初めからあったわたしの結論
リーリエ視点です。
「お兄様。そろそろリーリエ様にお訊きしたいことがあるなら訊かれたらいかがですか?」
焦れたようにグレイス様がおっしゃった。
やはりサージェス様がわたしに話があるようだ。
考えられるのはただ一つだ。
あの約束のことだけ。
そもそもそれ以外、サージェス様との繋がりも話題もないのだ。
わたしはサージェス様に視線を向けた。
「ああ、すいません。少し、考え事をしていました」
「お兄様。いくらなんでも失礼ではありませんか?」
「そうですね。ユフィニー嬢、申し訳ありません」
「あ、いえ、大丈夫です」
何とか微笑む。
ぎこちなくはなっていなかっただろうか?
サージェス様もグレイス様もお変わりない。
ならきっと大丈夫だったのだろう。
ほっとしたように表情を緩めたサージェス様はすぐに真面目な顔になる。
「ユフィニー嬢」
真剣な声で呼ばれる。
「はい」
自然に背筋が伸びた。
「結論は出ましたか?」
端的過ぎる問いだ。
わたしが約束のことに意識を向けていなければ何に対する問いかわならなかったかもしれない。
「はい。出ました」
サージェス様の目をしっかりと見て頷く。
心は決まっていた。
「聞かせてもらえますか?」
「もちろんです」
告げなければ引き下がってはくれないだろう。
一つ深く呼吸をして告げる。
「ノークス様との婚約を続けます」
サージェス様もグレイス様も表情を変えない。
さすが高位貴族だ。
ある程度予想もしていたのだろう。
先程動揺を表に出してしまったわたしはやはりまだまだだ。
サージェス様が探るようにわたしを見て確認してくる。
「それは、本心ですか?」
「もちろんです」
それしか道はないのだ。
わたしの失恋一つで婚約解消できるほど軽いものではない。
しかしサージェス様は納得してくださらなかったようだ。
さらに問いを重ねてくる。
「やはり家同士の契約だからですか?」
「はい」
家同士の契約が個人の感情より優先されるのは当然だ。
一つ頷いたサージェス様は思いがけない言葉を告げた。
「もしお互いの家に同等の契約相手と婚約者を用意できるとしたら、どうですか?」
わたしはとっさに何の言葉も返せなかった。
読んでいただき、ありがとうございました。




