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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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出迎え

リーリエ視点です。

朝から緊張していた。

今日はサージェス様とのお見合いなのだ。


軽い顔合わせだからもう少し気楽にしていていいと言われたが、さすがに無理だ。

サージェス様だけではなくトワイト侯爵夫妻が来られるのだ。

失礼のないように、と考えるとどうしても緊張してしまう。


屋敷内も緊張感に包まれている。

侯爵家の方々が屋敷に来るのだ。

不興を買ったら、何か失敗したら、と考えたら否が応にも緊張するだろう。

使用人たちからしたらトワイト家に行ってもらいたかったというのが本音だと思う。


実際のところ両親とトワイト家に伺うこともできたのだ。

むしろそのつもりでいた。

それが当然のことだ。

身分はあちらのほうが上なのだ。

足を運ぶならこちらだ。

フワル侯爵令息との婚約が決まった時はわたしたちが顔合わせのために足を運んだ。


だけれど、トワイト家のほうから、申し込んだのはうちのほうからだから、と来てくれることになったのだ。

使用人総出で家中をぴかぴかに磨き上げてトワイト家を迎える準備をしてくれた。


思えばノー……フワル侯爵令息はうちの屋敷に来るのは迎えに来る時だけで基本的には玄関ホールまでだった。

何か用事ができていらした時に応接室で対応したことはあるけれど、それも数えるほどのことだ。


そういう時は先触れが来てすぐの訪問なのでこのように万全の用意はできなかった。

何もおっしゃることはなかったけれど、内心では思うところもあっただろう。

長居はせずにすぐに帰っていたから。


そんなことを考えていると部屋の扉が叩かれた。

侍女が確認して扉を開ける。


「先触れが来ました。間もなくお客様が到着されます」


執事が呼びに来た。


「ええ、ありがとう」


ソファから立ち上がる。

侍女にさっと確認してもらってから部屋を出た。






玄関ホールで待っていると両親が揃って足早にやってきた。


「リーリエ、大丈夫かい?」

「大丈夫。不興を買わないように頑張るわ」

「リーリエなら大丈夫よ。だからそんなに頑張らなくていいのよ」


それにはただ微笑んだ。

扉の前に待機していた執事がわたしたちの様子を確認してから告げた。


「開けます」


父が頷く。

執事が扉を開けた。

まだ馬車は来ていない。

間に合ったようだ。


揃って外に出る。

背後で静かに執事が扉を閉めた。


扉の前で両親と並んでトワイト侯爵家の皆様を出迎える。

弟はまだ幼いので部屋にいることになっている。

本人にはきちんと説明して納得してくれている。


代わりに後でどんな方だったか教えてくださいね、と言っていたけれど。

やはり気にはなるのだろう。

将来的に付き合いがあるかもしれない相手なのだ。

どんな相手か知りたいと思うのも当然と言える。


弟には後で話すと約束した。

だからこっそりと覗いたりしても駄目よ、とは言っておいた。

たぶんやらないだろう。


馬車が目の前で停まった。

御者が降りてわたしたちに一礼すると踏み台を用意した。

それから中に声をかける。

短い返事が返る。


「開けます」


一言告げて御者が馬車の扉を開けた。

まず降りてきたのは、トワイト侯爵だ。

彼が手を差し出し、その手に手を重ねてトワイト侯爵夫人が降りてきた。


最後にサージェス様が下りてきた。

サージェス様はわたしの姿を認めると、口許に微笑()みを浮かべた。

わたしも小さく微笑み返した。


トワイト侯爵夫妻とサージェス様がわたしたちの前で足を止めた。


「足をお運びいただきありがとうございます」


父が頭を下げるのに合わせて頭を下げる。


「顔を上げてほしい」


そう言われて顔を上げる。

サージェス様が穏やかな微笑みを浮かべているのが見えた。

その隣にいるトワイト侯爵夫妻に視線を向ける。


侯爵は濃い焦げ茶色の髪に黒色の瞳の威厳のある佇まいの方だ。

侯爵夫人は黒髪に紫色の瞳の華やかで落ち着いた雰囲気の女性だ。

顔立ちはなるほど、サージェス様もグレイス様も夫人似のようだ。


侯爵夫妻も穏やかで友好的な微笑みを浮かべている。


「快く受けてくれてありがとう。トワイト侯爵家当主、ユーベルだ。隣が妻のルチアと息子のサージェスだ。よろしく頼むよ」


侯爵がまずは口を開き、父が返答する。


「ご丁寧にありがとうございます。ユフィニー子爵家当主ベルムでございます。隣は妻のカリナと娘のリーリエです。本日はよろしくお願い致します」


父が礼をし、一拍後に母と揃って礼をする。

返礼された。

父が顔を上げ、穏やかな微笑みを浮かべて告げた。


「中へどうぞ。歓迎致します」


父の言葉に合わせて執事が扉を開けた。

読んでいただき、ありがとうございました。

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