どうやって本音を引き出そうか
一回お休みして申し訳ありませんでした。
今年もよろしくお願いします。
サージェス視点です。
リーリエ嬢は私がいることに驚いたようだった。
無理もない。
今までこの屋敷を訪ねてきたリーリエ嬢と会ったことはなかったのだから。
今日もまさかいるとは思っていなかったに違いない。
だが必要以上に驚かせてしまったようだ。
動揺が表に出ていた。
それを彼女は失態だと思ったようだ。
それすらも表に出ていた。
恐らく、珍しい、のだろう。
そうでなければ失態だなんて、表に出すこともなかったはずだ。
そこまで動揺させるのは申し訳なかった。
後で落ち込まないといいのだが。
それが心配だった。
だがグレイスの言った通り、事前に私がいることを知らせることはできなかった。
言い方は悪いが証拠を残すわけにはいかない。
そもそも私がいると知っていたら来なかっただろう。
彼女は思慮深い人だ。
婚約者のいる身でおいそれと歳の近い異性のいる場には来ないだろう。
疑われる可能性のある行動は控えるはずだ。
そんな彼女だからこんなふうに不意打ちでなければ会うことはできなかっただろう。
彼女に私に会う気がないのなら尚更。
私が仕掛けたことであり、リーリエ嬢には何の含みもない。
だがリーリエ嬢と私が会ったということは事実だ。
どこで話が漏れるかわからないので建前上のあれこれが必要になる。
久しぶりと言ってしまった手前、どこかで会っていないとおかしい。
それなので随分前に会ったことがある、とした。
困惑した様子もなく普通に話を合わせてくれた。
やはり頭の回転が早い。
そういうところもフワル侯爵夫人は認めているのだろう。
それは簡単に想像がついた。
リーリエ嬢が侯爵夫人に立てるような人物だからこそ婚約も続いているということのはずだ。
リーリエ嬢が侯爵夫人として失格となれば、婚約は解消して別の契約にしただろう。
婚約・婚姻とは手っ取り早い両家を結びつける方法でしかなく、成り立たないと思えば別の形の契約にすればいいだけのことである。
それが継続となっているということは見込みがある、ということなのだ。
それが彼女にとっていいことなのか悪いことなのか私にはわからない。
彼女の評判としてはいいものだろう。
ただ代わりに、余程の理由がなければ婚約の解消は難しい。
フワル侯爵夫人にリーリエ嬢がどれだけ気に入られているかは正直わからない。
すごくお気に入りとなれば婚約解消は事実上不可能だ。
そうなればどんな手を使ってでも嫁にするはずだからだ。
だがリーリエ嬢には悪いが、そこまでではないと見ている。
もしそこまでのお気に入りならお茶会などで連れ回しているだろうがその形跡はなかった。
勿論、何回かはフワル侯爵夫人とお茶会などに参加していた。
だが頻繁という程ではない。
一般的な範囲だ。
はっきりと言ってしまえば、次期侯爵夫人として及第点は超えているということなだけだ。
リーリエ嬢がどう思っているかはわからないが。
そればかりは本人に聞いてみないとわからないが、今日の主旨の本筋には関係ないので今のところは聞く必要はない。
論点をずらす要素は排除しておいたほうが無難だ。
何故なら。
リーリエ嬢の様子を見て一つ確信したことがある。
彼女の中ではやはり私との約束はなくなり、縁は切れたことになっているようだ。
無論、私にそのつもりはない。
まだ約束は果たされていない。
彼女の本音を聞かなければ。
だがさて、どうやってリーリエ嬢の本音を聞き出そうか。
読んでいただき、ありがとうございました。




