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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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意外と父が乗り気なのだが

サージェス視点です。

先日秘密裏に届いた男爵からの手紙にはフワル家との提携が最終段階に入ったことが書かれていた。

勿論その手紙は処分済みである。

となると婚約解消も秒読みだろう。






父の執務室で父と向かい合って座っていた。

父に呼び出されたのだ。


「それで、お話とは?」


私が訊くと父は前置きもなしにいきなり本題に入った。


「フワル家の子息とユフィニー家の令嬢の婚約が解消したらすぐに婚約の打診をしようと思うんだ」


父に言われた言葉に驚く。

随分と素早く動く。


いやそれよりもいつの間にリーリエ嬢との婚約が決定事項になっていたのか。

前回リーリエ嬢のことを話した時には婚約を申し込んでいいと許可が出ただけだったはずだが。


父の中ではそのまま進めていたらしい。

それで婚約の申し込みをすることにしたのならば、父のほうで既にユフィニー家とリーリエ嬢についての調査を終えているのだろう。

その結果、婚約を結ぶ利があり、推し進めることに決めたのだろう。


にしても婚約の申し込みが早すぎる。


「いくらなんでも解消してすぐというのは早くないですか?」


それだとリーリエ嬢の心中もまだ穏やかにはなっていないだろう。

すぐに婚約話など、彼女の心が心配だった。

しかし父に一蹴される。


「何を言っている。うかうかしていると他から持っていかれるぞ」


確かにユフィニー家との縁を欲している家はいくつもある。

リーリエ嬢自身を欲する家や令息も実は多い。


フワル家の夫人教育についていけているリーリエ嬢の能力の高さを買っているのだ。

それだけではなく、彼女自身を見て可愛らしさや人柄に惹かれている者も勿論いる。


そういう家や令息たちがリーリエ嬢の婚約解消を知れば、即座に動くだろう。

最近のノークスの動向から網を張っている者たちも多いだろう。

あの恋人を隠さない態度が婚約解消も間近だと推測を呼んだのだ。

水面下での攻防もあるのだろうと思う。


その辺りの情報も父は掴んでいるのだろう。

だからこその言葉だ。

それにしても。


「随分と乗り気ですね」


今まで私の婚約者を決めるのにかなり慎重だったはずなのだが。


「何だ、リーリエ嬢が婚約者になるのが不満なのか?」

「そんなはずはありません」


それだけは有り得ない。


「なら構わないな?」

「勿論です。ああ、でも強制はしないでくださいね」


リーリエ嬢に強制だけはしたくない。

強制してしまえば、何かが決定的に壊れる気がする。

それは避けたかった。


「選ばれる自信はあるのか?」

「自信は、ありませんが、考えておいてほしいとは伝えてあります」

「いつの間に」


呆れたような響きがあったが気のせいだろう。


「たまたま伝える機会があっただけです」


何故か呆れたような視線を向けられる。

今度は気のせいではない。


本当に機会があったから伝えただけなのだが。

それも誤解されたくない一心で伝えただけのこと。

そんな呆れた視線を向けられる筋合いはない。

だがそれを指摘する前に父が何事もないかのように口を開く。


「それでどうなんだ? 考えてくれそうだったか?」

「考えてくれる、とは言ってくれました」


それははっきりと言葉にしてくれた。

実際に考えてくれているかはわからないが、拒否はされなかった。

言い方が気になったのか、父が慎重に尋ねてくる。


「冗談と取られた可能性は?」

「さすがに冗談だとは思ってはいませんよ」


リーリエ嬢の性格を鑑みても冗談と取られる可能性はないと見ている。

軽い気持ちだと取られた可能性はあるが。


そういうふうに誘導した。

それが今跳ね返ってきているかもしれない。


あくまでも候補だからと軽く言っていたのに早々に婚約の申し込みをしたらどう取られるだろうか?

初めからそれが目的だったと思われないだろうか?


リーリエ嬢なら説明すればわかってくれるだろうが。

それでも少しの疑念が残りかねない。


それはその先の関係にも影響を与えるだろう。

婚約するならば、良好な関係を築きたい。


説明するにしても会えなければどうにもならない。

会わずに拒絶されることはないと思うが、思いたいだけかもしれない。


万が一会うのも拒否された場合はグレイスに頼むしかない。

グレイスならリーリエ嬢は会ってくれるだろう。

それでリーリエ嬢が納得するように説明してもらうしかない。

いや、たぶんそこまでしなくても大丈夫だとは思うが。


納得してもらって、あとはーー受け入れてもらえるかどうか。

そればかりは判断できない。

リーリエ嬢の気持ちとユフィニー家の判断次第だ。


父も何かを感じ取ったのかもしれない。


「とりあえず打診はする。あとは、頑張れ」

「はい」


それならば婚約が成立するように立ち回るだけだ。

必要であればグレイスにも助力を頼もう。

きっとグレイスも快く力を貸してくれるだろう。



読んでいただき、ありがとうございました。

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