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砕け散った初恋の後に、最後の恋をあなたと  作者: 燈華


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27/85

ガゼボでの二人だけのお茶会

リーリエ視点です。

お茶会当日。

母にいろいろ相談しながらわたしは訪問時の服装や手土産を決めてこの日を迎えた。






鏡の前で自分の服装を確認した。

レモン色のふわふわとした柔らかなシフォンの訪問着。

髪は紫色のリボンでハーフアップにしていた。

お茶会なので宝飾品は耳元に揺れる小振りなトパーズの耳飾りだけ。


サージェス様から借りたハンカチも忘れずに持った。

時計を見る。

今から花屋に寄ってからトワイト家の屋敷を訪問すればちょうどいいくらいの時間だ。


もう一度ざっと鏡で確認してから部屋を出た。




*




トワイト侯爵家王都邸。

時間通りに訪問したわたしは、トワイト執事に言われて玄関ホールに置かれた椅子に腰を下ろした。腕にはしっかりと小さな花束を持っている。

柔らかいピンク色の花と神秘的な紫色の花を中心に花束を作ってもらった。


親しい者以外は、他家への訪問でお菓子などは持っていかない。

特に高位貴族の家には。

万が一何か盛られたりしては困るから。

または何かあり、その疑いをかけられるのも困るのだ。

事前に避けられる危険は事前に避けるのが双方のためだ。


あまりじろじろと見るのは失礼かと思うが、ついそっと周りを見てしまう。

大振りな青い花瓶には紫と白の花々が生けられており、その後ろに飾られているのは繊細な湖畔の絵だ。


さすが侯爵家だ。うちとは全然違う。

そもそもしがない子爵家のうちと比べるのは失礼な話だった。


フワル侯爵家とも違う。

フワル侯爵家は全体的に品のいい華やかさを持っているが、トワイト侯爵家は優美さの中に実直さがある。

それぞれの家の気質の違いだろう。






しばらく待っていると、同い年くらいのご令嬢が侍女を連れてやって来た。

黒い巻き毛を一部結い上げ、煌めく黒い瞳は黒曜石のようだ。

彼女がグレイス・トワイト侯爵令嬢ーーサージェス様の妹君だ。


サージェス様はいらっしゃらない。

後で偶然を装って参加されるのだろうか?


わたしは慌てずに立ち上がる。


「お待たせしてごめんなさい」

「いえ。お招きいただきましてありがとうございます」


スカートを摘まみ、ゆっくりと腰を落とす。


「丁寧な挨拶をありがとう。庭のガゼボにお茶の用意がしてあるの。行きましょう」

「はい」


侍女の先導で庭に向かうグレイス様の後について歩き出した。




*




お庭も見事なものだ。

季節の花々が咲き乱れている庭だが、調和が取れていて美しい。

目に優しい。

いつまでも見ていられる。

花瓶に生けられていたのもこの庭の花なのだろう。


「気に入られまして?」


その言葉にはっとする。

庭に見惚れてグレイス様の存在が頭から消えていた。

失態だ。


「申し訳ございません。素晴らしい庭につい見惚れてしまいました」


頭を下げる。


「顔をお上げになって?」


促されて顔を上げる。


「謝る必要はありません。見惚れるほど、と褒めてくれて嬉しいわ」


微笑を浮かべて言われたのでほっとする。

今わたしはグレイス様とガゼボで向かい合わせに座っている。


持ってきた花束は先程侍女の手を介して差し上げてある。

あの笑顔が演技でなければ喜んでもらえたはずだ。

淑女の微笑みよりは柔らかであったからたぶん演技ではないと思うけど。


「ユフィニー様はお花がお好きなのかしら?」

「はい。見ているだけで心が和みますので」

「そう」


一つ頷いたグレイス様は優美な手つきで何かを取り出した。


「こちら、ユフィニー様のものではございませんか?」


そっとテーブルの上に置かれた栞を見る。

見覚えがない。

グレイス様はにこにこと微笑んでわたしを見ている。


これはどういうことだろう?


もう一度栞を見る。

花の栞だ。

使われている花はーー


「はい。わたしのです。どこかでなくしてしまって諦めていたのです。拾ってくださったのですね。ありがとうございます」


わたしは手を伸ばして栞を取る。

使われている花は白のアスター、花言葉は『私を信じて』だ。


グレイス様がほっとしたように明るく微笑(わら)う。


「よかったですわ」


きっとその言葉は、栞の持ち主に返せたことではなく、わたしが意味を受け取り、栞を取ったからだろう。


つまり、これからが本題だ。


読んでいただき、ありがとうございました。

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