新たな出会い その2
「地竜、これで最後だ」
「〖技法 虎凪〗」
俺は地竜をあっさりとやっつけてしまう。
「思ってた以上に呆気なかったですね」
アスタロトが死んだ地竜を見下した目で見る。
地竜が倒れた途端、魔獣たちが退き始めた。それにしてもこんなに魔獣が現れる森だったか?
奴らの仕業に違いない。
俺は左上上空に小さな空間の裂け目の方を見る。
「見ているんだろ?どこの神か知らねえが数で押せば勝てると思ったか?」
その問いかけに反応するように裂け目が大きくなり、一人の神が現れた。
外見は普通の女の子だがその目は無機質で人形っぽい。
「まだ野垂れ死んでなかったのですね、混沌の神使い」
穏やかな表情で暴言を吐く神。
俺はその神に心当たりがあった。
「お前は確か聖魔神だったか?」
「………………肯定しますよ、私は聖魔神アペイリア。………………あなたを粛清しますと言いたいところですが今日のところは帰りましょう。返り討ちに会いそうなので」
微かに微笑んだ聖魔神は飛竜を生み出し、裂け目の中に消えていく。
「ちょっと待て!」
「待ちません、それでは混沌の神使い」
一瞬、追おうか迷ったがここで深追いしても意味がないので、聖魔神が生み出した飛竜の方に目を向けた。
見た目は飛竜そのものだが神に似た気配を感じる。
「主様!この飛竜は神の因子を取り込んでます!気をつけてください!」
「神の因子?そうか、それじゃ強いんだな」
神の因子かぁ〜。俺には目視できないからどんな物か、気になるな。妖刀を片手に飛竜にゆっくりと近づく。
飛竜が俺を認知したようで雄叫びをあげる。
「クオォォーン」
「威勢がいいな」
一蹴りでゼロ距離まで近づき、妖刀 アスタロトを振りかざす。
「鱗、硬いな………………うわぁぁぁ」
飛竜は俺が近づいてきたのを見計らったように竜巻を生み出し、こちらに向かって撃ってきた。
その竜巻に巻き込まれ、空中に放り投げられた。
「主様、大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫だ」
地に着地し、心配してくれるアスタロトに返事をする。
「やっぱり威力はそこら辺の魔獣とは段違いだな」
俺はそう呟き、攻撃を仕掛けた。
「〖技法 八咫烏〗」
八つの斬撃は飛竜に襲いかかり、傷跡を残す。それに逆上したように蹴りをしてきた。
俺はその蹴りを避ける。
さすがだな、竜ってところか?今の一撃をまともに食らったらかすり傷は出来るところだったな。
「お前と戦い始めて数分しか経ってないがあの人たちが苦戦しているらしくてな。さっさと終わらへて加勢に入りたいけどいいよな」
飛竜の攻撃を避けながら不意に三人の方を見ると疲労が溜まっているのか、動きが鈍くなってる。
俺はアスタロトに魔力を込めてあらためて斬る。
「〖技法 虎凪〗」
向かい打つように飛竜が攻撃の体勢に入る。このままじゃ相打ち…………とまではいかないけど怪我は避けられないな。んじゃ、悪いが楽に勝てる方法を使うか。
「〖技法 虚像〗」
攻撃は当たったがそこにいたイリス・ロードは消え、後ろに現れる。それに気づいた飛竜は急いで後ろ足で蹴りをした。
また消えて、次は頭上に現れた。
気づかれる前に俺は妖刀を思いっきり頭に刺し、魔力を流し込む。
「〖技法 魔電〗」
大量の魔力を注ぎ込まれた飛竜は動かなくなり、破裂して肉片に変わった。
それをもろに浴びた俺は身体中真っ赤になる。
「…………………あっちの方、助けた方が良さそうだ」
そう呟き残りの魔獣をバッサバッサと斬りつける。地竜を倒して退き始めたと思いきやあの三人の方を標的にし始めたんだな。
「手を貸す」
金髪の男に襲いかかろうとする魔獣を一匹残らず斬りつける。
「この数を一瞬で。た、助か………………………って何!?次は全身、血で真っ赤なんだけど!?」
「だから、返り血だ」
苦笑しながら他の二人の方にも向かう。
戦力を分断されたらしい。そんな悪知恵があるなら世界のために貢献して欲しいと俺は思うぞ、魔獣よ。
「おらよっと」
「あっ、ありがとうござい………………」
「あ、ありがと」
「「って、何その血!?」」
「魔獣の血だ……………………」
お前たちも同じ聞くのかい!
俺はまたまた苦笑した。人とこんなに喋るのはホント久しぶりだな。これは帰ってきてそうそう幸先がいい。
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