。

思わず口許が(ほころ)ぶ。


「リーリエ様もそう思ってくださっているなら嬉しいのですが」

「わたしにとってもグレイス様は大切なお友達です。そう思ってくださって嬉しいです」


グレイス様がぱっと花開くような微笑みを浮かべた。


「わたくしも嬉しいですわ」


これは、グレイス様の援護なのかもしれない。

トワイト侯爵夫妻にはわたしの人柄を保証し、わたしの両親には自分がついていると安心させてくれる。

そのためにこの場にいてくださるのかもしれない。


トワイト侯爵夫妻は穏やかに微笑(わら)ってそんなグレイス様を見ている。


「グレイスがこんなに嬉しそうに。リーリエさん、これからもグレイスと仲良くしてあげてね」


グレイス様との友人関係を侯爵夫人も認めてくださったということだ。


「はい。わたしのほうこそお願いしたいです」

「もちろん仲良くしてもらえたらわたくしも嬉しいわ」


グレイス様と二人で微笑(わら)い合う。


場の空気は緩んで和やかな雰囲気だ。

滑り出しとしては上々ではないかしら?

そう思ったのだけれどーー


不意にサージェス様が呟くように言った。


「まるでグレイスとリーリエ嬢のお見合いのようですね。


まさかサージェス様がそのようなことを言うとは思わなかった。

どうなさったのだろう?

きょとんとしてサージェス様を見る。


声を上げたのはグレイス様だ。


「まぁ、お兄様ったら」


ころころと微笑(わら)うような声だ。

侯爵夫妻も微笑()みを浮かべた。

愛情の滲む笑顔だ。


サージェス様は恥ずかしいのか顔を逸らしている。

無意識の言葉だったのかもしれない。

だからこそ本音だったのだろう。


それを皆が感じ取ったのだと思う。

わたしの両親も好意的な微笑みをサージェス様に向けている。


部屋の雰囲気はますます和やかなものになった。

サージェス様には不本意だったかもしれないが、結果を見るだけなら悪くない。


「でもそうですね。わたくしばかりリーリエ様とおしゃべりしてしまい、お兄様はあまりお話しできていませんものね。申し訳ありません」


その言葉にわたしははっとした。

確かにサージェス様はあまり話に参加されていなかった。

それはわたしの配慮が足りなかった。


「ごめんなさい。配慮に欠けました」

「い、いえ、貴女に落ち度はありません」


動揺しているサージェス様も珍しい気がする。

わたしはそれほど変なことを言ってしまったのだろうか?


変なことを言って動揺させてしまったのなら申し訳ない。

かといって、この場で訊いたり謝罪することはできない。

ここはさらりと流すべきところだろう。

指摘すればサージェス様に恥を掻かせることになる。

そんなことはすべきではない。


気を取り直したのか、サージェス様に微笑みかけられた。


「気を遣わせてしまって申し訳ありません」


サージェス様が謝ることではない。

だから首を振った。


不意にしんとした静寂が落ちた。

他に誰も口を開かない。

わたしたち二人で話せるようにとの配慮だろう。


だけれど。

皆に注視されると緊張してしまう。


「緊張してしまいますね」


思わず口にしてしまった。

これは失礼だったかもしれない。

心の中で慌てる。

もちろんそれを表に出すようなことはしない。


「ああ、それはそうよね」


グレイス様がすぐに同意を示してくださった。

わたしに気を遣わせないためだろう。


「お兄様、拗ねないでくださいまし」


拗ねる……?

おおよそサージェス様には似合わない言葉だ。

まさかと思いつつそっとサージェス様を窺う。


「……別に拗ねてはいない」


その声にほんの少しの拗ねを感じたのは気のせいだろうか。

表情は常と変わらないように見える。


ああ、でもほんの少しだけ目線が逸らされている。

グレイス様の言葉が本当なのかしら?

それとも、照れている、とか?


わたしだけの前では有り得なかった表情だろう。

穏やかな表情の裏に隠した素の表情が垣間見えた、ということだろう。

思わず微笑()みがこぼれる。


ご家族の前のサージェス様はずっと自然体だ。

グレイス様がここにいらっしゃらなければ見られなかったものだろう。

グレイス様がどこまで意図したかはわからない。

だけれどグレイス様の存在がいい緩衝材になっていた。


「まあ確かに皆に見られていては話しにくいわよね」

「それは確かにそうですよね」


侯爵夫人と母が頷く。

どうやら失礼だとは思われなかったようだ。

よかった。


「では、後で二人で庭を散策するといい」


そう言う侯爵の顔に浮かんでいるのは柔らかな微笑みだ。

これはわたしたち、というよりサージェス様の気持ちを思ってのものだろう。

温かい家族だ。


サージェス様の視線がわたしに向く。


「はい。リーリエ嬢、いいですか?」

「はい。是非」


そのほうがゆっくりと話せるだろう。


次々に皆笑顔になっていく。

皆わたしとサージェス様が話せていないことを気にしていたからだろう。


和やかな雰囲気に戻ってわたしもほっとした。



読んでいただき、ありがとうございました。

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