表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/66

幸福期

わたしたちの付き合いは順調だった。


婚約者との交流のためのお茶会を欠かしたことはなかったし、彼からは定期的に贈り物が届いた。

彼からの贈り物はどれも上品で素敵なものばかりだった。


時には花を贈ってくれることもあった。

彼が贈ってくれるのはいつも薔薇の花だった。

愛を(ささや)く花だ。


彼は花の意味を知っていて贈ってくれているのだろうか?

それとも知らずにわたしに贈るなら薔薇が似合うと思ってくれているのだろうか?


どちらにせよ、贈ってくれた気持ちが嬉しくて薔薇を見るたびに微笑んでしまう。


観劇に行くこともあった。

彼はいつも紳士的にエスコートしてくれた。

隅々にまで気を配ってくれて、とても大事にされていると感じていた。


彼はいつもわたしが好きになった太陽のような微笑みを浮かべていた。





わたしも贈り物がしたくて、でも何を贈ればいいかわからなくて、無難(ぶなん)に刺繍入りのハンカチにした。

何枚も刺して出来のいいものを彼に贈った。

彼は柔らかく微笑(わら)って「ありがとう。大事にするよ」と受け取ってくれた。

実際に顔を合わせる時は必ず持っていてくれた。


「使うのがもったいなくて別のハンカチも持っているんだ」


そう言っていたので何枚も刺して贈った。

その(たび)にあの大好きな笑顔で「ありがとう。嬉しいよ」と言ってくれた。


事あるごとにそのハンカチを見せて「周りに自慢しているんだ」と言ってわたしを喜ばせてくれた。





あの頃は彼の言動全てに舞い上がっていた。

彼も同じ気持ちだと、疑ってもいなかった。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ