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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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身勝手な願いだとはわかっているーーノークスside

今回はノークス視点です。

(わきま)えているリーリエに好感を持っていた。

そのはずなのに、最近は小さな苛立ちを覚えることが増えた。


何故、リーリエは彼女じゃないのか。

いや、何故彼女ではなくリーリエが婚約者なのか。


だがこれは家同士の契約だ。

軌道に乗り始めた事業に彼女の家ーーユフィニー家が抱える職人の腕が必要だった。

その職人を安価で雇える。

うちにもたらす利益は馬鹿にならない。


私個人の感情は関係ない。

必要な婚約だ。

リーリエには何の落ち度もない。

今まで通りにしないと不審がられてしまう。


必死に自分に言い聞かせていた。

それでもリーリエといるのが苦痛で会う機会を忙しいと言って減らしていた。


忙しかったのは本当だ。

だが会う時間を捻出しようと思えばできたのだ。

私は敢えてその努力をしなかった。

母にも婚約者と会う時間は作りなさい、と注意されたが、仕事が忙しいと言い訳をしてその注意は聞かなかった。


リーリエが悪いわけではない。

出しゃばらず、従順なリーリエは婚約者として理想の姿だった。

それでいて母の夫人教育にもついていくだけの頭の良さと会話する相手への細やかな気配りもできる。

そんなリーリエに好感を持っていたはずだったのに。


ただ婚約者というだけでリーリエのことが(うと)ましくなってしまう。

どうしても、何故婚約者が彼女ではないのだと思ってしまう。

この気持ちは止められなかった。


リーリエに会わないようにしたのはある意味でリーリエを守るためでもある。

リーリエを邪険に扱わないための措置でもあった。

さすがに邪険に扱うことには罪悪感が湧きそうだったから。


本当にリーリエには何の落ち度もないのだから。

積極的に傷つけたいとは思わない。

私にもさすがにそれくらいの情はある。

それなら会わないようにするのが一番だ。


忙しいのは事実だし、母の話ではリーリエもその辺りは弁えているということだったから問題ないだろう。

そう思っていた。


そんな時、父がユフィニー家とはまた違った技術を持つ職人を抱える男爵家に目をつけた。

ユフィニー家との事業提携よりももっと儲かりそうな事業が出来そうだという。

向こうの男爵にも話を持ちかければ乗り気だという。


絶好の機会だと思った。この機会を逃すわけにはいかない。


子爵家よりも男爵家のほうがこちらの言うことを聞くだろう。

そのうえかの男爵家には息子ばかりで娘はいないという。

それは私に好都合だった。

事業提携のために男爵家の娘との婚約をしなくて済む。


彼女と出会う前なら、家の利に(かな)うなら相手は誰でも構わないと思っていたのに。

彼女以外などもう考えられない。

だから彼女を婚約者にできるように画策した。


ーー似たような事業をするなら男爵家と手を組んだほうがいい。

ーーユフィニー子爵は最近、利益率の変更を申し出ようと画策しているという話も聞く。

ーーここらで手を切ったほうがいいのではないか?

ーーなんなら職人を引き抜いてしまえばいい。


と父を説得してうまい具合にリーリエとの婚約解消に持ち込んだ。

家の都合を盾にすればユフィニー家も子爵もリーリエ自身もあっさりと承諾した。

こちらの家の都合のため迷惑料という名目で慰謝料を支払ったが、これからのことを思えば大した額ではない。


あとは父にそれとなく話を持っていって彼女との婚約を取りつければいい。

そのための策を練らなくては。


失敗は許されない。

失敗すれば彼女を失うことになる。

下手をすれば二度と会えなくなる。


少しだけ、彼女との噂が出てしまったことは知っている。

どこにでも目敏(めざと)い者はいるものだ。


幸いにもリーリエにもユフィニー家にもその噂は届いていなかったようだが。

届いていたら抗議まではいかなくてもちらりとくらい苦言を呈されそうなものだ。

あるいはそれを指摘して慰謝料の増額を申し出るとか。

だがどちらもなかった。


情報に鈍感で助かった。

ただ、情報に鈍感なところは、侯爵夫人として立つには足りないところだった。

結局のところリーリエは侯爵夫人の器ではなかったのだろう。

だからこれは最善のことだったのだ。


ほんの少しだけ心をさざ波立てたのは罪悪感だろうか?


だがもう後戻りはできない。

するつもりもない。

欲しい未来に向けてできる手を打つだけだ。


読んでいただき、ありがとうございました。


誤字報告をありがとうございました。訂正してあります。

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