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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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48/85

妹には気づかれていたようだ

サージェス視点です。

話し合いが終わった後に侍女を呼び、お茶を淹れ直させた。

その一杯を飲んでリーリエ嬢は帰っていった。






場所を私の部屋に移して、改めて人払いする。

ゆったりとお茶を飲んでからグレイスは口を開いた。


「お兄様、婚約解消のほうに誘導しておりましたね」


さすがに気づかれていたか。

まあ気づかないはずもない。


「……ノークスのもとで彼女が幸せになれるとは思えないしな」


念の為、直接的な肯定は控えた。


「それは、そうですわね」


グレイスも頷く。


やはりグレイスもそう考えていたのだ。

だからこそリーリエ嬢にそれを告げなかったのだろう。


やろうと思えばグレイスは誘導されていることを彼女に示唆することもできたのだ。

それをグレイスは敢えてしなかった。

それどころか私の後押しをするようなことまで言っていた。

リーリエ嬢に悟らせずに誘導するところはさすがだ。


「まあ、どこの家でもやっていることですし、問題はありません」


グレイスはあっさりと言う。

確かにその通りではあるが。


罠を仕掛けたり、足を引っ張ったりというのは普通に行われていることだ。

ハニートラップを仕掛けて婚約を解消させることもまあ大々的に仕掛けていないだけでわりかしやられていることである。


婚約解消くらいで傷物と呼ばれることはないからこそ非難されることでもない。

はっきり言ってしまえば、引っ掛かるほうが悪い。

まあ他国では(めと)るためにわざと婚約を解消させて傷物にする、という悪質なこともあるようだが。


もう一口紅茶を飲み、グレイスはティーカップを置いた。


「それでリーリエ様の婚約者候補にお兄様が入っているというのは……?」


これを訊くためにグレイスは私の部屋までついてきたのだ。

グレイス相手に隠す必要もないので素直に答える。


「父からは許可を得ている」

「まあ、いつの間に?」


グレイスが疑問に思うのも当然だ。


「父にやっていることがバレていたからな。説明を求められた時に父から許可が出たんだというより父から言い出したんだ」

「そうでしたか」

「父もユフィニー家の技術には関心を持っていたそうだ」

「そうですか」


グレイスが思案するように黙る。

私は黙って紅茶を飲んでグレイスが考え終えるのを待っていた。


どれくらいそうしていただろうか。

考え事が終わったのか、グレイスが真っ直ぐに私を見てきた。

私はそっとティーカップを置いてグレイスに向き合う。


「率直にお訊きしますが、お兄様はリーリエ様と婚約したいのですか?」


まさかそんなことを訊かれるとは思っていなかった。


勿論リーリエ嬢に告げたことに嘘はない。

私を次の婚約者候補の一人に入れているのは事実だ。

だがグレイスが訊いているのはそんなことではない。


恐らく私の本心だ。


自分に問いかけてみる。

婚約したいかどうかと訊かれればーー。


「私は別にどちらでもいい」


何故かじっとグレイスが見てくる。


探られている。

何を?


居心地の悪さを感じ、言い訳をするように言を重ねる。


「ただ父上が興味を示されたんだ」

「そうですか」


平坦な声は納得していないことを示していた。

さらに言い訳のように言葉を重ねてしまう。


「決めるのはリーリエ嬢とユフィニー家だ」


それは揺るがない。


「ではお兄様はリーリエ様とユフィニー家が出した結論に黙って従うと?」

「当然だ」


あくまでも私は候補の一人でしかない。


「そうですか」


言葉少なに返事をしてまたグレイスは考え込む。


「何だ、不満か?」


グレイスがにっこりと微笑(わら)う。


「まさか。お兄様が決めたことに反対は致しませんわ」


鉄壁の笑顔だ。

その笑顔の下で何を考えているのか読めない。


「グレイス?」


疑問を込めて名を呼ぶもその笑顔は揺るがない。


「お兄様が後悔なさらないならよろしいのではありませんか」

「それはそうだが」


言い方が引っかかる。

引っかかるがうまく言葉にできない。


「どうぞ後悔のない選択をなさってくださいませ」


グレイスの言葉の意図がわからない。

いつだって後悔のないように行動してきたつもりだ。


「当然だ」

「ええ。わたくしもお兄様が後悔なさらない選択ができるように微力ながらお手伝い致しますわ」

「何か企んでいるか?」


率直に訊いてみる。

率直に訊いたところでグレイスが素直に言うとも限らないが。


「わたくしを信じてくださいませ。お兄様の不利益になるようなことは致しませんわ」


明確に否定をしなかった。

これは確実に何かを企んでいる。

じっとグレイスを見る。


にこにことグレイスは微笑んでいる。

何を考えているのか読み取れない。


「信じていいんだな?」


慎重に訊く。


「勿論ですわ。わたくしはお兄様の幸せを願っております」


グレイスの瞳をじっと見るが、いつになく真剣な()をしている。

嘘はないようだ。


「大丈夫ですわ。お兄様もリーリエ様も絶対に幸せになれます」


私はともかくリーリエ嬢には是非とも幸せになってもらいたい。

そのためには相手選びには慎重にならなくては。

その前に、まずは婚約解消からだ。


リーリエ嬢に瑕疵(かし)なく成功させると改めて心に誓った。


読んでいただき、ありがとうございました。

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