新たな出会い その1
「出口、どこだよ…………早く森を抜けたいだが」
「主様、今は目の前にいる魔獣たちを倒すのに集中した方がいいのでは?」
アスタロトが俺に適切なアドバイスをしてきた。数日間経ってもこの魔生の森から出られていない。
俗に言う迷子だ。
俺の後ろに隠れているアスタロトは心無しか元気はない。
それもそのはずだ。ここに来てからというもの満足にご飯を食べられていない。(別にアスタロトは食べなくてもいいけど)
アスタロトには異なる世界の料理を食べてみたいという願望があったらしい。
しかし、現実は魔獣の肉ばかりもう飽きたのであろう。
俺も早くここから出て外の世界を見てみたい。どこまで文明が発展したのか知りたいしな。
自分を奮い立たせながら敵をバッタバッタとなぎ倒す。
「それにしても、数が多いな………まぁ、俺の敵ではないけど」
でも、これで何体目だ?
何度も狼もどきの頭を吹き飛ばしたり、トカゲもどきを妖刀アスタロトで真っ二つに斬ったりしてみたが全然、数が減らない。
どれだけこの魔生の森では魔獣で溢れかえっているんだ…………。
終わりが見えない魔獣狩りに嫌気がさしてしまう。
「主様の力ならこの魔獣たちを一瞬で消し炭ずみにすることぐらい簡単だと思うんですけど?」
「ここで本気で攻撃したら魔生の森が更地になるだろう!地形が変わったとあれば大騒ぎになることは目に見えている」
拳に力を込めて、前に突き出す。
「〖技法 覇王拳・弱〗」
一直線に波動が生まれ、魔獣たちを消し去る。
「これでもダメか」
奥から血の匂いで魔獣が寄ってきて、もう一度俺の周りを囲む。その中心に大きな地竜が姿を現す。
「あいつが親玉ってところか」
「そうだと思います。主様、さっさと地竜を叩いちゃいましょう!」
駆け足に地竜に近づき、一撃で終わらせるべき刀を振るう。しかし、魔獣が立ちはだかって肉壁にくへきのように地竜を守る。
「ホント邪魔だな…………」
俺がそう呟いた瞬間、火の玉がこちらに飛んでくるのが見えた。
左、右と避けて、火の玉は魔獣たちに当たる。
なんだ?新手の敵か?
「な、なにやってんだ。人に当てるところだったぞ」
「す、すいませーん!」
「まぁまぁ、二人とも。言い合いになってる場合じゃないの。それよりも君、大丈夫かい?血がいっぱいついてるけど」
三人の男女が近づいてくる。
警戒しながら俺はその問いに答えた。
「これは全部返り血だ」
「返り血………………ここに倒れている魔獣を全部、君がやったの?」
「そうだ」
俺は魔獣を殺りながら金髪の男に言った。
そんなやり取りを聞いた大柄な男と黒髪ロングの女がコソコソ話を始める。
「本当だと思うか?厄災を一人で食い止めるなんて…………………そんな芸当、第一位か、聖魔七賢人にしか出来ないぞ」
「そうですね………………ギルドで見たことない顔ですし、未登録者なんでしょうか?」
「二人ともコソコソ話してないで彼に加勢しようよ」
金髪の男が加勢し始めると二人もそれに続いて加勢してくれた。
俺としてはありがたい。
大柄な男は大きな斧でバッタバッタとなぎ倒す。黒髪ロングの女を持ち前の杖で魔法を行使する。金髪の男は巧みな剣さばきで魔獣を寄せ付けない。
この人たちなかなかやるぞ。
「ここはあの人たちに任せて地竜を潰しましょう」
俺はアスタロトに賛同する。
「そうだな………………ここは任せる」
「えっ、ちょっと君」
俺は一直線に地竜の所に向かう。
その間かんに邪魔をする魔獣は一瞬に消し炭にする。
その姿を見た三人は…………………。
「「「世界は広いんだな…………」」」
と、声をそえて言った。
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