一時はどうなることかと思ったが
サージェス視点です。
一時はどうなるかと思ったが、見合いは順調に進んでいる。
父も母もリーリエ嬢に好印象を持ったようだ。
それにほっとする。
ユフィニー夫妻も終始にこやかに会話を交わしている。
全体的に和やかだ。
見合いとして見たら成功だろう。
リーリエ嬢の受け答えはしっかりしていた。
私も訊かれたことにはできるだけ真摯に素直に答えた。
それが功を奏したのだろう。
それに両親の協力も大きい。
両親が友好的な態度なのには密かに驚いている。
普段の両親は初対面でそんなに友好的な態度を取ったりしない。
一応は見合いの場ということも考慮している、のかもしれない。
いや、何人かとお見合いをしたことがあったが、両親がこのように友好的にしていたことはない。
ユフィニー家と、リーリエ嬢が特別なのだ。
それほど先程のお茶の話が魅力的だったのだろうか?
だがそれだけではない気がする。
はっきりとは言えないが。
リーリエ嬢にも積極的に話を振って答えに目を細めて微笑っている。
リーリエ嬢に関心があることの証左だった。
それにしても普段より積極的だ。
あまりにも普段と違うと裏があるのではと勘繰ってしまう。
よくよく聞いているとリーリエ嬢の人柄を重点的に把握しようとしているようだ。
……私の婚約者選びに本気になった、とか?
それも違和感がある。
今までだって家の利益を考えた婚約者探しはしてきた。
その中で誰とも婚約には至らなかった。
そのどれもが本気ではなかったとは思えない。
だが誰に対してもこの熱量はなかった。
今までの婚約者候補の令嬢たちとリーリエ嬢と何かが違うのだろう。
それが何かはわからないが。
どのみちこの場で指摘することではない。
あとで屋敷に戻った時に確かめられれば訊いてみるとしよう。
今はユフィニー家とのやりとりに集中しなければ。
私は思考を切り替えて話に集中した。
定番のやりとりを終えた後でユフィニー子爵がリーリエ嬢に声をかける。
「リーリエ、サージェス様に庭を案内して差し上げたらどうだい?」
リーリエ嬢が窺うように私を見た。
何か話があるのだろう。
いや、婚約打診の話に決まっている。
私としても説明したいのでちょうどいい。
私は穏やかに微笑んで口を開いた。
「是非」
リーリエ嬢が穏やかな微笑みを浮かべた。
「わかりました」
すっと立ち上がりリーリエ嬢の傍に行く。
そっと手を差し出せば、そっと手を乗せてくれた。
リーリエ嬢をエスコートして部屋を出た。
読んでいただき、ありがとうございました。
次は金曜日になります。




