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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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調べものの成果としては

サージェス視点です。

私はノークスとフワル家の周辺を探った。

ノークスはあれでいて意外と(さと)いので気づかれずに周囲を探るのはなかなか骨が折れた。


そして得られた結果は、いいとも言えるし、成果はなかったとも言える。


女の影はなかった。

付き合いの中には女性もいたが、きちんとした距離を取っていた。


当然と言えば当然か。

きちんとした婚約者がいるのだ。

普通の感性を持っていたら瑕疵(かし)になるようなことはしない。

異性の影があれば婚約解消の理由になる。


愛人が容認される国もあるそうだが、我が国では敬遠される。

それは継承問題に発展することが懸念されるからだ。


夫に愛されない正妻の子と夫に愛された愛人の子、愛人の子に夫が目をかけていればそれだけで跡継ぎがどちらになるかの泥沼に発展しかねない。

愛人が自分の子を跡取りにしようと正妻やその子供の命を狙うこともあるという。

また逆も(しか)り。


他国でのそのような話を聞くに及び、我が国では愛人を敬遠するのだ。


だから女性問題がないことはまあ予想の範囲内ではあった。

それどころか目立った後ろ暗いようなものは特に見つけられなかった。

少なくともノークスに瑕疵がつくようなものは何もなかった。

侯爵家の嫡男としての自覚と自制があるのだろう。


それはリーリエ嬢には良いことなのだろう。

だが同時に婚約解消になるような理由もないということだ。


貴族の婚姻となれば恋情など必要ない。

役目を果たし、裏切らない信用があればいい。


そう考える者も多い。

その点で言えば、ノークスの発言など何の問題にもならない。

ただ、リーリエ嬢が傷ついただけだ。






それからフワル家とユフィニー家の共同事業についても調べた。

その結果を見た時、思わず眉間に皺が寄ってしまった。


随分とフワル家のほうに有利な条件になっている。

高位貴族と下位貴族の契約では、まあよくあることではある。

特に高位貴族が資金を出し、下位貴族が人材を提供した場合にはそれが顕著だ。


フワル家とユフィニー家の共同事業がまさしくそれだった。

フワル家が資金を出し、ユフィニー家が職人を出している。


こうやって調べてみるまで、恥ずかしい話だが、ユフィニー領が熟練の職人を多く抱えた領だということを知らなかった。

もしもユフィニー領民の技術でこの事業が成っているのだとしたらーー婚約の解消はなかなか難しいかもしれない。

少なくとも代わりの職人が見つからなければ話にならない。


そちらも念のため探し始めておいたほうがいいかもしれない。

代わりの職人なり家なりを引き合わせられれば彼女が婚約解消を望んだ時にその望みを叶えられやすくなるだろう。

できることはやっておいたほうがいい。

備えておいて損はないのだ。


ふと思う。

リーリエ嬢は共同事業の契約内容を知っているのだろうか?


恐らくは、知らないのだろうと思う。

わざわざ教えているとは思えない。

私が子爵でもリーリエ嬢には話さないだろう。

リーリエ嬢がノークスに好意を持っているとわかっているのであれば尚更。

彼女の心に負担をかけないためにもそうする。


気持ちを傾けさせるにはいい材料かもしれないが、子爵が知らせていないのであれば勝手に知らせるのも気が引ける。

そもそも私は部外者だ。そこは(わきま)えておかなければならない。

そう、(わきま)えておかなければ。


……もし、リーリエ嬢が婚約の解消を望まなければ、それは受け入れなければならない。

ただし、本気かどうかは見極めなければ。


彼女なら家のためや私に迷惑をかけたくないと自分の心を偽るくらいはするだろう。

彼女が本気で婚約を続行させたいのであれば、きちんと手を引く。

それは決めていた。


だがそうでないならばーー強引にでも手を貸そうとも決めていた。

それくらいしなければ彼女は自分一人で抱えて私の手を借りようとはしないだろう。

我慢し続けていればいつかは壊れてしまう。

そうなるのは嫌だった。

それならば強引だと思われてでも手を貸すほうを選ぶ。






リーリエ嬢の背中を押せるだけの情報を得ることはできたと思う。

そろそろグレイスに頼んでリーリエ嬢に会わせてもらうとするか。


あれからグレイスは何回かリーリエ嬢をお茶会に招待しているようだった。

変な誤解を与えないためか、必ず私が屋敷にいない時に、だ。

大抵(たいてい)は本当に屋敷にいない日時に設定されていたが、ほんのたまに私が在宅していそうな時にはさりげなく出掛けてほしいと言われてそれに従っていた。


リーリエ嬢に余計な疑いをかけられるような状況にするわけにはいかない。

力になりたいだけで、(おとし)めたいわけではないのだ。

私が願うのは、これ以上リーリエ嬢が傷つかないこと。

それだけだ。


読んでいただき、ありがとうございました。

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