亜空間 その1
「ちっ、次から次へと神獣が湧いてきやがって!」
俺ことイリス・ロードが亜空間に来てから数百年。
未だに亜空間から出られていない。
それもそのはずだ。亜空間は魔法世界と完全に切り離されている別次元の世界だ。本当に出られるか分からない。
それに俺が亜空間から出よう素振りをしよう物なら神獣が大量に湧いてきて襲ってくる。
「ほんと面倒な所に閉じ込めてくれたよな、神の野郎!」
俺は嫌味混じりに言い、空気中にある微量な魔力を身体中に纏わせた。
「〖技法 覇王拳〗」
右手をすばやく突き出し、神獣を粉々に粉砕する。
それを何度も何度も繰り返し神獣たちの数を減らす。
「なんで妖刀置いてきたんだよ、俺」
こうなると分かっていれば妖刀の一本くらい持ってくればよかった。
「とはいえ、ない物をねだっても仕方ないな」
「〖技法 雷神拳〗」
次はドッカーンと音とともに神獣たちが吹っ飛ぶ。すかさず追撃を加え、確実に息の根を止める。
「ち、まだ湧いてくるのかよ‥‥‥‥‥めんどくさい」
これじゃキリがないな。
しゃあない、少し本気出すか。
「はぁ〜」とため息を漏らし、周りにいる神獣を見渡す。数は300って所だろう。
「さっさと倒してここから出る方法を本気で考えないと…………………それにミゼラたちが心配だ」
あいつは俺に心酔しているところがあるからな。まぁ、たぶん。数百年経っているから生きているかどうかは分からないが竜人族の血が入っているから長生きはしていると思う。その上、ミゼラには不死鳥と契約している。生命力に関しては勝てるものはいないだろう。まだ「絶対戻る」という約束は守れるはずだ。
「〖技法 砲撃〗」
大地に思いっきり拳を振り下げた。
すると、大地が崩壊して神獣たちが立ち待ち消えていった。
「これでザコの掃除は終わった。しかし、やっぱりこれは疲れるな」
この場で尻もちをついて呟く。
ここでは空腹は感じないし、眠くはならないが疲労は感じる。
その時、真っ暗な世界に声が響き渡った。
「誰か、助けて」
それは明らかに切羽詰まった様子の声色で俺を急いで立ち上がる。
「誰か、来て」
「また聞こえた‥‥‥‥‥どこだ?」
周りを見渡し、声の主を探す。
しかし、辺りは真っ暗で何も見えない。
俺は目をつぶり、神経を研ぎ澄ました。
「誰か、助けて!」
「左の方か!」
俺は足を思いっきり蹴りあげて助けの声がする方に向かった。
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