表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

プロローグ ~魔女の決意の書~

「ぼくはけんかをするつもりなんて無い。ただ、お前らがきにくわないだけ」

 河川敷の橋の下、ゴミが散乱している。

 15歳ほどの、あまり肉付きの良くない金髪の少年が3人に向かって、視線を逸らしながら、行儀悪く棒つきの飴を口に咥えて言った。

 暗いカラーリングのフードで目線を隠しつつ、食べ終わった飴の棒を地面に捨てる。

 相手である高校生くらいの、がたいの良い3人組みがいて、頭に血が上ったのか首を捻ったり、手の指をボキボキ鳴らして威嚇。

「おう! テメーがその気なら喧嘩を買ってやろうじゃねえか!」

 集団の一番弱そうな人が最初に飛び出し、何も考えずに殴りかかる。

 少年よりは遥かに太い腕が顔に接近していく。しかし、応じもせず微動だにしない。

 拳と顔の距離がかなり近くなってきた時、甲高い女性の声が辺りを駆け巡る。

「ファイア!」

 ただファイアを言い放っただけではなく、数センチの炎の塊が殴りかかった高校生の腕に直撃、熱い熱い熱い! と叫びながらその場を転げまわった。

 少年の後ろからゆっくりと歩いてきたのは、18歳の女性で、魔法使いがよくかぶってる帽子と、動きやすそうな皮の服でそこそこ露出が多め、深い青のホットパンツに、茶色のブーツ。

「喧嘩したらだめだよ怜れい、私と約束したでしょ? いつまでも私と一緒とは限らないんだし」

 残った二人の高校生の顔が引きつり始め、情けない声を上げながら逃げた。残った高校生も遅れて退散する。

「……ごめん。ドロシー」

 怜はふてくされながら、もう一本棒つき飴を取り出して、口に咥えた。




 別の日。

 かなり豪華な外装の、いかにも高級感漂うレストラン。

 怜はふらっとそこに立ち寄り、何食わぬ顔で入る。周りの客が品の良い格好の人が多いため、不良っぽい怜は浮く。

 入ってきた事に気づいたボーイの50代の男性が怜に近寄り、不機嫌そうに腕を組みながら立ちはだかった。

「また君か。どうせ金も持ってないし、優しい嬢ちゃんに甘えて何か食べようとしてるんだろ。今日ぐらいは帰りたまえ」

「なんで」

「いいから帰れ。客がざわついておる」

 追い払われ、行き場を失ったので、特に意味も無く商店街をうろつく。ママ達の横を通りかかる度に、嫌味は悪口をコソコソ言われるが、慣れっこなので気にしていない。

 おばあちゃんが経営する駄菓子屋に寄り、数少ないお小遣いで某つきの飴を何本か購入。すぐに出て、公園の幾つか穴のある球体の中に入って、暇を過ごす。

 日差しが照りつける真昼間。人もいない、動物もいない、風がさらさらと草を揺らすだけ。

 特に何もせず、空はオレンジ色に染まり始め、そして暗くなる。しかし怜は動かず、ただぼーっとしていた。

「怜ー!」

 と、ドロシーの声。お母さんの声に気づくように、ふらふらと声の方へ向かう。

「やっぱりここにいた! ここにいると風邪引くよ?」

「あたたかくしてるから大丈夫」

「大丈夫じゃない! 帰ろう、今日は親いないから泊めてあげる」

「うん」

 内心伶は嬉しかった。ただ感情の表現が苦手であるため、特に反応せず、ただドロシーについていく。

 二人ふらふらとドロシーの家へ。家の玄関には、鬼の形相で立つドロシーの両親がいた。

「えっ、どうしてお父さんとお母さんが?」

「やっぱりお前、この不良と関わってたのか。ちょっと来なさい」

 無理矢理引き込まれる。ドロシーの家の前に、ポツンと伶は取り残された。そのまま三十分程、出てこなかったので伶は諦めてさっきの公園に戻り、眠りにつく。





 その翌朝。

 穴の空いた球体で眠ってた伶が起き、よたよたしながら出る。丁度同じくらいの頃合いに、大量の荷物を持ったドロシーが目の前に現れた。伶は内心ほっとし、真顔でドロシーに近づく。

 ドロシーの目の周りは、真っ赤に腫れていた。しかし、とびっきりの笑顔でもある。

「私と伶はこれで一緒! だから、気に病む必要なんてないよ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ