表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/66

寄り添ってくれる優しさ

リーリエ視点です。

泣くつもりはなかった。

本当に。

同情を引こうとしたわけではない。


それなのに彼の顔を見て、優しい言葉に思わず涙がぽろりとこぼれ落ちてしまったのだ。


「ご、ごめんなさい」


慌てて顔を(そむ)ける。


「いえ。よければこれを」


彼は優しく紳士的にハンカチを差し出してくれる。


「ありがとうございます」


ここで断るのは、相手に恥をかかせることになる。

おずおずと受け取り、そっと目尻にあてた。

涙がハンカチに吸い取られていく。


「大丈夫ですか?」

「あ、はい。ご迷惑をおかけしてすいません」


あれくらいで泣いてしまうようではこの先侯爵夫人としてやっていけない。

涙はこぼれてしまったけど、ここからは凛としていないと。

せめてノークス様に恥を掻かせないようにしなくてはならない。

わたしは彼の婚約者なのだから。


それなのに。


「好きだったのですか?」


躊躇なく訊かれてすぐに崩れてしまう。

それでも微笑みを浮かべた。


「初恋、だったのです」


今さらただの政略で結ばれた婚約の相手というだけです、と言ったところで信じないだろう。

うずくまっている姿も、涙をこぼしてしまった姿も見られてしまっているのだ。

わたしの彼への想いなどとっくにバレているだろう。

それならば優しくしてくれた相手には誠実でありたい。


彼の瞳が痛ましげだと言うように揺れる。

本当に優しい人だ。

まるで関係のないわたしのために心を痛めてくれている。

そんな必要はないのに。


申し訳ない気持ちを感じると同時に寄り添ってくれる優しさに心救われる思いがした。

読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ